第82話 スロウイングストーン作戦
第869特殊任務群によるJ9宙域に巣食うアムロイ軍を殲滅する作戦は「ストーンスロウイング作戦」と命名された。なんでも青木大佐自らの命名だそう。日本語だと「投石」とでもなるのかな。
なんでそうした作戦名になったのか。江摩中尉が教えてくれたところによると、蜂の巣に石を投げつけて驚いて?怒って?出て来た鉢を一網打尽にするんだ、という事らしい。多分「石」は薩摩と大隈の主砲だ。
869の艦隊は強襲揚陸艦薩摩及び僚艦である大隈を先頭に左右に三隻ずつ駆逐艦が続くV字隊形で、アムロイ軍の艦隊へ先制攻撃を開始した。私とパティはこの間女性乗組員室から出られなかったため、こうした情報は戦闘終了してから江摩中尉から教えてもらったものである。
869艦隊の接近を察知したアムロイ軍の艦隊は、凹隊形で迎え撃った(奇襲とはならなかった模様)。869艦隊に対してアムロイ軍の艦隊は五倍近い戦力差があった。しかし、アムロイ軍の艦隊は戦艦クラスの強力な打撃力のある大型艦が無く、巡洋艦と駆逐艦が主な艦隊戦力であったため薩摩は主砲の初弾でアムロイ軍の巡洋艦を撃沈した。それに続いた大隈も主砲の連射でアムロイ軍の中型空母を撃沈した。
初戦で主力艦を立て続けに失ったアムロイ艦隊は浮き足立ち、盛んに攻撃を繰り返した。その間もアムロイ軍の攻撃を引きつけた薩摩、大隈による主砲連射と左右に分かれて挟撃する水雷戦隊の魚雷攻撃がアムロイ艦隊に加えられ、遂に総崩れとなった。
最早アムロイ軍の艦隊は隊形を維持出来なくなり、掃討戦に移った869艦隊により次々と討ち取られた。そして、生き残った艦艇は戦場から離脱し、艦隊戦の勝敗は決した。因みに、離脱したアムロイ艦隊はJ9宙域外縁で待ち構えていたアステロイドベルト駐留艦隊により全滅したんだそう。
艦隊戦が終わり、アムロイ軍の小惑星基地の制圧戦が始まった。私の妹、朝倉七海軍曹の初陣だ。
薩摩と大隈は艦砲射撃で基地の抵抗を排除すると、両艦は更に小惑星基地に接舷して陸戦隊を上陸させた。
妹の戦車小隊が所属する独立特務大隊という部隊は、第869特殊任務群の中でも青木大佐直属の部隊であり、第869特殊任務群全体を動かせないような事態でも青木大佐の権限で動かせる戦力という存在なのだそうだ。
その部隊は青木大佐の肝煎りにより発隊し、青木大佐が目を付けた優秀だけど様々な理由で冷遇されていた一般大学出身の予備士官(戦闘に関しては天才らしい)を引っ張って来て、869の中でも各隊長から疎まれて行きどころの無い癖の強い下士官兵を当てがって作ったのだそう。穿った見方をすれば、優秀じゃないと困るが失っても惜しくない戦力と言えなくもない。
そんな部隊をその一般大学出身の予備士官は忽ち把握し、実に使い勝手の良い部隊にしていったそうだ。それ故に泥縄式に部隊規模が拡大される。そして、たまたま新兵器の実験任務(青木大佐の元に持ち込まれ、大佐が多方面に貸しを作るため請負って丸投げするのだそう)で火星に行っていた際に大戦果を挙げ、その"ご褒美"で戦車小隊が加えられて"特務大隊"に格上げされたという。
妹は少年下士官学校を卒業して機甲科に進み、戦車学校と半年間の実戦部隊勤務を経て特務大隊昇格に伴う戦車小隊増強要員として869の独立特務大隊へ配属となったそうだ。
話は大分それてしまったけど、アムロイ軍の小惑星基地に上陸して進入した妹の戦車小隊(一人乗車の小型戦車で、三台による小隊編成)は、迎撃に出たアムロイ軍のバトルロイド(戦闘用のロボット)を強力な火力で撃破し、橋頭堡を確保したりと大活躍!と妹が言っていたものでして…
まあ、妹は少し盛って話したかもしれない。だけど江摩中尉に尋ねても実際なかなかの戦果で、妹の初陣はまずまずだったよう。私は妹が大活躍した事よりも、無事に帰って来てくれた事の方が嬉しかった。
私は妹の上官である大隊長、三剣明大尉(特務大隊だから大隊長でも大尉・江摩中尉が好きな男性はこの人・メチャメチャかっこいい)に妹が恥ずかしいからお姉ちゃんもうやめてと言うまでお礼を言った。
こうしてアムロイ軍の小惑星基地は制圧された。艦隊も全滅し、ストーンスロウイング作戦は第869特殊任務群の大勝利で終了したのであった。
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それでは次話にテックセッター!




