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第92話 抱擁

アムロイ軍の大型空母を撃沈した後、私は敵の追撃から逃れて再び輸送船団の直掩任務に就いた。敵艦隊の脅威は依然として残っている。例え艦載機群を一掃し、大型空母を沈めても残存艦隊だけでも現在の第309護衛艦隊よりも強力だ。もし、アムロイ艦隊がこのまま攻勢に出たならば間違いなくこちらは全滅するだろう。


しかし、ここで遂に木星駐留艦隊が来援したため、敵の残存艦隊は撤退して行った。それによって漸く空母太鳳の航空隊も帰艦する事が出来た。その際、私のXFA-V3が殿を務めたのは言うまでもない。


航空隊はその多くが撃墜されて20機までに減ってしまっていた。月のモスクワ海基地を出航した時は2個戦闘航空大隊、計72機だったのに皆戦死してしまった。私達レッドライオン小隊は幸いにも一人も欠ける事無く健在であったけれども、それは稀なケースで、文字通り全滅した小隊や中隊もあったのだ。


また、護衛艦隊でも駆逐艦リバティ、グローズヌイが撃沈され、旗艦の巡洋艦日進、駆逐艦アッシュが対艦ミサイルによる攻撃を受けて中破。第309護衛艦隊は正に満身創痍の状態だ。そして、今回は輸送船団にからも輸送船3隻が撃沈される被害が出てしまった。不幸中の幸いは撃沈された輸送船が無人船だった事だろうか?



私は実戦部隊である第309護衛艦隊に配属されてまだ一年に満たないし、実戦経験もそう多い訳でもない。だけど、それまでの戦闘と今回の戦闘ではその様相もガラッと変わっていた事は理解出来た。


まあ、詳しい分析は専門家に任せるとして、ざっとした印象として、前回までは現有戦力を遣り繰りして戦っていたが、今回は豊富な戦力で自軍の損害を恐れず、これでもかこれでもかと機械的に攻めて来た感じだった。


これをエリカ風に戦史に例えるならば、前者はチャンスとなれば俄然攻め、ピンチとなればあっさり引く戦国時代の島津家。後者は後方に督戦隊を並べて撤退を許さず、部隊をひたすら前進させたソビエトの赤軍、もしくは人民解放軍といったところだろうか?


しかし、だとすると、現在アムロイ軍の中では恐怖政治が行われている、又は何らかの理由で損害を無視出来る程の戦力が調達可能となったとか、そんな推測が成り立つと思うのだけど、どうなんだろうか?


まあ、それはそれとして。私が殿で帰艦すると、私をXFA-V3で送り出した技研の二人は、私の生還と予想を上回る大戦果に大喜びだった。佐伯少佐は「圧倒的じゃないか我XFA-V3は」とか「XFA-V3量産の暁にはアムロイなど」等一人笑みを浮かべてつぶやき、ちょっと怖かった。


更にはベルナルド大尉からは帰艦早々に質問攻めに遭って閉口した。開発者としてパイロットから情報を聴取したいという気持ちは理解出来るけど、何時間もの死闘を経て、尚且つ多くの戦友を失った直後なので、そこらへんの配慮はして欲しかった。


そして、技研の二人から解放され、漸くレッドライオン小隊の仲間や熊谷軍曹ら整備中隊の面々と再会する事が出来た。


「「「サク!」」」


機体から降りた私にエルザ隊長とラビィとパティが駆け寄り、その勢いで抱き付かれる。みんなとこうして再び生きて会えてとても嬉しい。嬉しいのだけど、流石に3人から抱き着かれると、やっぱり苦しい。


「今回はかなりキツい戦いだったから、サクが新型機で現れた時は白馬の王子様かと思ったぞ」


まあ、確かにXFA-V3は試作機だから白一色。


「隊長、そこはお姫様にしといて下さい」


「ハハハ、何にせよ助かった。危険な事までして助けてくれて有難う、サク」


「えっ⁈」


「私からもお礼を言わせて。有難う、サク」


「本当、助けてくれて有難う」


エルザ隊長に続いてラビィとパティからも感謝の言葉を伝えられる。


「…」


「「「?」」」


私は今更ながら私達4人が再び生きて会えた喜び、何度も危機に陥った戦いの恐さ、未知の機体でいきなり戦場に出なければならなかった不安、そうした諸々の感情が嗚咽と涙となって一気に溢れ出した。


「ううぅ、えぐっ、ひっく」


いきなり泣き出した私に3人は一瞬驚いた様だったけど、次の瞬間には私は再び3人から抱き締められ、そして4人で抱き合って泣いた。


航空格納庫には勿論私達以外にも多くの人達が働いていて、多分私達が抱き合って泣く姿を目にした事だろう。もしかしたら女とはいえ、軍人が抱き合って泣くなんて、と私達を非難する向きもあったかもしれない。だけど、私達は劣勢に陥ったあの戦況の中で死力を尽くして戦ったのだ。だから誰に何を言われたって構わない。言いたい奴には言わせておけばいいんだ。


だけど、死力を尽くした私達の抱き合って泣く姿を見て何か言うような人なんてこの太鳳にはいない。一兵卒から艦隊司令までみんな同じ死線を潜り抜けた戦友なのだから。


4人で話して泣いて、同じ感情を共有した事が期せずしてデフュージングとしての効果となったのか。私はその後をすっきりした気分でいる事が出来た。


数日後、漸くたどり着いた木星を前にして、私はその巨大さに思わず「ふわぁ」なんて間抜けな声を上げしまっていた。









いつも『朝倉家の戦争』をお読み頂きまして、誠に有難う御座います。宜しければブクマ登録、評価、感想など宜しくお願いします。


それでは、次話「やって来ました木星圏」にご期待ください。


それじゃあ、ひとっ走り付き合えよ!

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