第84話 地球圏へ
私とパティが帰艦した事実は、戦死したとされていたパイロットが二人も生還したとして艦内では明るい話題として受けられた。しかし、空母太鳳の航空戦力はあの訓練中の奇襲によって大打撃を受けていた。特に第1戦闘航空大隊は敵機により撃墜され、或いは生還しても機体の損傷が激しく、その戦力は事実上半減していた。
幸いな事にエルザ隊長とラビィも無事に生還していた。帰艦した私とパティは生還と再会を喜ぶ二人と泣きながら髪の毛がグシャグシャになるほど抱き合った。
なんでも、第869特殊任務群は私とパティを救出していた事を「ストーンスロウイング作戦」遂行上秘匿していて、第309護衛艦隊に私達の生存が869から伝えられたのは作戦終了後だったそうだ。だから私とパティはMIA(戦闘中行方不明)扱いとなっていたと後から教えられた。
私は最初に青木大佐には最初に私達の生存を原隊に知らせて欲しいと頼んだのだけど、どうやら叶えられなかった模様。あのオヤジめ、うまいこと言って何もしてなかったのか!作戦のためとはいえ、少し腹立たしく思った。
まあ、でも、みんな無事で良かった。私は私とパティの生還を綺麗な顔を涙と鼻水でグシャグシャにして喜んでくれたエルザ隊長とラビィに心配をかけて申し訳ないと思うと共に、私も二人が無事にあの戦闘から生還していた事が有り難く、とても嬉しく思うのだった。
その後、第309護衛艦隊は輸送船団を守りつつ火星軌道を通過し、遂に地球圏へと戻って来た。輸送船団は月の裏側にある工業地帯の宇宙港に無事に入港し、第309護衛艦隊は犠牲を払いながらもその任務を全うして母港であるモスクワ海基地へ帰投した。
空母太鳳の航空戦力はこの度の護衛任務で戦力が消耗していたため、モスクワ海基地でパイロットと機体の補充を受けて戦力の再編がなされた。
補充されたパイロット達は、戦闘の被害が大きくて解体された航空部隊の生き残りパイロットや、教育を終えたばかりの新人パイロット達だった。そのため個々の練度の差が大きく、次の護衛任務までの間に、それこそ月月火水木金金の如き猛訓練を行なって戦力化しなければならない。折角地球圏に戻っても一休みとはならないようだった。はぁ。
ここで私が危惧したのは、私達レッドライオン小隊の隊員が他の小隊に引き抜かれたり、または小隊長が戦死した小隊の小隊長に任命されたりして事実上レッドライオン小隊が解体されてしまうのではないか、という事だった。
新人パイロットだった私、パティ、ラビィの三人も既に二回の戦闘を経験していて、しかもそれぞれ三機の敵機を撃墜しているのだ。だから再編される大隊の戦力を均等化させるならば、戦果を挙げている私達三人を新戦力の基幹とすべくそうした人事も十分あり得る訳だった。
戦力の再編中には雑談の話題としてみんなで勝手な人事案を出し合うもの。所謂「誰々人事」という奴で、例えば田中軍曹が自分の知識や経験を元にして考えたなら「田中人事」となる訳。
今回もそうした誰々人事で色々な事を言われたが、いざ蓋を開けてみれば私達レッドライオン小隊には何の変化もなかった。それでみんな安堵したのだけど、エルザ隊長が大隊長から聞いたところによると、レッドライオン小隊をバラバラにする案は実際にあったそう。だけど、小隊で12機も撃墜している私達を解体してバラバラにするよりは歴戦の小隊として温存し、且つ大隊における教導隊としての役割を担わせようという艦隊司令部の考えが反映されての事らしい。
現在、空母太鳳の航空隊は月面の航空隊訓練基地に移動して訓練の真っ最中だ。レッドライオン小隊では自分達の戦闘記録を分析し、その反省点を改善すべく訓練計画を立案している。私達の反省点は戦闘中に小隊がバラバラになってしまい、連携が取れなかった事だ。エルザ隊長もその反省点を認めていて、今後は連携の徹底が課題となった。
そして、第309護衛艦隊は次の護衛任務が決まった。目的地は木星圏で、出航は三日後。火星のアムロイ軍が降伏し、アステロイドベルト宙域のアムロイ軍が殲滅されたとはいえ、まだまだ油断は出来ない。戦争が終わる気配は全く感じられない。
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それでは、次話「宇宙のエース」にご期待ください。
宇宙櫻に 浪漫の嵐




