表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
113/123

エキシビションその6 舞台の中心でフィアが叫ぶ

中々終わらないこの章。書けども書けども横道に逸れる恐怖。もう少しで終わる筈なのに。


誤字脱字の可能性大です。

さーて、一体どうしたもんだろう?


「ヒバリ様! 私、頑張りますから!」


目の前にいるのは、俺の暫定婚約者であるフィア。思いのほか早くきたミカヅキの仕返しによって、次の挑戦者がフィアに決定してしまったのだ。


そして案の定というか、フィアは対戦相手に俺を指名してきた。


「……え、マジでやんの?」


予想通りと言えば予想通りだが、それでも俺は頬が引き攣るのを止められなかった。一応俺、この娘の目の前で魔人やら魔王やらを仕留めてるんだけど。


『おっと、あの傲岸不遜で自由奔放なヒバリ君が戸惑っています! これはレアだ!』


『流石の彼でも、婚約者が相手となると動揺するようですね!』


解説の二人から、真実のようで、その実全く的外れなコメントが飛んでくる。俺が戸惑っているのは、フィアと戦う事じゃなくて、戦いを挑んでくる姿勢になんだが。


取り敢えず、フィアにこれだけは訊いておきたい。


「お前正気か?」


「……いや、あのー、ヒバリ様? 何でそんな残念な子に向けるような目をするんです?」


「残念な子だと思ってるからだけど?」


「酷いです!?」


愕然とした表情を浮かべるフィア。そうは言っても、事実だしなぁ。


だってさ、あの男前なミカヅキですら俺と戦うのは遠慮したんだよ? それなのに、ミカヅキ以上に俺の実力を知ってるフィアが挑んでくるとか、残念としか言いようがない。


「俺、手加減しないよ? 楽しませるようには立ち回るつもりだけど、普通に戦うよ?」


「分かってます。ヒバリ様がそんなに甘くないって事は。こういうイベントの時は特に」


「景品に色を付ける気も無いんだよ?」


「当然です。特別扱いはして欲しくありませんし、そもそも私は景品なんかいりません」


「……企画の根底を覆すような発言はしないでくれません?」


じゃあ何で出て来たし。景品いらないなら俺と戦う必要無いじゃん。


「景品はいりません。でも、代わりに欲しいものはあります!」


何かを決意したような顔で、フィアが宣言する。顔が真っ赤になってるあたり、嫌な予感しかしない。


「……何かね?」


「ヒバリ様! この試合で私が頑張ったら、で、デートしてください!」


『キターーー!! 恋する乙女からの宣戦布告よこれは!』


恋する乙女からの宣戦布告とやらに、会場は一気に盛り上がった。所々でブーイングが混じってる気がするが、兎も角盛り上がった。


まあ、盛り上がるのも当然だろう。他人の恋物語ほど面白いものは無いし、このシチュエーションはある意味で王道とも言えるものだし。ただ、フィアらしくないとは思う。


「却下」


そしてこれは考えるまでも無く却下の方向で。


「……はう」


『ちょっ、あっさり却下しましたよ!? 彼女はキミの婚約者じゃないんですか!?』


「いやだって、そんなルール無いし。というか、特別扱いすんなって言った舌の根も乾かぬうちに何言ってんだと」


これもガッツリ特別扱いだと思うんだよ俺。


「あうぅ……」


『コラァ! 勇気を出した女の子に何言ってんのキミは! 彼女しょぼくれてるじゃないの!』


解説の二人が、というか会場全体が凄い五月蝿い。間違った事は言ってない筈なのに。解せぬ。


「それとこれとは話が別でしょうに。更に訂正しておくと、フィアは正式な婚約者って訳じゃありません。暫定です」


「うぅ……」


暫定と聞き、落ち込むフィア。それに反比例するかの如く、大きくなるブーイング。


『ねえ何でキミはそんなに追い討ちを掛けるの!? 彼女の事嫌いなの!?』


「いえ特に」


嫌いなら関わりを持ってない。印象としてならそこそこに好印象だよ。


『ならもっと優しくなさいよ!』


「結構優しくしてる筈なんですけどね」


毎回命の危機には駆けつけてるし。


『だったらデートぐらいしてあげなさい!』


「えー。俺、女の子とデートするより、男友達と気楽に遊んでいたい人なんですけど。もしくは家でゴロゴロしてたい」


『清々しいまでの屑野郎だわ……』


『何でフィリアさんはアレに惹かれたんでしょうね?』


「アレって言うな」


その台詞には同意するけれども。


いや本当、何でフィアは俺に惚れてんだろね? そりゃあ、命の危機には何度も駆け付けてるし、惚れられても可笑しくはないよ? でもそれ以上に、相当雑な扱いをしてる筈なんだけど。それこそ百年……は言い過ぎか。大体五年ちょいの恋が冷めるぐらいかな。


『恋は盲目って事かしらね』


「雑な扱いをされて平気なのは、単に根性があるだけじゃ」


『キミは何でそんなにひねくれてるの? ただの乙女心で良いじゃないの!』


「男が何をぬかしてんですか?」


『現在進行形で女の子になってますけど!?』


そういやそうだった。違和感無さすぎて忘れてたけど、灰猫先輩は性転換中だった。


「一発ネタかなんかだと思ってたわ」


「ぶっ飛ばすわよ諸悪の根源!!」


ブチ切れた灰猫先輩が、解説に使っていた音源拡張の魔道具を投げつけてきた。


「マイク投げんといてください」


いや、完璧に忘れた俺が悪いんだけどね? それでも物を投げるのは違うと思うんだよ。


取り敢えず、飛んできたマイクっぽい魔道具を丁寧に受け止め、空間転移の魔法で元の位置に戻す。この魔道具壊れ易いんだよね。


『………何か一瞬で戻ってきましたよ?』


『………サラっと伝説級の魔法を使わないでくれる?』


ああ、そういや転移系の魔法って失われてんだっけ? もう自重とかどうでも良くなってきたから忘れてたわ。


『………アレだよね。ヒバリ君って初めて会った時とかは、面倒事は嫌いだから実力隠そー、みたいなスタンスだったのに、最近は自重とか全くしてないよね』


頭が痛むのか、こめかみを揉みながら灰猫先輩がそんな事を訊いてきた。


「それが実は、自重してると悪ふざけの幅が狭くなる事に気付きまして」


ほら、俺の悪ふざけって魔導師としての力を無駄に振り絞る系の奴が多いし。


「それにノリと勢いで行動する事が多いせいで、後から誤魔化すのが面倒になったんですよね」


思い立ったが吉日とばかりに行動しまくるせいで、辻褄を合わせる為の嘘が中々思い付かなくなってきたんだよなぁ。


「だったらいっそ、実力を隠す系から、アイツなら仕方無い系に路線変更しようかと」


『いや自重しなさい!!』


「それは生物に呼吸をするなと言っているようなものですよ?」


『そこまで言うか………』


生物が空気を吸っていきてるように、俺の悪ふざけはある種の生理現象の域に達しているのだ。


「だからこそ、それとなく凄い事をやって、学園の関係者をじわじわと調きょ、もとい慣らしていく事にしたんです」


自分を変えれないなら周りを変えてしまえば良い。これぞ発想の転換。


『……何故かしら? 合理的だと判断してしまう私がいるわ……今不穏な単語が混ざらなかった?』


『実際、私は既にヒバリ君だからしょうがないと思い始めてます……調教って言いかけましたよね今』


気のせいです。


「まあぶっちゃけ、目立たない為に実力を隠しても、厄介事の方からやって来るのがお約束な訳で。最初は定番に則って実力を隠そうとしてたけど、自分のキャラ的にヤレヤレ系主人公気取るのも疲れるというか。ネタキャラが気取ったところでひたすら寒いだけですし」


『凄い説得力があるけど、それぶっちゃけて良いことなの!?』


『なんかヒバリ君らしからぬ何かを感じましたよ!?』


うん。俺も一瞬誰かに乗っ取られた気がする。


「まあ兎も角、これから徐々に自重をとっぱらっていこうかなと思う訳でしてね」


『出来れば止めて欲しいんだけどなぁ……』


『何をするのか想像出来ませんよね……』


「その被検体第一号にフィアがなりかけてます」


『絶対止めなさいそれは!!』


『何をする気ですかキミは!!』


「よしじゃあ殺ろうか」


外野が何やら騒いでいるけど、無視だ無視。フィアも頬を引き攣らせてるけど、無視だ無視。


という訳で試合開始。


「………あ、あの、ヒバリ様? 何故だか、やろうかと言う部分がとても不穏な言葉に聞こえたのですが……」


「ハッハッハ。安心しろよフィアちゃん。それはキミの聞き間違いさ。大丈夫。試合はちゃんとやるし、特別にキミの要望にも応えてあげよう」


「本当ですか!?」


すると怯え顔から一転、満面の笑みを浮かべるフィア。いやー、純粋過ぎるのも考えものだね。チョロ過ぎる。俺が何も無しに餌を与える訳が無いのに。


「と言うかそもそも、普通に言ってくれればデートぐらいしてあげたさ。まあ、フィアちゃんがデートするのに障害を設けたいと言うのなら、今後もその方針でいく事にするけど」


「………え?」


フィアの顔が固まった。それは俺の台詞の意味を、受け入れる事を拒否してるかのようだった。


そんな事をさせるつもりは無いけどね。という訳で、追い討ち掛けます。


「だってそうだろう? 本来なら一言二言で済むような事を、わざわざこんな大勢の前で言ったんだ。デートをする為には、俺に頑張ったと認めて貰う必要があるってね。随分と変わったポリシーだけど、尊重しようじゃないか。暫定とは言え婚約者だしね」


そう言って、俺はフィアににこやかに笑い掛ける。けど何故か、フィアの方は蒼白になっている。何でだろうね?


「……あ、あの、ヒバリ様。わ、私は、な、何か気に触るような事を言いましたか? お、怒ってるんですか……?」


俺の言葉に嘘が無い事を感じたのか、しどろもどろになりながら訊ねてくるフィア。その瞳には大粒の雫が浮かんでいた。


うむ。美少女の涙目というのには唆られるものがあるが、一応誤解は解いておこうか。


「勘違いしないで欲しいんだけど、俺は全く怒ってないよ」


「だったら!」


「けどさ、俺ってひねくれ者なの。こんなに全力で囲おうとされると、ついこっちも全力で逃げたくなっちゃうんだ」


この台詞で、フィアは俺が言いたい事を理解したらしい。ダラダラと全身から冷や汗を流している。


「最初から不思議だったんだよねー。確かにフィアは元気っ子だけど、お姫様らしい面もちゃんとある。なのに大勢の前でデートに誘うなんて大胆発言。うん、凄くらしくない」


「うっ」


まるで推理を語る名探偵のように、回りくどく、じわじわと、されど確実にフィアを追い詰めていく。


「場合によっては国の評判すら落としかねない。フィアがそれを理解していない筈が無い。ならば何故それを行った? 簡単だ。やれと言われたからだ」


「ううっ」


ならばそれは誰だとと言う話になるけど、そんな指示を出しそうで、かつフィアに指示を出せる立場の人間なんて一人しかいない。


「これはお母さんの指示だろう? 目的は宣伝かな?」


「あう!?」


デートを要求する事で、大勢の人間に二人の仲を知らしめる。ついでに周囲にむけての牽制もあるか。


「……い、いやですね。そ、そんな訳無いじゃないで、ですか。だ、だってお母様は、リザイア王国にいるんですよ? このい、イベントは直前まで秘密だったんですから、き、距離的に不可能です」


「そんな滅茶苦茶動揺してる時点でなぁ……。ところでフィア。そのブローチ綺麗だね」


「な、何の事でしょう!?」


俺がそう言うと、フィアは咄嗟に胸のブローチを押さえた。


「あのな、俺が魔道具に気付かない訳が無いだろ」


「あうあう」


フィアの制服についているブローチ。一見するとただのおしゃれアイテムだが、その実は遠距離通信用の魔道具だ。この世界では下手すりゃ国宝級の代物だが、一国の姫との連絡用と考えれば可笑しくは無い。


まあつまり、丁度良い機会だからと、フィアのお母さんはガッツリ外堀を埋めにきた訳だ。


「いやー、全く上手い手だ。流石は愛の后様。政治的な駆け引きもそうだけど、それ以上にしっかりと男の萌えポイントを押さえてる」


「あうぅ……」


フィアのようの美少女に、ここまで大胆に迫られる。それもエロい意味じゃなくて、ピュアな意味で。うん、これにグラッとこない男なんてそういない。


「けどねぇ、俺はさっきも言ったようにひねくれ者でさ。こういう風にアピールされちゃうと、ついつい斜め上な捉え方をしたくなっちまうんだ」


「うわーん! お母様の馬鹿ーーー!!」


チクチクと言葉で責めていると、ついに耐えられなくなったフィアが泣き叫ぶ。あの様子だと、相当しっかり釘を刺されてみたいだなぁ。


「まあまあ。そんなにお母さんを責めないの。これ、普通の男なら大体クリティカルだから」


単に俺があの人の予想の斜め上を行っただけだから。


「じゃあヒバリ様の馬鹿ーーー!!」


「いや最終的に決行したフィアの自業自得だから」


「あう!?」


半ば幼児退行を起こしているフィアを、正論によって正気に戻す。


「まあ安心しろよ。ちゃんと頑張ったら、お望み通りデートしてやるから」


「そんな事言って、ヒバリ様の事だからハードルを凄く高くするに決まってます! 難易度が凄い事になる筈です!」


「良く分かってらっしゃる」


「そこは否定してください!」


いやー、それは無理な相談というか。もうこれは性格だしね。


「と言うか、それを分かってて、よくこんな禄でもない奴を誘おうと思うね」


意地悪されるって断言出来るのに、それでもアプローチを掛けてくるってのは、ちょっと信じられないかも。


「だって好きなんですもん!!」


どストレートに放たれた台詞が、全てを止めた。俺も止まった。


だがフィアは、それに構わず言葉を続ける。


「どんなに意地悪な事をされても、相手にされなくても、私はヒバリ様の事が好きなんです! 」


必死に、涙ながらに叫ぶフィアの姿に、不覚にも俺はドキッとしてしまった。


「確かにヒバリ様は禄でもない人です! 人を人とも思わないような酷い人です! 鬼畜です! 馬鹿です! 非常識です! 頭の可笑しい人です!」


前言撤回。フィアてめぇこの野郎。告白すんのかディスるのかはっきりしろや。


「でも、それでも好きなんです! その程度の欠点なんか気にならないぐらい、大好きなんですよ!」


会場に響く、フィアの全力の告白。予想外の展開に、会場の誰もが声を発せないでいた。


「なのにヒバリ様は全然応えてくれなくて! アプローチしても誤魔化して! だからお母様に相談したんです! だから恥ずかしいのを我慢して、はしたないと思われるかもしれない不安を抑えて、ここでデートに誘ったんです!」


告白やがて嗚咽混じりに。フィアの足下にはシミが出来る。


「なのにあんまりじゃないですか! 勇気を出して誘ったのに、何でまた誤魔化すんですか! 振り向いて欲しいなんて贅沢は言いませんから、せめて私とちゃんと向き合ってください!」


ポロポロと涙を流しながら、フィアは俺を真剣な目で見つめてくる。答えを求めてくる。


だから俺も、真面目な表情でフィアを見つめ返し、答える。


「頑張ります」


『そこはハイって言いなさいこのボケナス!!』

フィアの本気の叫び。ヒロインを蔑ろにし過ぎてキレられる主人公って、中々いないような。


そして予想以上に綺麗に区切れた。もうこの話をハイライトにしてしまって良い気がする。本当ならこの後にヒバリのバトルが入る予定だったけど。


作者的にかなり悩むので、ちょっと参考までにアンケとります。


1,この話をハイライトとして、終章の流れにもってく。要するに恋愛end

2.色々あって、ヒバリがバトルする流れになる。要するにバトルend。


読みたい方にコメントを。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ