第94話 テストパイロット①
「テックセッター1からレッドライオン3」
「こちらレッドライオン3、テックセッター1どうぞ」
「現宙域での木星引力のエンジン系への負荷はどうか?」
「問題無しです。どうぞ」
ここは木星圏は衛星イオ付近の宙域。私は現在、XFA-V3を操縦してこの宙域でテスト飛行の真っ最中。
「木星引力による機体への干渉はどうか?」
「現宙域においてはほぼ影響無し」
「了解。これで飛行テストは終わりだ。引き揚げてくれ」
「了解。只今から帰艦します」
因みにテックセッター1というコードネームは技研の佐伯少佐だ。私は佐伯少佐から帰艦指示が出たため、技研のミネルヴァ研究開発センターの保有する試験艦ペガッスに向けて進路を取り、エンジン出力を上げて加速した。
木星圏のミネルヴァ宙域には複数の宇宙基地と地球連邦軍が所有しているスペースコロニー3基からなる軍事コロニー群がある。その名もタロスコロニー群。コロニーにはそれぞれアルファ、ブラボー、チャーリーと呼ばれていて、例えば国防技術研究所が占有するチャーリーはコロニータロスチャーリーと呼称されている。
私は現在、そのコロニータロスチャーリーにある技研のミネルヴァ研究開発センターへ、XFA-V3のテストパイロットとして第309護衛艦隊からレンタルされていたりする。
それは何故かと言えば、第309護衛艦隊は旗艦日進と駆逐艦アッシュがドック入りしているため開店休業状態。私達の母艦である空母太鳳は無事だけど、私の乗機は先の戦闘で損傷して失われてしまっている。
私はこの機会に溜まっていた休暇を消化してしまおうかと思ったのだけど、23世紀になっても抜けない日本人気質が自分だけ休んでいいのかと私に問いかけて休暇取得を躊躇わせ続けていた。
そうこうしている間に技研の佐伯少佐から第309護衛艦隊の司令部に対し、私をXFA-V3のテストパイロットとして艦隊出航までの間だけ借り受けたいとの依頼がなされた。それに対して艦隊司令部は、パイロットを遊ばせていては勿体無いからと許可を出し、現在の状況となっている訳であった。
私とXFA-V3は野村大尉の加護のお陰もあり、心の通じ合った戦友だ。そのため私達は頗る相性が良く、また、機体のAIはビクトルであるので、私にとっては実にやり易い仕事と言えた。また、広大な木星圏のあちこちに行けるので、太鳳でやる事無く腐っているよりも余程魅力的に思えた。
私がこれから帰艦する試験艦ペガッスは、輸送艦を改造した艦で、ミサイルの試験に使用するミサイル発射管以外はほぼ武装は無い。そのかわりと言っては何だけど、元が輸送艦だけにペイロードは広く、艦内では様々な新兵器の試験開発が行われている。
私がペガッスに帰艦すると、格納庫では待っていましたとばかりに技研のメカニックマン達がXFA-V3の機体に群がって来た。みんな口々に私に「お疲れさん」などと言って労ってくれつつも、早く飛行データの解析や機体のチェックをしたいので、私にコックピットから早く出て行って欲しそうにしている。勿論、誰よりも負担が掛かり、危険があるテストパイロットに早く出て行けとは宇宙艦隊司令長官だって言えないのだ。
でも、コロニー育ちとはいえ私も日本人。そこは空気を読んで「じゃあ、後はお願いしま〜す」と早々にコックピットを後にした。
私が一つため息を吐き、格納庫の隅にある休憩室へ歩き出すと、佐伯少佐とベルナルド大尉が「やあ、お疲れ様」と言って近付いて来る。試験飛行から戻ると機体はメカニックマンが預かり、私から飛行中の感想を聞き出そうと佐伯少佐とベルナルド大尉が待ち構えているのが常だ。
休憩室では、ベルナルド大尉がパイナップル味の栄養ドリンクを渡してくれた。それをお礼を言って受け取り、行儀悪くチュウチュウと吸いながら二人からの質問に答える。本来なら階級上位者に対してこのような態度は決して褒められた行為では無い。だけど、ここは現場で、私は戦場帰りのトリプルエースパイロットであり、テストパイロット。寧ろ実戦経験の無い階級上位者が逆に私に恐縮する程だ。だからこれくらいのラフさも容認されてしまったりもする。まあ、私も随分と太々しくなったものだと思う。
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それでは、次話「テストパイロット②」にご期待ください。
通りすがりの仮面ライダーだ、憶えておけ!




