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24.図書館デート


「――今日は無事に遅刻しなくてすんだね」

「そうですね。ありがとうございました」

「ああ、ではまた放課後に迎えにくるね」

「わざわざお迎えいただくのは申し訳ありませんので、お互い終業後に図書館へ向かえばよいのではないでしょうか?」

「少しでも一緒にいたいんだよ。って、昨日も言ったよね?」

「……そうでしたね」


 はあ。わざわざ教室前まで一緒にやって来て、そんなことを言うからまた黄色い悲鳴が上がっているじゃない。

 昨日の今日だから、先輩たちに絡まれることもないと思うのに、拒否することは許さないって顔で微笑まれたら従うしかなかったんだよね。

 放課後の図書館での勉強も(決してデートではない)、現地集合現地解散したいくらいだけど、帰りはどうしても一緒になるならせめて現地集合させてほしかった。

 だけどまあ、昼休みまで一緒にとか言い出さないからよしとするか。

 放課後までは友達と過ごせるし、その貴重な時間を楽しむしかない。


 さあ、真面目に授業を受けるぞ、と決意したものの、つい考えてしまうのはダミアンのこと。

 だけじゃないよ。

 正確にはこの世界のことと、アクセル様とダミアンが言っていた〝予言〟について。

 ヒロインが登場することが、すでに予言されているみたいだったけど、それっていつの話だろう。

 その〝予言〟にはどんなものだったんだろう。


 アントニーについて調べれば、ヒロインのこともわかるかもしれないけれど、今は下手に動かないほうがいい。

 ダミアンにはほとんどお見通しなので、無駄に動いてヒロインのことを悟られても困る。

 それに、来週からは生徒会活動が本格始動するから、アントニーと話す機会はいつでもあるはず。

 それからでもヒロインを捜すのは遅くないと思うし、その前に〝予言〟について知っていたほうがいいと思う。


 ということは、せっかく今日ダミアンと過ごすことができるんだから、さり気に探ってみるか。

 いや、たぶんさり気なくというのは無理だな。

 覚悟を決めて帰りの馬車でずばり聞いたほうが早そう。

 だって、〝予言〟について話していたのを聞いているって、ダミアンはすでに知っているわけだし。

 いっそのこと、こちらの情報をわずかばかり与えて、ギブ&テイクでもいいかも。


 そう考えると、放課後が待ち遠しくなった。

 残念ながら図書館では〝予言〟の話はできないだろうから、真面目に勉強するけど。

 この授業が終わったら、ダミアンが迎えにくる。

 本日最後の授業はアドソン先生の魔法学で、板書を書き写すために顔を上げたら先生と目が合ってしまった。

 何だか気まずくて、すぐに目を逸らして、何でもありませんって感じでノートに視線を移す。

 攻略対象じゃないはずなのに、アドソン先生と目が合っただけでこんなにドキドキするなんて、イケメン怖い。

 だって、声まで耳に心地よくて素敵なんだから、憧れている生徒も多い。


 そういえば、先生に呼び出されたいからって、わざと課題を連続で忘れる命知らずな女子生徒もいたもんね。

 命知らずっていうのは大げさだけど、単位がもらえないと進級できなかったり退学を余儀なくされたりするから。


 そして終業の鐘が鳴ると、程なくしてダミアンが迎えにやってきた。

 無駄な抵抗をやめて廊下で待っていた私を見て、ダミアンが満足げに微笑む。

 何だか悔しいけれど、素直にエスコートされて図書館に向かっている途中で視線を感じて振り返ったら、アドソン先生と目が合った。

 まあ、生徒たちからかなり注目を浴びているから、先生も何だろうって気になったんだろうけど、昨日忠告されたばかりだからちょっと気まずい。


「アドソン先生が気になる?」

「昨日、忠告されたばかりですから。でも評価に響くことはないですよね?」

「さすがにそれはないはずだけどね。まあ、ジャンじゃないけど、成績でぶん殴ればいいんじゃないかな」

「それができれば苦労はしないんですけどね……」


 レティシアの成績は中の上。得意科目でも上の下といったところ。

 万年トップのダミアンとは頭の出来が違うのですよ。残念な意味で。

 もちろんアクセル様も成績はかなり優秀で、エルマンお兄様ともダミアンとも競い合っている感じ。

 ただ総合的にダミアンが常にトップになってしまうんだよね。悔しい。


「学園の勉強なんて、ちょっとしたコツだけどね」

「できる人はそう言うんですよね」

「じゃあ、これからそのコツを教えてあげるよ。そうすれば、成績も上がって先生に文句も言われなくなる」

「先生は私のためを思って忠告してくださっただけで、別に文句を言われたわけではないですから」

「そうかな?」

「そうですよ。それに、急に成績がよくなるのは困ります」

「どうして?」

「今の立場的に不正を疑われてしまいます。だからといって、成績が下がっても何か言われるでしょうから、現状維持が一番です」

「確かにね。まあ、先ほども言ったように学園の勉強はコツだから、成績の良さと頭の良さは別だね」

「……そうですね」


 前世でもそれはよく言われていたなあ。

 残念ながら、今の私も頭が良いというわけではないんだよね。

 レティシア自身は頭が良かったんじゃないかって思うけど、私の場合は前世知識の底上げで度胸があるだけ。

 その度胸もアクセル様のためであって、それ以外では単なるモブキャラ力しかない。

 それでも、できるだけのことはするつもりだから、まずは勉強。


「さて、では始めましょうか」

「やる気だね」

「当然です」


 二日分の遅れを取り戻さないと、もうすでに影響が出て今日の授業でわからないところがあったんだから。

 使えるものは魔王でも使えってことで、ダミアンにあれこれ質問する。

 驚いたことに、ダミアンは意地悪することなく、しかも先生より説明がわかりやすくて、するする理解することができた。


「ダミアン様、教師に向いているんじゃないですか?」

「それはありがたい言葉だけれど、残念ながら教師にはなれそうにないな」

「確かに……」


 王弟殿下であり、魔術師として近代稀なる才能を持ったダミアンが教師になるわけ――希望しても叶うわけがなかったね。

 何よりダミアンルート以外では、魔王に……じゃなかった、ラスボスになる可能性大なわけで。

 とにかく私は私なりに、アクセル様のご長寿とお心の安寧のために、生存ルート確保かつダミアンラスボス化阻止を頑張ります!




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