第97話 告白
試験艦ペガッスがコロニータロスチャーリーの宇宙港に入港し、私のテストパイロットとしての役割は終わった。私は技研の佐伯少佐、ベルナルド大尉、お世話になった整備員の皆さん、そしてXFA-v3に別れを告げて空母太鳳に戻った。
そして、私はこれからレッドライオン小隊のみんなに勇気を振り絞って自分の気持ちを告白しなければならないのだ。あぁ、何か胃が痛い。
この頃には中破していた旗艦日進と駆逐艦アッシュも修理が終わっていて、第309護衛艦隊は他の複数の護衛艦隊と連合して地球圏へ帰る事となっていた。ひと呼んで連合護衛艦隊、なんともカッコいい響きだ。
そうした訳で、久々に戻った空母の太鳳の艦内は出航の準備に追われていた。太鳳の艦体は何ら被害を受けていなかったので艦内では専ら物資の搬入などで忙しくしている様子。また、戦力が激減した航空隊は木星圏でのパイロット補充は叶わなかったけど、ウチの艦隊司令部が木星駐留軍司令部と交渉して、どうにか木星駐留艦隊から六式艦戦3機の譲渡がなされた。先の戦闘で機体を失った搭乗員がその機体に乗る事になり、私も帰艦早々にあてがわれた機体整備に駆り出されている。
新たに自分の乗機になった六式艦戦。そのコックピット内で黙々と点検作業を進める。AIは再びXFA-v3からビクトルが戻されたので心配は無い。
操縦席に深々と腰を降ろすと、操縦桿を握る。すると自分の感覚が機体全体に行き渡る。エンジンも通信・索敵などの各システムも調子良く、この子がミネルバ基地で大切に保管されていた事が窺えた。これで地球圏への復路もレッドライオン小隊の一人として戦える。そう思うと嬉しくもあり、と同時に、もしかしたらこれが私がレッドライオン小隊として戦う最後なのかなと寂しくもあった。
機体の点検作業が終わり、私は機体を整備小隊の熊谷軍曹達に任せ、夕食のため食堂へと向かった。熊さん。ごめんなさい。
席には既にエルザ隊長、ラビィ、パティが席についている。
「サク、こっちこっち」
食堂に入った私を見つけてパティが手を振る。私も「おーい」と手を振り返し、トレイを受け取って皆のいる席へと急いだ。因みに、私が選んだ夕食は若鶏のフリカッセ、チシャのサラダ、パン、デザートにプリンとコーヒー。
試験艦ペガッスから空母太鳳に戻って漸く4人揃う事が出来た。夕食は和気藹々とお喋りしながら進み、皆デザートに手が伸びている。今がみんなに話を切り出す絶好のチャンスだ。今だ、勇気を出せ、自分!
「あ、あの!」
よし、良く言った。みんなは"なんだ?"という表情で私を見る。
「技研の佐伯少佐が言っていたのだけど、XFA-v3が戦闘攻撃機として正式に採用される事になってね、」
みんなは「へぇ、そうなんだ」みたいな事をそれぞれ口にしながらコーヒーを啜ったりしている。特に関心は無いみたい。
「それでね、その正式採用されたXFA-v3で新部隊が編成されるそうなんだけど、佐伯少佐がその部隊に私を推薦してくれたみたいで、」
その先を言うのが恐い。みんな口を挟まず、何を言うのかと私を見ている。
「もし、その新部隊への転属の話が来たら、わ、私、受けようと思ってるんだ」
誰も何も言わないので、私は勢いのまま更に話を続ける。
「私の父は駆逐艦の艦長だったのだけど、アムロイの地球圏侵攻の際のコロニー防衛戦で敵の戦艦に体当たりして戦死したんだ。私と妹は父の敵を討とうと連邦軍に入って。だから、より強力な機体で、より多くの敵を討ちたいって、そう思ってるの。こんな事言って、実はそんな転属話なんて有りませんでした、なんてなったら赤っ恥もいいとこだけど、もし本当だったら受けようと思ってるの。ごめんなさい」
私は席に座ったままみんなに頭を下げた。そして、一瞬の沈黙の後、エルザ隊長が口を開いた。
「なんだ、何かと思えばその話か。それなら佐伯少佐から私にもあったよ」
え?
「因みに、私にもあったよ」
「おなじく、私にも」
え?えぇっ?!
「転属になったらひどく寂しくなるけど、サクの人生なんだから好きにすればいいのさ。お父上の敵討ちをしなければならないのだろう?」
「そうよ。私達に気兼ねなんてする必要無いのよ?」
「そうだよ。悩んでないでさっさと打ち明けてくれれば良かったのに」
そうた、すっかり忘れてた。レッドライオン小隊は私以外は欧米の人達で、エルザ隊長とラビィは英国人で、パティは日系人だけど生まれも育ちも米国の米国人だって事を。どちらも個人主義だって事を。
「有難う御座います?それで新部隊の話はどうしたのですか?」
私は恐る恐るエルザ隊長に尋ねてみた。
「ああ、私は断ったよ。魅力的ではあったけど、私はここの航空隊を建て直さなければならないからね」
「私も断っちゃった。私はエルザ隊長をサポートしなきゃいけないから」
エルザ隊長とラビィは転属話を断っている。では、パティはどうなのだろう?私がそう思ってパティを見ると、彼女はニコッと私に微笑んだ。
「私は引き受けますって答えたよ。きっとサクが受けると思ってね」
パティはどうだ!と言わんばかりのドヤ顔だ。
「有難うパティ。でも、何で?」
私がそう尋ねると、パティはそんなの決まってるじゃないといった感じで言う。
「だって、私達ペアでしょう?」
「うん」
やっぱり、持つべきはペア、戦友。この時、私はもうパティと結婚しちゃおうかなと半ば本気で思った。
だけど、ここに気になる事が2つ存在している。
「私って悩んでる風でした?」
「「「そりゃあもう!」」」
空母太鳳に戻ってからなかなか小隊の4人で揃う機会が無く、みんなにいつ言おうかてチラ見したり、ウジウジしたりと態度で丸分かりだったみたいだ。
そして、もう一つは佐伯少佐だ。何が「君程XFA-v3の事を知り、上手く操縦出来るパイロットはいないだろうからね」だ!私にそんな事言っておいてみんなに声かけまくってたのか、あの男は!ぐぬぬ、許せん!
「あんの野郎。ナメやがって」
「「「怖いよ、サク…」」」
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それでは次話「昇任、そして異動」をお楽しみに。




