修羅場の止め方(物理)
やっと投稿出来た……。
えー、三月に入ったら更新ペースを戻したいという戯言を宣ってしまったみづどりです。
現在、リアルの様々な事情により、モチベーションの類が低下し始めています。
お陰で更新ペースが酷いぐらい落ちており、本当にゴメンナサイ。
しかし、更新ペースが遅くとも、書き続けようという所存ではあるので、エタる事は無い……筈です。いえ、多分、きっと、無いです。
なので、そこは心配しないで、気長に待って頂けたら幸いです。
誤字脱字の可能性大です。
「俺の婚約者と義妹が修羅場すぎる件について」
まさか、リアルにこの台詞を言う事になろうとは。
「取り敢えず退散」
「了解」
「異議なし」
一度状況を整理しようと考え、出来るだけ自然に一組の教室から出る。幸いにして、渦中の人物たちは気付いていない。
何人かの生徒が縋るような瞳で見てきたが、全て無視して扉を閉めた。
「さて、メーデメーデー。現在、我々はとても難しい問題に直面している」
「だな」
「激しく同意」
「この問題は、選択次第でどう転ぶか分からない。その為、俺たちに認識の齟齬があってはならない。オーケー?」
「オーケー」
「オーケー。……このノリ、何時まで続けるの?」
そろそろ止めるか。
まあ取り敢えず、状況を整理しよう。
「とは言っても、さっきチラッと見ただけだ。状況を整理するとは言ったけど、はっきり言って整理するような情報は殆ど無い」
「パッと見だと、クラリスちゃんとフィアちゃんが向かい合ってただけだしね」
翔吾はそう言って苦笑する。そうなんだよなぁ。パッと見だけなら、美少女同士が向き会ってるっていう眼福な光景なんだけど……。
「問題は、その二人から滲み出てる雰囲気だよな」
「凄くピリピリしてたよね」
「俺、久々に師天関係以外で、ガチの鳥肌たった……」
というか、鳥肌自体が久々な気がする。……冷や汗とかは何度も流してるけどさ。
師天の時はほぼ毎日鳥肌がたってたのだが、こっちに来てからはメッキリ少なくなった。この世界に、アイツら程ヤバイ奴のがいないのが原因なんだろうけど。
「師天関係で最後に鳥肌がたったのは……ああ、アレか。クイーンにウニ的な生物を口の中に放り込まれた時だ」
「……身?」
「外殻」
「……良く無事だったね」
心身共に死ぬかと思ったけどな。
「師天以外だと?」
えーと、師天以外だと………あー、アレだ。
「飯屋で相席で案内されて、その席で女二人が一人の女を取り合ってた」
「それは……」
「嫌だね……」
だろ? 何でレズカップルの修羅場を見ながら、飯を食わないといかんのかと。色々な意味で気不味かったわ。
「けどそれ以上に、修羅場に無関係の人間をぶち込んだ、店員が一番怖かった」
「……だろうね」
あの店員、頭沸いてたんじゃねえかな?
「てか、どっちにしろ原因は修羅場なのな」
「痴情のもつれは何故こうも恐ろしいんだろうな」
「恋心一つで国が滅びる事だってあるんだから、怖いのは当然だよ」
俺と雄一が頬を引き攣らせる中、翔吾だけは平然とそう言い切った。流石は恋愛大将。言う事が違う。
「さて、そのこわ〜い修羅場だけど、雲雀が原因って事でファイナルアンサー?」
そして当然の如く、恋愛大将である翔吾が、この状況を一番楽しんでいる。
「……根拠は?」
「必要?」
一応お願いします。
「フィアちゃんは雲雀の事が好き。これはOK?」
「不本意だがな」
「人の好意を不本意言うな」
いやー、だってなぁ。フィアが嫌いって訳じゃねえけど、今のところ碌な目に遭ってねえし。
俺の表情から考えている事を見抜いたのか、翔吾は大きく溜息を吐く。
「はぁ……全くもう。次、クラリスちゃんも雲雀が好き」
「待て」
「何さ?」
いや、その反応は可笑しい。何で不思議そうな顔してんだお前。
「何を当然の如く断言してんだオイ」
「違うと思うの?」
……違う……筈…。
「……取りあえず、本人が言った訳じゃない」
「そこで断言出来ない時点で、認めたのと同じだよ」
……そう言われると反論に困るな。
実際、多少なりとも好意を持たれているなとは感じている訳だし。
「……けど、例えそうだとしても、それを本人のいないところで話すのはマナー違反じゃないか?」
勝手に話して良い類の話題では無いと告げれば、翔吾は大きく溜息を吐いて頭を振った。
「あのね? そういうのは、好意に全く気付いていない、糞みたいな鈍感野郎が相手な時だけにする気遣いなの。薄々でも好意に気付いているのなら、本人以外だろうと背中を押して、とっとと返事をしてあげるのが優しさなの」
翔吾曰く、その気が無いならすっぱり断り、その気が少しでもあるなら受け入れてあげるべきなのだとか。
「そういう物かね?」
「さっきの雲雀の言葉じゃないけど、期待を持たせた挙句、裏切るのは凄く残酷なんだよ」
先程のエクレ先生の話を例に出されたら、納得するしかなかった。
「そんな訳で、僕が代わりに言っちゃいます。本人が気付いてないか、目を逸らしてるのかは別として、クラリスちゃんは雲雀が好きです」
「異議あり」
「認めません。と言うか、必死に否定しようとしている辺り、どうせ心当たりはあるんでしょう?」
そう言われて、思い当たる数々の出来事が脳裏をよぎった。なんて事は無い。
妙に俺に対しては心を開いてくれていたり、俺に関する事になると表情豊かになったり、挙句の果てには冗談とはいえキスしてこようとしたりなど、そんな事はよぎってない。
「翔吾の勘違いの可能性は」
「逆に訊くけどさ。不治の病だった両親を治し、言い寄ってくる男から守り、魔王に操られていたところを命を懸けて助けた、優しい家族のような距離の他人。そんな相手に、年頃の女の子が惚れないとでも?」
「……惚れるね」
言葉だけを聞く限り、何処の勇者だ聖人だって話である。……改めて翔吾の言葉だけを聞くと、これは本当に俺がやったのかと思う。いや、実際にやっているんだけど。
「チョロインなんて呼べないよ。これは流石に」
翔吾がやれやれと肩を竦める。これには俺も同意するしかない。
「そもそもの話、命を助けられれば誰だって好感度Maxにはなるもんな」
「余程の糞野郎じゃない限りな」
良く創作物のヒロインで、チョロインと呼ばれるキャラがいる。主人公に命を助けられ、何やかんやで恋に堕ちる。成る程、確かにチョロイと思われよう。
だが、良く考えてみて欲しい。
そのキャラは命を助けられているのである。全てを明らめた絶望の中、颯爽と主人公に助けられているのである。
惚れるだろう。いや、異性としては兎も角、颯爽と助けられたら人間的に惚れる。恩や安堵、その後他諸々の感情をひっくるめて、少なくとも好感度が馬鹿高くなるのは当然だ。
そんな状態で、適度に優しくしていけば、何度も行動を共にしていけば、恋に堕ちるのも納得。むしろ、既に恋人やら想い人がいない限り、はたまたソイツが糞野郎じゃない限り、致命的なブスじゃない限り、堕ちない方が特殊だろう。
「全部が全部そうとは言わないけど、命を救われたら、その人の事はどうしたって嫌いになれないんだよ。余程の事が無い限り、ね」
ソリが全く合わない相手だったり、普段の素行が悪い相手でも、命を救われたら、その人を嫌う事は難しい。
命の恩人というレッテルが、人の懐を広げてしまうのだ。
人の命はそれ程重く、人の想いはそれ程軽い。
「ヤンキーが捨て犬に餌やってんの見て、キュンとしちゃうのと同じって事だな」
「一気に内容がチープになったね」
「間違っては無いけどな」
さて、同意も得られたので話を戻そう。
「取り敢えず、クラリスが俺を好きと仮定して」
「往生際が悪いよ雲雀」
五月蝿い。本人の口から聞かない限り俺は足掻き続ける。
「兎も角だ。そう仮定すると、あの場面は修羅場という事になる」
「最初から分かってたけどね」
確認の意味で言ってんだから良いんだよ。
「そして、その修羅場の中心は恐らく俺だ」
俺の事が好きなフィアと、好きな可能性が高いクラリス。俺の暫定的な婚約者であるフィアと、血の繋がりのない義妹。
お互いが俺に好意を抱いており、立場は違えどお互いに俺とは家族と呼べるような立ち位置にいる。
俺が渦中の中心なのは、誰の目から見ても明らかだ。
「そんな訳で、俺は帰る」
「待て」
「逃げんな」
戦略的撤退を行おうとしたら、二人に襟を掴まれた。
「離せ! 俺は見える地雷を自分から踏みにいく趣味は無い!」
「お前、そんな事言いながら、ゴルゴ先生の時は踏みに行ったじゃねーか」
「何時ぞやの芸人根性はどうした」
ソレはソレ。コレはコレだ!
「女の喧嘩に男が出ると碌な事になんねえんだよ! それが原因の人物なら尚更だ!」
「やけに実感篭ってんな」
経験則だよ。
「……鬼梗、カガチ、キキで嫌という程経験してんだ」
「あー、あの種族詐欺の鬼娘たちか」
「皆、雲雀の事大好きだもんね」
魔窟ゴブリンと面識のある二人は、俺の言葉に納得の表情を浮かべた。種族詐欺については俺も激しく同意する。
「だから逃げる!」
「「逃がすか」」
またもや襟首を掴まれた。チクセウ。逃げられない。
「なら、どうしろってんだ!?」
「向き合え」
「それが出来れば苦労しない!」
出来るなら本気の鳥肌なんて立たねえんだよ!
「まあまあ。そこはほら、雲雀の頑張りで」
そう言って、翔吾と雄一は俺を引き摺ったまま歩き始める。
「無理! 気合いと努力で無理を通すのが魔導師だけど、本当に無理な事は無理だから無理だ」
「どっかで聞いた循環論法だな」
そりゃ、俺のバイブルみたいな漫画からの引用だからな。
「ていうかマジで勘弁してくれ! 女性問題なんて関わりたくないんだけど!?」
「中心人物が何を言うか」
俺の叫びを無情に切り捨て、二人はどんどん進んで行く。
「でもほら、まだ方針とかも決めてないじゃん!」
さっきまでの話し合いは、どうするかを決める為の物だった筈だ。
「そうだね。だから簡潔に僕の意見を言わせて貰うけど、アレをどうにか出来るのは雲雀しかいない。そしてああ言う場合は、その場の言葉じゃないと相手は納得しない」
「いやけど、せめて大筋ぐらいは考えさせてくれよ!」
「向こうの会話を聞かねえと、大筋も何も無いだろうが。それに、例え大筋を考えたとして、話はお前の望む通りの展開になんのか?」
「……なんねえわ多分」
僅かばかりの黙考の後、即座にその可能性を否定した。悲しいくらいに俺の期待は裏切られるだろう。これもまた経験則である。
「じゃあ潔く諦めろ。昼休みだって無限じゃねえんだ」
「うぅ……」
時間の事を盾にされると、フィアとも約束をした手前強く出れない。逃げだそうとした奴のセリフじゃないんだけどさ。
俺が色々と諦めの境地に達した中、二人は俺の事を引き摺ったまま再び一組へと入った。
一組は、相変わらずピリピリとした空気が充満している。
「おーい。雲雀の事連れて来たぞ」
そんな空気の中、雄一は元凶たる少女たちへと声を掛ける。
声には緊張感が無い。気負いも無い。極々普通に、雄一は声を発した。
何故なら、
「お兄様!」
「ヒバリ様!」
自分たちが、当事者になる事は無いと確信しているからである。
傍観者、いや観客に回る二人には軽い殺意が湧くが、駆け寄ってくる義妹と婚約者を無視する訳にはいかない。
取り敢えず、第一にすべき事は
「せい」
「はうっ!?」
「きゃっ!?」
駆け寄ってくる二人の額を指で弾く事だろう。
「ひ、ヒバリ様!? 一体何故叩かれたのですか!?」
「い、痛いですお兄様」
涙目で抗議してくる二人に、俺は溜息を吐く。
「文句は聞きません。自業自得です」
「自業自得、ですか?」
自業自得と聞いて、不思議そうな顔をする二人。気付いてなかったんかい。
「何があったかは知りませんけど、教室の空気を悪くしてるのに気付きなさい。皆さん凄く困ってましたよ」
「何故にオカン口調」
「気分です」
それは兎も角として、クラリスとフィアは指摘されて初めて気付いたといった顔になったな。
そして、慌てて周囲に頭を下げるまでがワンセット。二人の育ちの良さが伺えるな。
「ご、ごめんなさい皆さん。こんな当たり前の事すら気付かないなんて……」
「不快な思いをさせてしまい、申し訳ありませんでした」
「い、いえ! クラリス様が頭を下げるような事では!」
「フィリア様も!」
ぺこりと頭を下げる二人に、一組の面々は面白いぐらいに狼狽した。
この様子だと、クラリスは元々だが、フィアも十分な人気を獲得したようだ。早くね?
「いやー、本当に悪いね。内の義妹と婚約者(仮)がアホな事やらかしたみたいで。俺からも良く聞かせとくから」
二人に続いて、俺も頭を下げる。別に義妹や婚約者と言った事には他意は無い。一組の連中相手に牽制している訳でも無い。
「だからニヨニヨするな翔吾」
「え〜」
腹立つ笑顔を浮かべる翔吾は無視だ無視。
「そうです! 婚約者ってどういう事ですかお兄様!」
「ヒバリ様! 義妹さんにちゃんと説明してあげてください!」
またもやヒートアップしだした二人は無視しない。取り敢えず、今度は拳骨を降らせた。
「言った側から騒がない。はしたないよ」
「人の事言えんだろ」
いちいちツッコミを入れないで良いんだよ。
「……痛いです」
「……あの、私の扱いがお爺様と同じになってきてませんか?」
「言って聞かない子は殴ってでも言い聞かせるの」
静かに抗議をしてくる二人だったが、面倒なのでバッサリと切り捨てる。
「だからお前が言える立場じゃない」
雄一のツッコミは無視した。
「ほら、仲良く話をするのは良いけど、残念ながら昼休みは有限だ。とっとと食堂に行くよ」
何か言いたそうな二人だったが、移動する事に否は無いらしく、コクリと静かに頷いた。
「んじゃ、お騒がせしました」
状況について行けず置いてけぼりとなっている一組の面々に、俺たちは軽く会釈してその場を後にした。
そして食堂。
「さて、それで何があったの?」
昼飯として注文したサムゲタンを突きながら、先程の睨み合いについて訊いてみた。……それにしても、何故サムゲタンがあるのだろう? そろそろ過去の異世界人たちに文句を言った方が良い気がする。
疑問と文句はひとまず置いておき、二人に話すように視線で促す。いや、原因や理由は察しが付いてんだけど。
色々と口籠った二人だったが、やがて諦めた様子で話し始めた。
「……その…何から話せば良いのでしょう」
「最初から話そうか」
「…そうなんですけど……えっと、朝にヒバリ様に言われた通り、あの後、私はクラリスさんに話し掛けたんです」
「ふむ」
「そしたら、あんな事に……」
「舐めんな」
それで納得すると思ってんのか。
「ふえ?」
「いや、ふえ? じゃねえよ。端折り過ぎだよ説明になってねえじゃねえか」
何でそんな不思議そうな顔してんだよ。当然の疑問だよ。
フィアは本気で分かってないようようなので、仕方なくクラリスに説明を求める。
「クラリス、説明して。このアホの娘を相手にするのは時間の無駄だわ」
「アホの娘って私の事ですか!?」
「他に誰がいるんだド天然娘」
顔を合わせる度に何かしらの片鱗を見せていたが、今この場で確信した。フィアはアホの娘だ。
「うぅ…。アホだなんて酷いですよヒバリ様……」
涙目で抗議をしてくるフィアだが、俺は騙されない。
「……本当は嬉しいだろ?」
「………」
僅かだがフィアの口角は上がっているし、頬も少しだけ赤い。それにフィアの性格上、ショックを受けたのならもっと傷付いた顔になる。
つまり、本当の感情が全然隠せてない。
「……被虐主義者」
「違いますよ!? ヒバリ様とお話し出来るのが嬉しいだけで、別にそんな倒錯的な趣味は無いですから!」
「墓穴掘ったな」
「はうっ!?」
フィアは口を滑らした事に気付き、顔を真っ赤にして机に突っ伏した。
「何と言うか、素直に揶揄い甲斐のある性格だよな」
爺さんやクラスの奴らと違って反応が真っ直ぐと言うか。
「……どうせ私は単純です」
「馬鹿な子ほど可愛いと言うよな」
「それは親が子供に言う台詞です!」
とは言いながら、顔はとても緩んでいる。可愛いと言われたのが余程嬉しかったらしい。
「……むぅ」
「おーい、ヒバリ。目の前でイチャついてるから、クラリスちゃんがムクれてる」
「はう!?」
翔吾によっていきなり話題に挙げられたクラリスが、驚愕から可愛いらしい悲鳴を上げた。
まあ、それよりも
「別にイチャついてないんだが」
「何? 鈍感気取り?」
「いや、ただ話してただけでイチャつくも何も無いだろ。ガキじゃないんだから」
色々な意味で大人な俺の基準で言わせて貰えば、楽しげに話しているのはイチャつく範疇に入らない。
「……どうだか。兎も角、そんなんしゃクラリスちゃんが拗ねるよ?」
「そ、そんな事無いですショウゴ様!」
翔吾に言われてクラリスを見ると、クラリスは慌てたように目を逸らした。
ふむ。これはヤキモチという事で良いのだろうか?
「897897」
「素直に言葉で言え」
「797797」
「それ違う」
なら次は
「時報にでもする気か?」
……先手を打たれたので、話しを戻しましょう。
「何で妬いたの?」
「そ、そんな事あーー」
「ーーるよね?」
否定しようとするクラリスに笑顔で言葉を被せ、続きの言葉を封殺する。
誤魔化せないと悟ったクラリスは、恥ずかしそうな表情で理由を喋る。
「……だって、お兄様から訊いておいて、私の話を全く聞こうとしないんですもの…」
「ゴメンナサイ」
全体的に俺が悪かったわ。
どうやら、俺に相手にされなくて拗ねていたようだ。訊いといて放置されたら、そりゃ機嫌も悪くなるよな。それで拗ねるとか、キミは何歳だよって思うけど。
まあ、子供っぽいという自覚があるからこそ、クラリスも羞恥の表情を浮かべているのだろうが。
「ゴメンなクラリス。つい他の話に夢中になっちゃったんだ。ちゃんと聞くから、許してくれ」
とは言え、それでも原因は完全に俺にあるので、素直に頭を下げて謝っておく。
「……ズルいですお兄様。そんな風に謝られたら、許すしか選択肢は無いじゃないですか」
そう言ったクラリスの表情は、とても困ったような、されど嬉しそうな微笑みだった。
「……むぅ」
「おーい、ヒバリ。今度はフィアちゃんがムクれてる」
「放っておけ」
「むうー」
俺の言葉に、余計にフィアは頬を膨らませるが、それでもスルーだ。これ以上構ってたら話が進まないし、無限ループに陥る可能性もある。
だから今回は放置一択。
「そんで、さっきは何があってああなってた訳?」
やっと本題と言うか、会話の彼方に落としてきた話題を持ってこれた。
俺がその事に密かに安堵している中、クラリスは一連の出来事を話し始めた。
恋愛描写の壁にぶち当たっとるみづどりです。
どうやったら、ヒロインたちの魅力を上手く発揮してヒバリと絡ませられるでしょうか?
それが本当に謎です。
尚、ヒバリが『ヒロインは自分の事が好きなのか?』みたいな感じでドギマギするシーンは、まず無いでしょう。
三人が独自の価値観を持ってる変人な所為で、そんな未来が確約されています。
……そのお陰で、恋愛描写が上手く表現出来ないんだから、自分で自分の首を絞めてんですよねー。ははっ、ワロス。




