表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
111/123

エキシビション その4 雄一のターン

雄一のターンは次まで続きます。


以前よりも文字数を少なくしているので、エキシビションは長めです。多分、文字数六十万ちょいで、この章は終わる筈です。


誤字脱字の可能性大です。

さて、バ会長と話している間に、ミカヅキと雄一の試合が始まろうとしている。


なので、ちょっと思考を分けておく。これでバ会長と話しながらも、二人の試合を観戦出来る。


これで矛盾は解決だな。だから誰もツッコまないで欲しい。……だから剣を振りかぶるな雄一! 俺、特に何もしてないから!


「ッチ」


あからさまに舌打ちするなと言いたい。


「……また先輩が何かしたのか?」


「いや、取り敢えずしばいといた方が良い気がしてな」


「……そ、そうか」


おい、ミカヅキの顔が引き攣ってんじゃねえかよ。もっと言ってやれミカヅキ。俺の扱い酷過ぎるって。


「ああ……初対面でこういう事を言うのはアレだが、あんまり理由の無い攻撃は駄目だと思うぞ?」


そうだそうだ! 言ってやれミカヅキさん!


「理由ならある」


「……いやいや。先輩は何もやってないだろ。偶にこっちに意識を向けているが、ずっと会長と話してるんだぞ」


「いや、俺が一瞬イラッとした。つまりは馬鹿が何かやったって事だ」


「……」


雄一、あまりの暴論にミカヅキが絶句してるぞオイ。


「………流石にそれは言い掛かりじゃないのか?」


「甘い。甘いぞキミ。アイツは動かなくても要らぬ事しかしない邪神みたいな奴だ。何か妙な気配がしたら、取り敢えずアイツを疑うのが正解なんだ」


なんつー言い草だよ。


「……動かなくても要らぬ事しかしないとは、盛大な矛盾な気がするのだが?」


「それがアイツの場合は矛盾じゃないんだよ。アイツは厄介事の誘蛾灯みたいな奴でな。何もしなくても問題がやってくる。勿論、何かしても問題を起こす。キミも心当たりあるだろ?」


「いや、流石に………それは……ない、だろう……?」


ミカヅキさん、明らかに補習の時の事思い出してるよね? だって否定しきれてないないもん。


「今回も、俺は何の理由も無くイラッとした。つまり雲雀が何かしたと考えた訳だ。これは経験則だから納得出来ない部分もあるだろうが、そういうものだと思って欲しい」


ミカヅキよりも俺が納得出来んのですが。


「そういう、ものなのか……?」


ミカヅキさん、納得しないで? 全然違うから。だって俺自身が納得してないもん。


「お前の納得は求めてない」


このやろー。


「……さっきから気になっていたのだが、ユウイチ先輩と先輩は会話しているのか? 先輩は全く喋ってないのに?」


「これも経験則だ。アイツの顔を見れば何が言いたいのかは分かる。あくまでニュアンス程度だが」


嘘付け。さとりレベルで心読む癖に。


「あ?」


あ?


「以心伝心だな……」


互いに無言で睨み合っていたら、ミカヅキが呆れと驚きがないまぜになった呟きを漏らした。自分でも、付き合いの長さに関しては誇っても良いと思ってはいる。


それはさておき、そろそろ試合を始めて欲しい。コントや何やらで結構な時間を食っているから、色々な観客たちが痺れを切らしかねない。


「ふっ!」


だから剣を投げようとするなと言うとろうに!


「ったく、学習しろ」


へいへい。すんませんでした。だからさっさと始めてください。


「っち。分かってる」


「会話じゃない会話か……。不気味だ」


ミカヅキが引いているが、俺も雄一も気にしない。


そして、試合が始まった。


かなり強引に進めた所為で、ミカヅキが微妙について来れてないが、それでも流石と言うべき早さで気持ちを切り替えていた。


そしてミカヅキは真剣な表情で雄一を見据える。


「まずは小手調べだ。これぐらいは簡単に対処してくれよ?」


そう言って、ミカヅキは雄一に向けて飛び出した。そのスピードは矢の如く。予想以上のスピードに、観客たちもどよめいた。


そして飛び出した勢いを一切殺す事なく、ミカヅキは雄一目掛け拳を放つ。


それに対して雄一が行ったのは、ただ数歩後ろに下がる事のみ。それだけで、ミカヅキの拳が紙一重で空を切る。雄一がミカヅキの攻撃を完璧に見切った故の回避だった。


「ッチィ!」


回避された事にミカヅキは舌打ちして、雄一を追撃、ではなくバックステップで大きく距離を取る。


「ん? どうした? こないのか?」


追撃してくると思っていた雄一は、ミカヅキが距離を取った事に首を傾げる。


それに返ってきたミカヅキの反応は、とても苦いものだった。


「深追いなんて出来る訳が無いだろう……。これが普通の試合なら今ので私の負けだ」


この攻防にすらなってないやり取りで、ミカヅキは彼我の実力差を完璧に把握したらしい。冷や汗を掻きながらも、ミカヅキは誰かに向けての毒を吐く。


「全く……。先輩本人も化物なのに、その周りも化物ばかりか。この様子だと、ショウゴ先輩も実力を隠してるな」


訂正。毒は俺たち宛てでした。


「化物呼ばわりは別に構わんが、馬鹿と同類認定だけは止めてくれ」


「僕も同感!」


そしてミカヅキ以上の毒を吐く親友二人。もう何も言うまい。


「化物なのは否定しないのだな……」


「ぶっちゃけ今更。だが、本気で雲雀と同類扱いは止めてくれ」


………何も言うまい。


「どんだけ嫌なんだ……」


「色々な意味で嫌だな。俺も翔吾も、雲雀ほど人の道を踏み外してない」


おい待て。流石に外道呼ばわりは看過出来んぞ。


「けど明らかに人の領域は踏み外してるでしょ?」


うん。


そんな事より、はよはよ。


「んな風に一々急かすな。中断すんのはお前が原因だろうが」


え!? これ俺の所為なの!?


「お前が悪い」


「………いや、先輩は悪くないぞ? 私が余計な事を言ったのだから」


だよね!?


「キミも真面目だな。何も言わずに馬鹿の所為にしとけば良いのに」


「そんな自然に冤罪の片棒を担ぐのを進めないでくれるか………?」


「………なるほど。俺たちの周りにいないタイプだな。雲雀が気にいる訳だ」


「………私は先輩に気に入られてるのか?」


「確実に。染まってない常識人で、ツッコミ役ってのは貴重だ」


「嫌な気に入られ方だなそれはっ!」


本気で嫌そうなミカヅキに、ちょっとショックを受けました。いやまあ、遠回しに俺に迷惑掛けられると言われた様なもんだし、気持ちは分からなくもないけどさ。


「諦めろ。馬鹿に気に入られたのが運のツキだ」


「面倒事に巻き込まれるのは確実なのか?」


「何時か必ず。ま、安心しろ。何時巻き込まれても大丈夫なように、この場で軽く鍛えてやるよ」


そう言って、ミカヅキに向けて雄一は獰猛な笑みを浮かべる。


そのあまりの迫力に、流石のミカヅキを後ずさった。顔も引き攣っているし。


「………鍛えて貰うのは嬉しいが、多少は手加減を希望したい」


「大丈夫だ。あの馬鹿よりは遥かにマシだ!」


その言葉と同時に、今度は雄一が打って出た。


スピードはミカヅキよりも遥かに上。ミカヅキの突撃が矢なのらば、雄一の突撃は弾丸のそれだ。並の相手ならば目視も難しいスピードで、雄一はミカヅキの懐へと入り込んだ。


「これぐらいは対処しろよ?」


先程のミカヅキと同様の台詞を雄一は吐いた。だが、繰り広げられる光景は全く異なっていた。


雄一が幾度となく拳を放ち、それをミカヅキが必死の形相で防いでいた。


………取り敢えず、一言。


「ふー、やっと追い付いた。これで喋れる」


「黙れと言いたい」


万感の想いが篭った感想を、翔吾ににべもなく切り捨てられてしまった。


「いきなりどうしたんだい? キミは今までボクと喋っていたじゃないか。それに追い付いたとは?」


「会長さんは気にしないで。そして訊かないで。訊いたらまた進まなくなる」


俺たちの突然の発言に首を傾げるバ会長だったが、翔吾の有無を言わさぬ迫力に口を閉じた。懸命だと思う。


「………オホン。それにしても、二人とも凄まじいね。ユウイチ君は言うまでもないが、ミカヅキ君も素晴らしい腕前だ」


少々露骨な話題転換だが、俺も翔吾も何も言わずに乗っかった。話が進まないのは、こっちとしても困るしな。


「確かにねぇ。雄一は例外として、ミカヅキは本当に強いな。アレをここの学生で捌ける奴が何人いるやら」


雄一から放たれるのは、一撃一撃が致命の威力を誇る連打だ。達人レベルのミカヅキで何とか防戦一方。それ以下の相手の場合、最初の一撃でやられてる。


「とは言え、あのままだとジリ貧だ」


「そんなのミカヅキも理解してるだろ」


幾ら攻撃を防いでいても、攻撃を当てなければ勝利は無い。スタミナ切れを狙うという手もあるが、雄一とミカヅキには根本的なスペックからして差がある。雄一のスタミナ切れを狙ったら、その前にミカヅキのスタミナが切れる。


無理してでも打って出なければ、ミカヅキはこのままなす術もなく封殺される。


まあ、そんな事をあの娘が理解していない訳が無い。


「っ、今だ!!」


そして予想は当たり、雄一が貫手を放った瞬間、ミカヅキが打って出た。


ミカヅキは迫り来る貫手を、受けるでも、回避するでも無く、同じく貫手でもって向かい打ったのだ。


「む?」


これには雄一も眉を顰める。ミカヅキの意図が理解出来無かったのだろう。かく言う俺自身も、一瞬だがミカヅキの意図が読めなかった。


何故ならミカヅキの貫手は、雄一の貫手と衝突する軌道では無く、ほんの僅かに逸れていたのだ。それも雄一の貫手の外側に。


これが内側なら、ミカヅキの狙いはクロスカウンターだと判断出来た。だが外側の場合、クロスカウンターを狙ったとしても、雄一の腕が邪魔をしてカウンターは決まらない。それどころか、体勢的に碌な防御も出来ずに雄一の貫手が突き刺さる事になる。


肉を切らせて骨を断つ作戦か?と、この一瞬を知覚出来る人間は首を捻る。


だが、その疑問は次の瞬間に、予想外の光景をもって裏切られた。


雄一の貫手は、ミカヅキの貫手の内側を沿うように滑り、そのまま制服の袖の中を貫いた。


「なっ!?」


予想外の事態に雄一は目を見張る。まさか戦闘中に相手の、それも女子の袖の中に手を入れる事になるとは思わなかったのだろう。


そして当然、そんな動揺を見逃すミカヅキではない。


「捕った!」


ミカヅキは思い切り腕を外側に振った。これによって、制服によって腕を捕られた状態の雄一も大きくバランスを崩す。


「ッチィ!」


今度は雄一が舌打ちをする番だった。今の状況の意味が、どれほど悪いかが分かっていたから。


体勢を崩され、片腕は即座に自由が効くような状況では無い。


そしてミカヅキが使うのは、柔術や合気術のような、力の流れを利用する類の武術だ。


ここから先の展開は、絶望しかない。


ミカヅキは素早く雄一の腕を掴み、足を払い、雄一の身体を宙に浮かせる。


「これで、私の勝ちだ!!」


そう叫びながら、ミカヅキは雄一の身体を全力で地面へと叩き付けた!


「見事!」

本当ならもうちょい書きたかってんですけど、いい感じ区切れたんでここまでにしました。


衣服を使った拘束技は、あらゆる中国拳法の達人が使ってたのを思い出して、採用しました。意外性の溢れる戦闘を書きたかった。


次回、決着、ミカヅキへの賞品発表、そしてついに雲雀が指名か?


にしても、戦闘描写が超疲れる。そして改めて感じる会話ばっかりの楽さ。駄目だと分かっていても、会話で文字数を稼いでしまう業の深さよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ