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第91話 Xの鼓動③

漆黒の宇宙空間を疾駆するXFA-V3。その強力な出力による加速は少し不安定で、機体から伝わる振動はXFA-V3が初めての戦場に戦いているように思えた。


(大丈夫、私が一緒だし、ビクトルもいるから)


私がXFA-V3にそう語りかけると、その言葉に安心したのか、XFA-V3の加速は安定したものとなり、六式艦戦よりも早く戦闘宙域に至った。


戦闘宙域では依然として戦闘が続いていた。敵は増援の部隊まで送り込んだようで、キルレシオは更に敵側に傾き、空母太鳳航空隊の命運はまさに風前の灯となっていた。だけど、どうにか間に合った。


私はまだ遠距離ではあったけど、こちらの接近に気付いていない敵機をレーダー捕捉し、対空ミサイルを発射した。上手く先手が取れたようで、2機の敵機はミサイルからの逃避を図ったが間に合わず、2機ともが撃墜された。


「レッドライオンス3からレッドライオンリーダー、応答願います」


「こちらレッドライオンリーダー、サク、無事だったのか!」


良かった。エルザ隊長は無事だった。ラビィは、パティはどうなのだろうか?


「こちらレッドライオン2、サク、私もパティも取り敢えず無事よ!」


ラビィもパティも無事だった。本当に良かった。そしてそのタイミングで空母太鳳の管制官から航空隊へ指示が入った。


「ラッキードラゴンリーダーから航空隊各機、これよりレッドライオン3により新兵器による敵艦載機群攻撃を行う。航空隊は全機現宙域より退避せよ。繰り返す、」


「何かよくわからないけど、了解した。サク、頼んだぞ」


エルザ隊長を始め、その直後から未だ健在な友軍機はこの戦闘宙域から離脱を開始した。迫りくる敵艦載機群に相対するのは私のXFA-V3だけ。敵からの強力なプレッシャーに心が押し潰されそうになったけど、これで反撃の態勢は整った。


レーダーによる索敵では敵艦載機群は約50機と、更に後方から増援の約50機が加わりつつある。私は敵の2つの艦載機群が合流する瞬間を待った。


「ビクトル、宙域制圧多弾頭ミサイル発射」


『了解』


宙域制圧多弾頭ミサイルとは、XFA-V3の設計思想に沿って開発された新兵器で、発射されたこのミサイルが目標宙域に達すると多数の小型ミサイルを分離発射し、その宙域に展開する敵機群を一気に壊滅させる、という代物らしい。私も実はベルナルド大尉のレクチャーでちょろっと齧っただけなので、それ以上の事は諸元性能も何も分からないのです、悪しからず。


XFA-V3から発射された4発の宙域制圧多弾頭ミサイルは、一直線に敵艦載機群へと進む。このミサイルは撃墜を避けるためかなりの速度で進み、やがて敵艦載機群の前方に至ると周囲に小型ミサイル(ミサイルというよりも爆雷という感じ?)をばら撒き、小型ミサイルが敵艦載機群の内側に入り込むや一斉に爆発した。


それは敵艦載機群を巻き込んで夥しい火球を生み出し、やがてその宙域の全域に渡って広がって行った。


(凄い!これがXFA-V3の力なんだ)


そしてモニターを光で埋め尽くした火球の輝きが消えると、ビクトルは戦果を報告する。


『レーダーに敵影なし。敵艦載機群は全滅の模様』


私はその戦果に絶句した。そして、


(いける、この機体、凄くいい!)


XFA-V3との一体感と、無敵になったような万能感に酔ってしまいそう。


だけど!と私は頭を振り、その思いを振り払った。私は戦いのための戦いをしている訳じゃない。私が戦う理由はお父さんの敵討ち、そして仲間を、地球を侵略者から守るため。


危うく本来の目的を忘れそうになってしまった。野村大尉から授かった加護は機体と一体になる事が出来るものだ。しかし、それは諸刃の剣でもあり、その一体感から自分の心をしっかり持っていないと、自らが機体に意識が飲み込まれてしまう。


私は私で、XFA-V3はXFA-V3。私は機体と一体になるだけではなく、私の目的のためXFA-V3と一緒に戦うのだ。そういう思いを強くする。



私は更にXFA-V3を駆って前衛が消滅した敵艦隊に迫る。それは大小の艦艇からなり、中央の大型空母を8隻の駆逐艦と一隻の巡洋艦が守っている。


航空隊全滅の危機は脱したけど、この艦隊がこうしている限り輸送船団と護衛艦隊は全滅の危機からは逃れられない。木星駐留艦隊が来援するまで、何とか時間を稼がなくては。


すると、私の頭の中に野村大尉ではない、幼い男の子のような声が聞こえてきた。


「行こうよ、僕たちならまだまだ行けるよ!」


(そうだね、今の私達なら)


私とXFA-V3はエンジン出力を最大に上げ、敵大型空母が艦載機を射出するために開けていた空間から一気に敵大型空母へと迫る。敵艦隊からの対空砲火が始まったが、それよりも早く機体は大型空母に肉迫。私は機体後部X字型尾翼に装着されているミサイルユニットから全弾計24発の対艦ミサイルを発射した。


ミサイル発射後、私は戦果を確認する事なくそのまま敵艦隊を突き抜けて戦場から離脱。


『ミサイル全弾の着弾を確認』


『敵大型空母、轟沈しました』


ビクトルの戦果報告も聞き流し、エンジン出力を上げる。XFA-V3は初めての戦闘、初めての大戦果に嬉しそうにスキップする様だ。私には敵大型空母を沈めた興奮や達成感は無く、ただこれで次の敵襲まで、或いは木星駐留艦隊の来援までの時間が多少なりとも稼げた安堵感があるだけだった。

いつも『朝倉家の戦争』をお読み頂きまして、誠に有難う御座います。宜しければブクマ登録、評価、感想など宜しくお願いします。


それでは、次話「抱擁」にご期待ください。

スペースランナウェイ!

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