表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
120/123

こっち側

次回、この章は終わります。 そしてヒロインが遂にキャラに目覚めます。


誤字脱字の可能性大です。

俺を無言で見つめるドロップ。そんなドロップを、誰だコイツという風に見つめる雄一と翔吾。その二人を不安げに見つめるフィア。そしてフィアを眺める俺。


舞台の上では、何とも気まずい視線の四角形が形成されていた。


「あー、二人とも、いや三人か。紹介する。コイツはドロップ。俺の前の世界の仲間で、俺に匹敵するかそれ以上のトラブルメーカーだ」


この何とも言えない空気をどうにかしようと、俺はいなくなっていた三人に、ドロップの事を紹介する。これをきっかけに、この空気が払拭されればいいのだけど。因みにだが、雄一たちの事をドロップに紹介する必要は無い。どうせ俺たちの事は、クラックで覗いてるからだ。


「あ、どうも、立川翔吾です。初めましてドロップさん。うちの雲雀が大変お世話になったみたいで」


「涼宮雄一です。大変だったでしょう、この馬鹿の世話は」


「何だその自己紹介は! お前らは俺の親かよ!」


というか世話とかで大変な思いしたのは俺だからな!


「大丈夫。もう慣れたから。ひーはまた無茶苦茶やるだろうけど、その時は私に言って。協力するから」


「オイ待てやドロップ! お前もお前で何苦労人キャラみたいな雰囲気出してんだコラ! そして何でこんな時だけ流暢に喋んだよ!」


「テヘペロ」


「よしもう一戦だコラァ!」


「上等」


『やめなさい!!』


第二ラウンドのゴングが鳴るその瞬間、俺目掛けて金属の塊が飛んできた。どうやら灰猫先輩がマイクを投げたらしい。仲裁の仕方としてどうなのそれ?


『死なないから大丈夫なんでしょ? 喧嘩が殺し合いになるぐらいだもんね?』


「アンタ結構根に持ってんのな」


こめかみに怒りマークを浮かべる灰猫先輩に呆れながら、転移魔法で灰猫先輩の元にマイクを戻す。


「お前殺し合いなんてやってたのか」


「学園行事で何やってんのさ……」


フィアのフォローに回っており、俺とドロップのガチバトルを見ていない二人は、馬鹿じゃねーの?と言いたげな目で俺を見てきた。


「馬鹿じゃねーの?」


「馬鹿なの?」


「言うと思ったよ!」


俺に対する遠慮なんて知らないもんな二人とも!


「実際馬鹿だろ」


「言われたくなければやるなよ」


「ちゃんと理由があんだよ!」


という訳で、二人に殺し合いの理由などを説明。かくかくしかじかうまうましかしか。


「何それすげえ見たかったんだけど」


「雲雀がズタズタとか。うわー残念」


「感想が何か違くない?」


人のスプラッタシーンみたがるとか、親友としてどうなの?


「因みに俺の過去とトラウマについての感想は?」


「ご愁傷さまとしか」


「じゃあリハビリとしてフィアちゃんと付き合ったら?」


「本当にキミたち予想通りね」


特に翔吾。大切な事だから二回言おう。特に翔吾!


『……キミたちって本当に親友同士なの?』


『お互いに嫌いあってたりしません?』


ほらー。俺たちのあまりにもあんまりなやり取りの所為で、灰猫先輩たちが誤解しちゃってんじゃねーか。


「何言ってんすか。俺たちはマブダチですよ?」


「そうですよ。雲雀はリウマチです」


「スダチだもんねー、雲雀は」


「……お前ら俺の事嫌いだろ?」


てかスダチって何だ翔吾コラ。リウマチはまだ許せるけども。


「………フフッ……」


あ、フィアが笑った。


「……はっ、す、スミマセン!」


俺が見ていた事に気付いたフィアは、顔を真っ青にして謝ってきた。


「いや別に笑ったぐらいで謝らんでも」


そんなに怖いの俺?


「あ、いえっ、別にそういう訳では……っ!」


「アレでしょ? 自分から始めた話題なのに、途中で耐えられなくなって逃げ出した所為で俺の不況を買ってる可能性があるのに、ついつい俺たちのやり取りに笑っちゃったから焦ったんでしょ? まあ大体察してるよ」


「〜〜っ!」


俺の指摘は図星だったみたいで、フィアは声にならない悲鳴を上げた。顔も真っ赤になってら。


『そういうのは分かってても言わないもんなのよ! このデリカシー無し男!』


「いや、デリカシーが無いんじゃなくて、故意に無くしたんですけど」


『尚悪いわ!』


灰猫先輩のツッコミはスルーする方向で。


「まあ気にすんな。別に笑われたぐらいで怒らんし、そもそも逃げ出した件も気にしてないし」


「本当ですか!?」


お、凄い喜んでら。


「うん。まあ不況を買ったか心配する以前の問題として、フィアに対する好感度ってそこまで高くないから。普通に喋る女友達レベルだから。だから別に気にせんでええんやで?」


「……え……?」


上げて落とすのは基本です。


「ちょっと雲雀! 折角フォローしたのに!」


追い討ちを掛けるなと抗議の声を上げる翔吾だったが、俺が本気で答えようとしている事に気付くと、何も言わなくなった。


この辺りの察しの良さは本当にありがたい。そして頑張ってフィアを励ましてくれたのだろうが、それを無駄にしてしまう事を申し訳無く思う。


「さて、余計なオプションが付いた所為で余裕が無いので、今この場ではっきり言おう。俺はフィアに対して恋愛感情は抱いていない」


ドロップやクイーンが介入してきてる時点で、かなりヤバイ状況なのだ。なので今、フィアの気持ちに答える。遠回しに告げるのでは無く、はっきりと真正面から、俺の考えを告げる。


「確かにフィアは可愛いし、素直に俺の事を思ってくれてるのは嬉しく感じる。……だけどそれだけだ。フィアに対して感じる俺の感情はそれだけだ。抱いて親愛。恋愛感情は皆無だ」


何と言うか、嫌なものだな。告白に対しての返事というのは。どうしてもシリアスにならざる得ない。あまりにも柄じゃないので、本気でこの空気をぶち壊したくなる。……それをしたら非難の集中砲火を喰らうのでやらないが。


「一応言っておくが、さっき説明した俺のトラウマは関係ない。トラウマが無かったにしても、俺がフィアを好きになることは、今のところ有り得ない。これが俺の答えだ」


振った、という形になるのだろう。これで恐らく、婚約も解消。こんな大勢の人間の前で振ったとなれば、流石にあの王妃でもどうしようもない……筈。断言出来ないのが恐ろしいが。


とは言え、これでひとまず肩の荷も降りた。異世界人という事実と、俺の実力の一端を大勢の人間に知ら占める事が出来た事で、あまり力をセーブする必要も無くなったからだ。これならフィアとの婚約を蹴ったとしても、アール公爵家に迷惑を掛ける事は無い。それ以上の利益をアール公爵家に与える事も出来るし、他の貴族が文句を言ってきても黙らせる事が出来るのだから。


確かにドロップがやって来た事には肝を冷やしたが、そう考えれば悪い事ばかりでは無い。


「………なん、で…今なんですか………?」


まあフィアからしてみれば、ドロップがやってきた所為でガッツリ振られる事になったので、完全なとばっちりな訳だけど。


「……分かってましたよ……私に、脈が無い事は……でも、今じゃなくても、良いじゃないですか………折角、頑張ろうって、思ったのに……またヒバリ様の前に、笑って立とうと思ったのに!」


涙を浮かべて叫ぶフィア。元凶の俺が言うのもアレだけど、流石に罪悪感が凄いです。


「……悪いな。俺もこんな場所で振るのは嫌なんだが、本当に余裕が無いんだ。だから恨むなら、俺もそうだが、アイツも恨んでくれ」


そう言って、俺はドロップを指差した。


「何故」


「不思議そうな顔すんじゃないよ。このタイミングで振る事になったのは完全にお前が原因だろが」


「遺憾」


「だってお前、今日何もしなかったら、翌日にはフィアとの既成事実を作らせるぐらいの事はやるだろ」


ドロップの事だ。俺の寝てる間に、全裸にしたフィアをベットの中に転移させる、なんても事もやりかねない。


「当然」


「やっぱりか……」


マジで危ねぇ。なし崩しで結婚なんて絶対嫌だぞ。


「ったく、俺だってこんな公開処刑みたいな真似はしたくないのによー」


『……さっき普通にやってなかった?』


「はぐらかすまではやっても、こんな大勢の前で振るほど俺は鬼畜外道じゃないんですよ。本来なら」


それでもこの場でフィアを振ったのは、証人を出来るだけ確保したかったからだ。じゃないとドロップによって、変な既成事実を作られかねない。


「まあ、結果として鬼畜外道になっちゃった訳ですけどね。だからフィアも、こんなクソ野郎の事はさっさと忘れな。キミは十分魅力的なんだ。俺よりももっとマトモな相手、すぐに見つかるだろ」


「なのに振ったんだよな」


「雄一君ちょっと黙ろうか」


割と真面目なところだから茶々入れないで。


「………い……や」


この時俺は、何かがひび割れる音を聞いた気がした。


「ん?」


「………嫌です!」


………え?


「……ゴメン、嫌って何が?」


「ヒバリ様の事を忘れる事なんて、出来る訳無いじゃないですか!」


目に涙を浮かべて、けれど真っ直ぐに俺を見つめて、フィアは叫んだ。


「……ゴメンちょっと耳がイカれたみたい。何か忘れられないみたいな幻聴が聞こえた」


「言ってるよ」


「…………フィア、誰も記憶喪失になれとは言ってないよ? 比喩だからね、比喩」


「現実を見ろ雲雀」


いやだって、振った事に対する返答が嫌!だぜ? 聞き間違いか何かだと思うやん? 現実よりも自分の耳か脳を疑うに決まってんだろ!?


「私は絶対、ヒバリ様の事を諦めません! 諦めたくありません!」


「いや何でだよ! 俺振ったじゃん! たった今盛大に振ったじゃん!」


なのに何で諦めないとか言ってんの!?


「そんなの好きだからに決まってるじゃないですか! 私はヒバリ様の事が本当に大好きなんです! ヒバリ様しかいないんですよ!

他の人なんて要らないんですよ! 私は一生、ヒバリ様だけを愛し続けます! だから絶対、諦めません!」


……何か力強くストーカー宣言されたんだけど。というかすげえ重いんですけど。あれ、この娘ってこんなんだっけ?


「……ね、ねえ何でキミはそんなに俺の事が好きなの? 俺何かしたかな? 命を二回ほど救っただけだよね?」


「そんなの関係無いです! 確かに助けていただいた事が、全てのきっかけだったかもしれません。でも、今だからこそ言えます! 例え助けていただけなくても、私はヒバリ様の事を必ず好きになると!」


いやいやいや! それは無い! あんな事件が起きなければ、フィアみたいな純粋な娘が、俺みたいな狂人を好きになる訳が無い!


だがそんな俺の幻想を、ドロップが打ち砕いてきた。


「……ひー、その子の言ってる事、ガチ。今、パラレルワールド覗いてみた。そしたらビックリ。ひーと銀髪姫が出会った世界は、全部ひーがアタックされてる……」


「お前、何て事をしてくれてんだ!!」


止めろよマジで! いらねえんだよ、そんなヤンデレの証明みたいなの!


「……因みに、殆どの世界ではひーが押し負けてる」


「本当ですか!?」


「お前本気でぶっ殺すぞ!」


猛獣に餌与えるような事すんじゃねーよ! 可能性があるって分かった途端、フィアの目が爛々と輝きだしたぞ!? アレもう完全に火ぃ点いたぞ!


「いやいやいや! 有り得ない有り得ない! 確かにフィアは可愛いけども! それでも性格とか、俺の好みとはかけ離れてるんだぞ!? 容姿とかを愛でるような事はあっても、本人を愛するような事にはならないって!」


『キミかなり最低な事言ってるけど!?』


「知ってますよ! けどそんな事を気にしてる場合じゃないんですよ!」


ドロップたちが介入してきた時点でヤバかったけど、それとはまた別種の危機が発生したんだぞ! 傷付けないようになんて配慮、もうしてる余裕無えよ! 俺にはフィアが、自分を繋ぐ壊れかけの鎖を引きちぎろうとしてる猛獣に見えるんだもん!


「性格が気にいらないのなら、ヒバリ様の好みの性格に変えてみせます! 他にも気に入らないところがあれば直します! 全部ヒバリ様の好みに合わせてみせます!」


「いやいやいや! そんなの普通は無理だから! 特に俺の好みって灰猫先輩みたいな人だから! フィアとはかけ離れてるからな!?」


『何かこっちに変な流れ弾が飛んできたんだけど!?』


灰猫先輩が真っ赤になって何か言ってるが、気にしている余裕は無い。


「正確に言うなら、ひーの好みは、ひーを振り回す事が出来そうな人。そういう意味では、銀髪姫も近くなってる」


「本当ですか!?」


「お前もう余計な事言うな!」


何でこんな時だけ饒舌なんだよ!


「いやでも、例え俺の好みのタイプになったとしてもだ! フィアみたいな常識人が、俺みたいな狂人とマトモに付き合う事なんて無理だろ!」


「ならば私も狂います!」


「っ!?」


「ヒバリ様と添い遂げる為に狂う必要があるのなら、私は狂います! 怖気の走る行為だろうと、笑って行ってみせます! 鬼畜外道の所業だろうと、進んで行ってみせます! それがヒバリ様の隣にいられる条件だと言うのなら、私も狂人になります!!」


普通ならば、馬鹿言うなと一笑にふされるような言葉。だが俺には、フィアの宣言を冗談だと受け止める事が出来なかった。


俺は見てしまったのだ。フィアの中に眠る狂気を。既にフィアは狂いはじめている。


俺たちの側へと、足を踏み入れている。


「ねえ、ひー」


だからこそ、


「状況が変わった。この銀髪姫は素質あるね。だからさ、このエキシビジョンの景品で、この娘を頂戴」


ドロップは言ったのだろう。


「フィアちゃんさ、師天一二衆ワタシタチに預けてみない?」

という訳で、フィア、ヤンデレ化の進行が開始。

唐突? いえいえちゃんと伏線、というか片鱗はありましたよ?


片鱗その1、母親が、男と結ばれる為だけに政界を牛耳った豪の人。


片鱗その2、全く会ってないのに、異様なまでにヒバリの事を好いていた。


片鱗その3、結構冷たくあしらわれていたのに、好きという気持ちに全く変化が無い。


片鱗その4、遠回しとは言え、何度も振られているのに全くめげない。


片鱗、というか伏線でその5、リンリンの台詞。雲雀を好きになるのは、ヒバリに対して厄介な要素を含んでいる的な奴。


とまあ、大まかに言うとこんな感じ。他にも作者が覚えてないだけで、細かい伏線もまだあるかも。

こんな感じで、分かり難い伏線を随所に散りばめてたんですわ。フィアにヒロインの魅力が無い? そりゃそうだよ。だってまだヒロインとして目覚めてなかったんだもの。この物語のヒロインは、如何に雲雀に振り回され、雲雀を振り回すキャラなのですよ。そういう意味では、フィアはやっとヒロインになったのです。

……まあ、ヒロインとして目覚めるのに60万文字も掛かるとは思わなかったけど。再登場にも30万文字ぐらいかかったし。一番最初に登場したヒロインなのに、一番扱いが酷いね。


因みにフィアとヒバリの関係の変化とは。


今までは

フィア(犬)「構って構って!」

雲雀「そらボールだ取ってこーい」

フィア(犬)「あ、待てー………っは!? はぐらかされた!?」


以降は

フィア(狼)「逃がさん!」

雲雀「やべ逃げろ!!」

フィア(狼)「待てやー!!」


こんな感じに変わりました。




まあ、色々と賛否はあるでしようが、読者の皆様は、また生暖かく見守ってください。

みづどり

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ