エキシビション その1
前回言ってた通り、試験的に短めにしてみました。
それでも少し遅いですが。
誤字脱字の可能性大です。
「はい、という訳で始まります。学園最強(笑)との呼び名の高い会長と、今大会の優勝者であるサルビス選手の対戦です」
舞台で睨み合う二人。
バ会長は余裕そうな笑みを浮かべ、サルビス選手はそんなバ会長を全力で警戒していた。
「やはり会長は余裕そうですねぇ。とは言え、サルビス選手も緊張でガチガチという訳でも無さそうです。そこのところ、どう思いますか?」
舞台の様子を、解説席のフルールさんと灰猫先輩に訪ねてみる。
『……どう思うも何も、何故ヒバリ君が解説の真似事をしてるんです?』
「暇だから」
『キミはそっちで大人しく評価してなさい! 解説はこっちでやるから!』
灰猫先輩に怒られた。
「てか、始まって即座に飽きんなや」
「不真面目」
雄一と翔吾からも文句が出た。
「いやー、戦いの流れが予想通りだったから、ついな」
俺はそう言って頭を掻きながら、舞台の方へと視線を向けた。
「まあ、言いたい事は分かるけど」
二人も俺の意見に同意しながら、同じく舞台の上を見やる。
舞台では、二人の選手による見事な剣の応酬が行われていた。
挑戦者であるサルビス選手が果敢に攻めて、バ会長がそれを全て綺麗に捌く。時折、短剣による鋭い反撃も放っていた。
剣速はどちらも素早く、太刀筋は的確。
見応えとしては、十分満足のいく試合である。
でも、
「差が歴然とし過ぎてるんでしょ?」
「そゆこと」
確かに、サルビス選手の剣は光るものがある。だが、魔法剣士であるバ会長は、その全てをただの剣技で対応している。
二人の力量差が、如実に現れている結果である。
「やっぱり、このメンバーに正々堂々は駄目か」
順当過ぎる試合内容に、俺は改めてメンバーと生徒たちの力の差を実感した。
大会優勝者のサルビス選手でも、バ会長の前では霞んで見えるのだ。
雄一や翔吾、俺が相手となれば尚更だろう。
「こりゃ、この後の挑戦者たちの作戦に期待だな」
実力が離れ過ぎているので、正攻法では俺たちに一撃与えるのも難しい。
そんな風に不甲斐ない結果が続けば、回数を重ねる毎に試合が詰まらなくなる恐れも出てくる。
当然、観客を飽きさせないように上手く立ち回る予定だが、それでも限度がある訳で。
「手加減してるのが気付かれない内に、何か面白い手が出れば良いんだけど」
「さて、どうなるかな?」
「まだ初戦だし、気にしなくても良いんじゃない? それに、初めはやっぱり王道でしょう」
「それもそうか」
翔吾の言葉に、俺は納得する。
最初に正攻法で攻めてくれた方が、後の奇策も栄えるのだから。
と、そんな風に考えていると、舞台の上の試合が動いた。
攻撃が尽く受けられた事に焦れたサルビス選手が、つい大振りの一撃を放ってしまったのだ。
当然、その隙をバ会長が見逃す筈は無く。
「決まりだな」
「そだね」
隙に乗じて懐に潜り込んだバ会長は、持っている短剣でサルビス選手の剣をはじき飛ばした。
これにて試合は決着である。
『サルビス選手敗北ーーっ! やはり学園最強の壁は厚かった!』
フルールさんが勝敗を告げると、観客席から歓声が上がる。
『さて、これで試合は終了した訳ですが、評価の方は如何に!?』
ドラムロールでも聞こえてきそうな雰囲気の中、俺たちはさっきの試合の感想を話し合う為に向かい合った。
「どう思う?」
「んー、悪くは無いんじゃない? 結構健闘してるように見えたし」
「見栄えはあったしな」
感触は悪くなしと。
「五段階評価でいうならどんぐらい?」
「3.7」
「BかB-」
「五段階評価と言っとろうに」
せめて揃えて欲しい。
だが、概ね上の中〜上の下って評価か。
「となると………」
二人の評価を参考にした上で、俺は魔窟と繋げた革袋へと手を突っ込み、良さげなアイテムを探す。
(最初だし、ちょっと色付けても良いかもな……大体これぐらいかな?)
丁度良い感じのアイテムを見つけ、革袋から引き摺りだす。
『さーて、一体どんなアイテムが飛び出すのでしょうか………あれは、鞘? どうやら、景品は鞘のようです!』
『またコメントしづらいアイテムが出てきたわね……。まあ、普通の鞘じゃないんでしょうけど』
言外に早く説明しろと言われた気がしたので、鞘の効果を説明する。
「この鞘は『不壊の鞘』というマジックアイテムです」
『名前に聞き覚えがあるんだけど』
「偶然」
別にアイテム名を考えるのが面倒だった訳じゃない。
「オホン。この鞘の効果ですが、この鞘には自動修復の魔法が掛かっており、鞘に収められた剣を修復するというものです。あ、サイズ調節の魔法も掛かってますので、どんな剣でもフィットします」
『あ、地味に便利なアイテム来たコレ』
『普通に欲しいですね。地味と言われましたけど、効果の次第によって白金貨いくんじゃないですか?』
「くっ付いてるなら、芯が折れてても修復しますよ」
『うわぁ、ほぼメンテナンスフリーですか……。剣士には嬉しいアイテムですけど、鍛冶屋からしたら天敵みたいなアイテムですね』
予想以上の効果に、フルールさんはドン引きしている。
『これでサルビス選手は、今後の剣の修理代がゼロになった訳ですか。鍛冶屋からしたら、優秀な顧客が一人減って涙目でしょうね。フリーサイズなら余計に』
すると、観客席の一部からブーイングが飛んできた。多分、鍛冶関係の生徒だろう。
「いやいやいや。剣を買うのに金はいるし、バランス調節とかもあるでしょうに。顧客が減ったとか言わんといて下さいよ」
とんだ言い掛かりである。まあ、ブーイングの殆どは野次で、本気で言ってる訳じゃないだろうけど。
『いやー、それでも収入が減るのは商売人としては避けたいところ。さて、そんな鍛冶屋泣かせのアイテムを貰った、サルビス選手の感想は?』
と、フルールさんはサルビス選手に振ると、
「凄く嬉しいです! 武器の修繕費って、地味に高いんで助かります!」
あら? 予想以上に喜んでくれてる。
後で聞いた話しなのだが、サルビス選手はあまり裕福じゃない家庭の出身で、所謂苦学生という奴らしい。ジャストミートなアイテム選んだな俺。
「あ、でも! ちゃんと鍛冶屋には行くんでご心配無く!」
サルビス選手がそう言うと、会場はドッと沸いた。今気付いたが、結果ノリの良い人みたいだ。
『さて! 景品が渡され、オチも付きました。それではそろそろ、次の試合へと切り替えていきましょう!』
「という訳で、くじ引きです」
ルール通り、次の代表者を決めるくじを、サルビス選手に引いて貰う。
「引きました!」
サルビス選手が引いたくじを、俺は拝借して広げる。
「どれどれ………『兄がいる人』。なる程、次の代表者の条件は、兄がいる人!」
『兄がいる人! どうやらお次は、兄がいる人だそうです!』
くじ引きの内容が発表されると、観客席の所々から歓声が上がった。多分、兄のいる奴らなのだろう。
『さあて、サルビス選手はこの条件で一体誰を選ぶのか!? 交友関係も見る事が出来るので、コレはコレで楽しみですね!』
はいそこ。性格悪い事言わない。
『………なんか、改めて言われると嫌らしいルールねコレ』
「さっきから選び難くなるセリフを吐くの、止めてくれません?」
ほら、サルビス選手もめっちゃ悩んでるから。
『キミが作ったルールでしょ。これじゃあ、選ばれた人との関係が凄く気になっちゃうじゃない』
「結局アンタもそっち側か」
確かに、憧れの人とお近づきになったりとか、色々と利用しようのあるルールだけれども。
「……あ」
そこでふと気付く。
『どうしたの?』
「いえ、なんでも。個人的な事です」
………そう言えばクラリスも、男女問わず相当な人気を誇っていたような。そして、クラリスには義理とは言え、俺という兄もいる。
(………まさかな)
対象は全校生徒の殆ど。つまり確率は何千分の一。流石にピンポイントで当たる事は無いだろう。
(いやけど、俺の体質を考えると)
何千分の一が、何分の一ぐらいには上昇しかねない。
そう考えると、凄く嫌な予感がしてきた。
「うーん………」
誰にしようかと悩んでいるサルビス選手を、俺は色んな意味で注目する事になった。
「………良し。決めました!」
(誰だ? まさかマジでクラリスとかじゃないよな!?)
「親友のヘルマン! 同じクラスの、ヘルマン・ブリッジを指名します!」
あ、全然知らない人だわ。
やっぱりアレだ。文字数4千ぐらいだと書くの楽だわ。
そして前回、ジャンル再編の煽りを受けたのか、いっときだけ日刊に載っててビビった。ブークマークが一気に100ぐらい増えてて更にビビった。
あとコレは私事ですが、ゲームの茨木童子イベント、予想以上に難易度高くてワロタ。
体力兆越えとか無理ゲーやろ。
そしてそれを削り切る修羅勢がヤバス。




