第85話 宇宙のエース
第309護衛艦隊は輸送船団護衛の途上、アステロイドベルトを抜けてからアムロイ艦隊の襲撃を受けた。私達レッドライオン小隊も迎撃のために出撃し、月面での猛訓練で培った相互連携しての空戦技術で戦果を挙げる事が出来た。
最初の戦闘ではアムロイ艦隊の主体が駆逐艦で編成された戦隊(地球連邦軍では水雷戦隊に相当?)だったため、輸送船団へ対艦ミサイルを発射して反転する敵艦を上方から急降下しつつ、こちらも対艦ミサイルを発射したのだ。私達が発射した対艦ミサイルは全弾命中。レッドライオン小隊での攻撃により駆逐艦一隻を撃沈した。
アムロイ艦隊による第一次攻撃を凌ぎ、出撃していた航空隊も空母太鳳に帰投。しかし、その後すぐに敵の第二次攻撃が仕掛けられた。
私は搭乗員室で休息を取っていたところに敵機来襲の警報が鳴り、続いて航空隊への襲撃命令が下される。
「第1戦闘航空大隊第1中隊は補給作業終了後、直ちに出撃し艦隊防空の任に当たれ。」
「よし、みんな行くぞ!」
「「「了解!」」」
エルザ隊長が先頭切ってヘルメットを掴み、搭乗員室のドアへ向かった。私も飲みかけのオレンジジュースを一気に飲み干すと、その後に続き格納庫へと急ぐ。
第二次攻撃は第一次攻撃よりも敵の戦力が多く、先に出撃した第二戦闘航空大隊による防衛線が敵の艦載機群に突破される。そのため、艦隊直掩任務に就いていた私達レッドライオン小隊も敵艦載機群との空戦に突入した。
「飽くまで訓練通り小隊での行動だ。我々4機で敵1機に当たるぞ。」
エルザ隊長の指示が飛び、私達は第二大隊の防衛線を突破して来た単機の敵機を小隊で迎え撃つ。そして、私達4機は敵機を包囲しつつ確実に撃墜した。
五月雨的に1機、また1機と突入して来る敵機を屠る事が幾たびとなり、エルザ隊長がまた1機を撃墜した。
「隊長、もしかして今ので5機目になるんじゃないですか?」
ラビィはエルザ隊長の撃墜数を把握しているようで、5機目?撃墜5機と言えば、
「エルザ隊長、エースですね。おめでとうございます!」
そう、パティが言う通り、昔から撃墜数が5機に到れば戦闘来たパイロットにはエースの称号が与えられる。
「「おめでとうございます」」
私とラビィの祝福の声がハモった。
「有難う。みんなの気持ちは嬉しいが、今が戦闘中だという事を忘れないでくれよ。」
「「「は〜い」」」
「だから戦闘中だって!」
私は自分の所属する小隊からエースが誕生し、しかもそれが私達が敬愛するエルザ隊長という事とても嬉しく、誇らしく思えた。
しかし、艦隊直掩の私達が敵機との戦闘に至っている事態は戦況としては危ういところ。しかし、現在までに小隊連携しての戦闘で次々と戦果を挙げ、隊長だけではなく自分達にもエースの座が見えて来た。私達の中で戦場では有ってはならない浮ついた空気が醸し出されつつあった。
「気を引き締めろ!次が来るぞ!」
いつにないエルザ隊長の厳しい一喝。緩みかけた小隊の空気が一気に引き締められる。
「おい、お前さん。調子に乗ってる場合じゃないぞ。ああした空気が戦場じゃ一番怖いんだ。赤毛の隊長さんに感謝しておけよ?」
不意に響く野村大尉の声。怒られてしまった。
「それとな、」
「はい。」
野村大尉の言葉は更に続く。
「ここからが本番だ。前方の防衛線は総崩れだ。敵の本隊が来る。」
「総崩れって?第2大隊が全滅って事?」
『マスター、前方10時の方向から接近する敵影多数確認』
ビクトルが警告音と共に索敵情報を告げる。
「凡そでいいから、数で言うとどれくらい?」
『現在当機のレーダーで確認可能な敵機は100機前後です。』
100機って、そんなに?防衛線は完全に突破された?これから私達は自分達の倍以上の敵機と戦わなければならないの?
「ラッキードラゴンリーダーから大隊各機へ。」
空母太鳳の航空管制から緊急の一斉通信が入った。
「第1戦闘航空大隊は来襲する敵編隊より輸送船団を防衛せよ。繰り返す、」
エースの座が見えて来たかと思えば、さっきまでの狩る立場から狩られる立場への大逆転。迫り来る敵の圧力をひしひしと感じながら、正直恐くて堪らないけど、私は絶対に引けない戦いに臨もうとしていた。
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それでは次話「死闘①」にご期待下さい。
銀河の歴史がまた1ページ




