第88話 死闘③
しかし、ここは戦場。いくら敵に違和感があるからといっても考え事をしている暇は無い。私は友軍機を後方から攻撃しようとしている敵機を発見、「させるかー!」とばかりにパルスレーザーを連射して敵機を撃墜した。
更に索敵を続けて次の獲物を探す。するとビクトルからの索敵情報が上がる。
『左上方10時の方向より敵機接近』
私はエンジン出力を上げて機体を急上昇、更に機体を左に旋回させて接近する敵機をレーダー捕捉する。少し距離があったためパルスレーザーではなく、対空ミサイルを発射して撃墜した。
この頃になると、空母太鳳からは艦内で待機していた他隊が次々と発艦して防空線に参戦していたので味方の数は増えていた。そこで少し余裕が出来た私は、警戒しながらもレッドライオン小隊のみんな探す。
しかし、乱戦により戦域が拡大してしまっていたため容易には見つけられない。そこで私は小隊のみんなを探しつつ輸送船団の先頭船の直掩に当たると、輸送船にむかって突き進む大型の対艦ミサイルを発見した。
それは艦載機から発射された物ではなく、アムロイ艦隊から発射されたであろう大型の対艦ミサイルだった。艦隊戦の戦況は私にはわからないけど、こうして大型の対艦ミサイルが輸送船団に直接撃ち込まれている事実は、護衛艦隊の被害を物語っている。
私は敵の大型対艦ミサイルを撃墜すべくエンジン出力を上げてミサイルに猛追した。先頭の輸送船には木星へ赴く地球連邦軍の将兵や技術者達が乗っている。無人の資源運搬船だったら撃沈されてもいいって訳じゃないけど、先頭の輸送船に被害が出たならばより多くの人命が失われてしまう。それは絶対に阻止しなければ!
敵の対艦ミサイルは大型で破壊力はあるものの、その分速度は比較的遅い。私は敵ミサイルをレーダー捕捉すると、より確実に仕留めるために最後に残していた対艦ミサイルを発射した。
彼我の距離を可能な限り詰めて放った対艦ミサイルは敵ミサイルを猛追して撃墜に成功した。
(よし、やった!)
私は心の中で快哉を叫ぶ。しかし、その僅かな隙も戦場は許してはくれなかった。
『後方より敵機接近、レーダー捕捉されました』
『敵機より当機へミサイルの発射を確認』
「!!」
「ビクトル、後方にデコイ発射」
『了解』
敵機が放った対空ミサイルは、デコイを私の乗機と誤認して爆発した。どうやら危機的状況は回避出来たようだった。私は立て続けの緊張感から解放され、過呼吸気味になっていた呼吸を整えるために深呼吸を繰り返す。
しかし、ほっとしたのも束の間、次の瞬間、強い衝撃に襲われた。気を抜いてはいけない瞬間だった。次の攻撃を予想して回避しなければならなかった。コックピット内のモニターには鳴り響く警告音と共に警告灯が赤く点滅する。
『エンジンに被弾。出力30%低下』
『遠距離からの敵機によるパルスレーザー射撃と推定』
エンジン出力が30%も低下しては後方の敵機を振り切る事はとても出来ない。このままでは確実に撃墜されるだろう。
「ビクトル、機体の装甲板を全て解除して離脱」
『了解』
私はビクトルに機体に取り付けられている装甲板を全て離脱させて機体を軽くさせてエンジン出力の維持を図った。そして、機体を左右に揺らして敵の次の攻撃を回避する。
敵機の攻撃は執拗に繰り返され、敵機から連射されるパルスレーザーの閃光が機体を何度もかすめる。私はエンジン出力を維持しつつ、敵機の攻撃を回避する事で手一杯だ。
「お前さん、この状態で逃げてるだけではいずれ撃墜されるぞ。今は死中に活を求めるしかないとおもえよ。」
死中に活って反撃しろって事?野村大尉はそう言うけど、この状況でどうすればいいの?このままでは死ぬ。このままお父さんの敵討ちも果たせないで死ぬなんて嫌だ。じゃあ反撃するしかない。でもどうやって?考えろ、考えろ、私。
私は乗機のエンジンを停止すると、機首のスラスターを噴出して一気に減速、そして機首を上げて機体を垂直に立て、再び機首のスラスターを噴出させて直下を降下させた。そして私の真後ろから追尾していた敵機の下に入り込むと、敵機の下腹にパルスレーザーを撃ち込んだ。
敵機は至近距離からパルスレーザーの直撃を受けて爆散した。
「見事だ、お前さん。」
野村大尉は褒めてくれた。際どいところだったけど反撃は成功、どうにか生き延びる事が出来た。だけど、もう私の乗機は戦闘に耐えられる状態じゃなかった。エンジンに被弾して出力は低下、装甲板も離脱した機体にも数箇所被弾している。ミサイルも撃ち尽くし、パルスレーザーも残弾は殆ど無い。全身傷だらけで、刀折れ矢尽きた状態。
レッドライオン小隊のみんなは乱戦の中で見失ってしまった。今の私にはみんなの無事を祈る事しか出来ない。一人戦場を離れるのは内心忸怩たるものがあるけど、逃げ出す訳じゃ無い。明日のために今日の屈辱に耐えろと、エリカが見ていた大昔のSFアニメで髭の艦長が言っていたっけ。
(みんな、ごめんね)
私は断腸の思いで空母太鳳へ、帰艦の途に着いた。だけど、この状況じゃそれこそ至難の業に近いのだけど。
いつも『朝倉家の戦争』をお読み頂きまして、誠に有難う御座います。宜しければブクマ登録、評価、感想など宜しくお願いします。
それでは、次話「Xの鼓動」にご期待下さい。
今、運命の扉が開く




