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来〜る〜きっと来る〜やっぱ来た〜

本当なら次の話までで一話だったのですが、いい感じに切れたので二分割しました。

因みにサブタイでエキシビション〜が無いのは忘れた訳じゃないです。そろそろエキシビションとかいれるのがクドく感じてきたから外しました。面倒になったとも言う。


誤字脱字の可能性大です。


ついでに報告。活動報告でも書きましたが、モーニングスター大賞の一次選考を突破しました。イエイ。

「消し飛べオラァァァァ!!!」


動揺のあまり、俺は全力で魔法を放っていた。


炎が、水流が、雷撃が、冷気が、暴風が、爆発が、衝撃波が、大地が、暴力的な威力でもって目標へと襲い掛かる。


一瞬の静寂の後、耳をつんざく轟音。破壊の嵐が、舞台の上に吹き荒れた。


観客席からは悲鳴があがり、舞台の上では粉塵が舞い踊る。


「………やったか!?」


あ、ヤベ。この台詞はフラグだ。


『いや何やってんのキミは!?』


かと思ったら、全く別の人物が至極当然の理由で台詞を回収してくれた。


「ありがとう解説の人」


『どういたしまして、じゃなくて! ちょっ、ヒバリ君マジで何やってんの!? 何でいきなりあんな威力の攻撃したの!?』


「動揺してやった。でも先制攻撃と威力偵察は戦いの基本。だから後悔はしていない」


むしろ、アレだけの動揺の中でよくベストな行動を取ったと、自分を褒めたい。


『だからそうじゃなくて! 何で義理の妹相手にいきなり攻撃したのかを訊いてんだけど!?』


『というかあの威力で偵察ですか!? 確殺の間違いじゃなく!?』


「いやまあ、確かにクラリス相手なら過剰攻撃なのは認めますし、あの攻撃なら普通に死にますけど………」


周囲に被害が出ないように範囲を絞っているとは言え、あの一撃一撃がこの世界の魔王を軽く屠るだけの威力を持つ。


『だったら完全に確信犯じゃない!!』


「そうなんですけど、そういう訳じゃなくて」


『何処が違うんですか!? あの威力の魔法が直撃したら、ただじゃ済まないでしょう!?』


突然の事態に灰猫先輩たちも動揺しているのか、とても強く追求してくる。


まあ、目の前で知人がいきなり殺人を犯した反応としては、全く間違っていない。むしろ当然の反応だと思う。


さっきも言ったが、あの魔法の一撃一撃が魔王を屠る威力を秘めている。学生としては優秀な部類に入るクラリスとしても、防ぐ術など存在しない。


「ええ。だからクラリスは死んでる筈なんですわ」


『自分で殺しておいて何をぬけぬけと!!』


「………じゃあ、あそこで生きてるのは誰?」


そう言って、俺は粉塵が収まり始めた舞台の一角、先程魔法をぶっぱなした中心部分を指指した。


そこには、


「もうっ! お兄様、いきなり何をするんですか!?」


怪我どころか、埃一つついていない姿で、こちらに向けて抗議をしてくるクラリスの姿があった。やっぱりフラグは回収されたらしい。


『………流石は義理とは言えヒバリ君の妹さんね。いい感じにデタラメだわ』


「その反応は予想外だった」


納得しちゃったかー。何で無事なの!?みたいなリアクションを予想してたんだけどなー。


どうやら俺なら何でもアリという認識が、思った以上に刷り込まれてるっぽい。


「誤解の無いように言っておきますけど、クラリスは普通ですよ? 優秀ではあっても、ちゃんと常識の中の住人です」


『それって自分は非常識って言ってるわよね?』


否定はしない。


「兎も角。俺の魔法に晒されて、クラリスが無事な訳が無いんすよ」


『………え、けど、普通にピンピンしてるわよ?』


『怪我どころか、汚れてすらいないですよ?』


クラリスが無事な訳が無い。なのに、目の前には平然としたクラリスの姿がある。


「だったら答えは一つでしょうよ。なあそうだろ? 偽者」


そう言って、俺はクラリスの姿をした何者かを睨みつける。


「………バレた?」


この反応で、俺は改めて確信した。


「当たり前だアホ。お兄ちゃんが義理とは言え、妹を間違えるか」


「流石お兄様」


「やかましいわ。ったく………」


ぬけぬけとふざけた事を言い放ってくる偽者に、俺は大きく溜め息を吐く。


何時かは来るだろうとは思っていたが、まさかこのタイミングで来るとは思わなかった。しかもクラリスの姿でとか、予想外にも程がある。


『………えーと、何か通じ合ってるところ悪いんだけど、どう言う事なの?』


一体何の嫌がらせだと俺が頭を抱えていると、状況を理解出来ていない灰猫先輩が尋ねてきた。


「簡単に言うと、このクラリスは偽物なんですよ」


無事じゃない筈なのに、実際は埃一つ付いてない。この矛盾が成り立つ状況は、そこまで多くない。


俺の魔法が見掛け倒しだった場合。クラリスが予想以上の実力を持っていた場合。魔法を防ぐ何らかの手段があった場合。そもそも相手がクラリスでは無い場合。


今回は最後のパターンだったって事を、灰猫先輩たちに説明する。


『………ゴメン、全っ然信じられない』


そしたら返答がコレだよ。信用無えな俺。


「なしてよ?」


『だって、見た目や言動が御本人にしか見えないし』


「そりゃ変装してんだから当然でしょうよ」


見た目や言動が別人とか、変装の意味無えから。


『というかそもそもの話、一体誰が何の為に変装なんてしてるのよ? 変装のクオリティも異常に高いし。感じからして悪い人では無さそうだけど、それだと逆に目的が見えないわ。公爵家のご令嬢に成りすますとか、普通に犯罪よ?』


「ご尤もです」


うん。灰猫先輩の言いたい事は凄く分かる。でも悲しいかな、俺には心当たりがあるんだ。親兄弟すらも容易く騙せるレベルの変装を可能とする、大した目的も無いのに平然と犯罪行為をやらかすようなトンデモ集団に。


まあだからこそ、クラリスの偽者が出てきても落ち着いていられるんだけど。多分、クラリスは安全な場所で寝かされてるんじゃないかな。


「それについては多分大丈夫かと。恐らく、というか十中八九俺の昔の仲間です。傍迷惑ですけど害は無い………筈」


『そこで言い切れないのが何ともキミらしいわね………』


『というか、傍迷惑な時点で十分に害があるような気も』


色々な意味で呆れている灰猫先輩とフルールさんに何も言えず、俺は静かに目を逸らした。


だってさ、俺の記憶にある限りの奴らの所業を振り返ると、無害だなんて口が裂けても言えねぇんだもん。傍迷惑って言葉だって、最大限言い繕ってるんだぜ? 断言なんて出来る訳が無いっての。


『キミは本当に一度、交友関係を見直した方が良いと思うわ』


「いや大丈夫大丈夫! 確かに俺の知り合いは殆ど頭可笑しいけど、今いるのは比較的マシな奴だから! トラブル引き起こす率はトップレベルだけど、今すぐ何か起きるって訳じゃないから! 基本、後々になってから問題になるタイプだから!」


『それの何処が大丈夫なのよ!?』


『というか現在進行形で問題引き起こしてますよね!?』


「だから大丈夫ですって! アイツ変装なんてしてるけど、実際は無気力の権化みたいな奴ですし! 此処にいるのだって、大方命令に逆らえなかっただけで、命令以外では大して行動しませんから! なあそうだろ? ドロップ」


そう言って、俺は偽者、もといドロップへと同意を求める。


同意を求められたドロップは、目をパチくりさせるだけだった。


「………瞬きで返事を返すな。せめて頷け」


この馬鹿娘は………。ついに言語どころかボディランゲージすら捨てやがったか。


「というかこの野郎。俺が正体気付いてんのを確信したからって、即座に普段のノリに戻してんじゃねーよ! 先に言っておくけど、俺は通訳しねーかんな!」


「………」


「だから、眉を寄せて不満そうにするんじゃない! せめて一文字でも喋れ! てか最低でも単語で喋れ!」


「チッ」


「露骨な舌打ち止めろコラァ! 妥協して一文字喋りを認めたってのに、その一発目が舌打ちってお前本当に何なの!?」


「[灼け」


「だから不満の言葉の代わりに魔法を撃つ癖止めろ! 数ヶ月ぶりだけど本当に変わんねえなオイ!」


仲間が相変わらず過ぎて泣けてくる。色んな意味で。


『………まさか、あのヒバリ君がマトモなツッコミに回ってるなんて………!?』


『類は友を呼ぶって本当なんですね………』


「何をそんなに驚いてんの?」


なんか愕然とした声が聞こえてきたと思ったら、解説の二人、というか会場全体がざわついていた。俺がマトモなツッコミ役になったのが、そこまで衝撃的だったのか。


『だってキミが振り回されてるのよ!? 驚くに決まってるじゃないの!』


『私なんて、ヒバリ君が振り回される事もあるんだなという安堵と、ヒバリ君を振り回すその方に対する恐怖を同時に感じています』


「言いたい事は分かるけど、そこまで言うか」


んな天変地異の前触れかの如く驚かなくても良いだろうに………。実際に天変地異が起きても不思議じゃないのが怖いところだけど。


『いやでも、本当にヒバリ君の知り合いって凄まじい人が多いのね。前に聞いた人も相当………あれ? 確か前に話してくれた人の名前って』


あー。そう言えば、ドロップについては学生会室でちょこっと話したっけ。


「そうですね。さっくり紹介しときましょう。コイツはドロップ。怠ける事と、厄介事を生み出す事に関しては右に出る者はいないであろう、俺の以前の仲間です」


そう言って、灰猫先輩たちにドロップを紹介する。流石にドロップも空気を読んだようで、変装の魔法を解いて目礼する。


その姿に、会場中から感嘆の声が漏れた。


変装の魔法の解いたドロップの姿は、眠たげな赤い瞳と、背中まで伸びたボサボサの桃色の髪を持った十八歳ぐらいの少女であった。服装は、何処で入手したのか不明な、この学園の女子制服。その上から草臥れた白衣を羽織っていた。


はっきり言ってだらしない。眠たげな瞳が、ボサボサ髪が、草臥れた白衣が、身嗜みなどどうでも良いと雄弁に語っている。


だがそれなのに美しい。身嗜みに気を使わない事など、全くマイナスにもならないような、素材だけの美しさ。あるがまま、流れるままの姿だからこそ感じられる、天然の美。


手を加えることすら憚られる、そんな美を宿す女性。


それこそが異世界クラックにおいて、【破滅を下賜する聖女】【常怠不動の女魔導】【始まりと終わりの創造者】と呼ばれた魔導師。


師天十二衆が一人にして、最高峰の問題児。ドロップなのだ。

という訳で師天メンバー登場。無気力系理不尽のドロップさん。予想以上に喋ってるのにはちゃんと理由があります。主に性格的な物で。

ドロップの登場によって、ヒバリの行動の意味がドンドン暴露される予定。

という訳で次回期待してください。尚、クイーンはまだ登場はしません。間接的には関わってますが。

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