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第93話 木星圏ってどんなとこ?

私達が護衛してきた輸送船団は木星駐留艦隊のエスコートで木星駐留軍の管制下に入り、木星圏に各地へと散って行った。


第309護衛艦隊も先の戦闘で中破した旗艦の巡洋艦日進と駆逐艦アッシュが修理のためドッグ入りとなった。空母太鳳は艦体に損傷こそ受けてはいないけど、その航空戦力は激減していて、航空戦力としては全滅と言ってよかった。健在であるのは駆逐艦ブロンコビリーのみ。そのため、月にある護衛艦隊司令部は日進とアッシュの修理が完了しても第309護衛艦隊の護衛任務の継続は困難と判断したようだった。


また、護衛艦隊司令部は第309護衛艦隊がアムロイ軍から受けた攻撃及びここ最近の輸送船団の被害状況を分析し、アムロイ軍が通商破壊に投入する戦力を増強させ、戦術を変化させていると判断した。そのため、護衛艦隊の再編と戦術の変更が進められる事となり、我が第309護衛艦隊も地球圏への復路は他の護衛艦隊との合同任務となるそう。


そして、木星圏。そこは地球人類社会の最前線にしてフロンティア、周辺のトロヤ群などの小惑星帯も含めた最大の資源地帯でもある。そのため地球連邦は、その成立当初から木星を最重要視し、木星圏の開発を最重要課題として莫大な予算を注ぎ込んで開発を進めてきている。


その重要視具合は火星なんかそっちのけで、火星の開発なんて最低限のテラフォーミングくらい。従って植民もあまり進んでいない。なので火星に駐留する兵力も少なくて、アムロイ軍の襲撃に際しては火星駐留艦隊は民間人脱出の時間を稼ぐため全滅するまで戦った。


木星圏の発展は地球連邦政府の政策により著しく、その資源と特殊な環境を背景として先端技術力、工業力は地球連邦内において月に次ぐものとなっている。よく冗談で「地球が占領されても木星があれば大丈夫だよね」なんて言われたりもするけど、私にはそれが強ち冗談ではなく、真実が含まれているんじゃないかと思えてしまうのだ。


そして地球人類にとって不幸中の幸いだったのは、何と言ってもアムロイが現れたのが木星ではなく、土星だったという事。もしアムロイが木星に現れたとしたら、そして地球人類が木星を失う事になったとしたら。地球連邦軍はこの戦争における継戦能力を失い、ジリジリと戦力を削られ、アステロイドベルトも失陥して敗戦を迎える未来しか無かっただろう。


まぁ、欲を言えば、アムロイが土星よりももっと遠い海王星だとか、更に言えばカイパーベルトとかに現れてくれれば尚良かったのだけど。もしそうだったなら、アムロイも侵略戦争なんて手段は取らなかったんじゃないかと思う。誰しも手の届く所に求める物が有り、それを手にする手段が有るのならば、危険が有ったとしても誘惑に駆られてしまうだろうから。



木星圏における政治、経済、軍事の中心は木星の衛星軌道上ミネルヴァ宙域にあるミネルヴァコロニー群だ。ここは100基に及ぶスペースコロニーがあり、3千万人以上の人々が暮らしている。


その他にも多数の工場、資源集積基地、研究施設がある産業コロニーなどが存在し、それらを宇宙要塞や多数の軍事基地、駐留艦隊が守っている。また、木星圏には限定的ではあるけど、地球圏と同じく惑星防衛システムが展開し、鉄壁の防衛陣を敷いているのだ。


木星圏で暮らす人々は人類社会、人類領域の最前線で開発を担い、地球人類社会を支えているという矜持があるため、とてもプライドが高いと聞く。そのため人によっては非常に面倒臭い相手であるとも。


地球圏ではそうした木星圏の人々を揶揄して「木星トカゲ」と陰で呼んだりする。それはかつて木星行き、木星帰りがエリートと呼ばれた反動、地球圏との距離感から抱かせる田舎者とか異邦人といった印象から来た物だと言う。何故「トカゲ」なのかは知らない。何か元ネタでもあるのだろうか。


当然、それらは木星圏の人々からの反発も招く。そうした互いの感情の行き違いが蓄積し、将来木星圏が地球圏に反旗を翻して独立が図られるのではないか?と見る向きもあるそうだ。だから、アムロイという地球人類共通の敵の出現は、そうした問題が棚上げ若しくは先送り、或いはこの問題自体を雲散霧消させる事が出来るため、木星圏の独立を望まない人々にとってはある意味幸いだったのかもしれない。


この戦争がどうなるのか?私にはそれを見通す事は出来ないけど、もし地球連邦の勝利で終わるならば、若しくは有利な条件で講和出来たならば、地球連邦は再び土星圏へと進出するだろう。そうなれば別の宇宙空間へと繋がるワームホールが有る土星圏が地球人類領域の最前線となる事は間違い。


では、そうなった場合。地球連邦はワームホールをどのように扱うのか?別の宇宙空間というフロンティアへと続く中継地としてその先へと進むのか。それとも現にアムロイという侵略者が来たように第2、第3の侵略者に備えてガチガチな重武装でワームホールに蓋をして太陽系内に引き籠るのか。


何れを選択しても、より遠くへと広がる地球人類社会。その政治や経済の中心が地球圏であり続ける事は将来的にいささか距離的な問題で不都合が多くなるだろう。なので、木星圏はそう遠くない未来には地球人類領域の最前線から地球人類領域の中心に押し上げられよう。そうなれば、そもそも木星圏の独立なんて話題にも上らなくなるだろうね。


でも、じゃあ木星圏に住みたい?と問われれば、申し訳ないけど私は遠慮したい。私も地球圏とはいえスペースコロニー育ち。だから木星圏で住むのならきっとスペースコロニーになるだろうけど、だったらあまり変わらないんじゃない?とか言われそう。それでも地球や太陽との距離感(実際の距離でも精神的な距離でも)が全く違う。だから出来れば私は地球に近い所です人生を全うしたい。きっと住めば都なんだろうけど。木星の皆さん、ごめんなさい。



いつも『朝倉家の戦争』をお読み頂きまして、誠に有難う御座います。宜しければブクマ登録、評価、感想など宜しくお願いします。


それでは次話「アステロイドベルト」に、チェンジゲッタースイッチオン!

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