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第81話 再びの、再会、妹よ

第869特殊任務群の司令部は、早々に私とパティが提出した情報を解析して敵戦力と根拠地となる小惑星基地の位置を把握したようだった。私とパティが薩摩艦内の女性乗組員室でこうして待機している間にも第869特殊任務群の艦隊は予定戦場に向かっている。間も無く第1戦闘配備となり、数時間後には戦端が開かれるはず。


当然の事ではあるけれど、友軍とはいえ869から見たら私達は部外者。求められれば別だけど、特にやる事は無い。戦闘に備えて江摩中尉から「これくらいしか余剰が無くて、ごめんね」と言われて貸与されたサイズの合わない男物の戦闘服から自前のパイロットスーツに再度着替えた後は、艦内の緊張感とは裏腹にここでダラダラ過ごすしかない。


ただ、こうなると仲が良いとはいえ、パティとも話題が尽きてしまい会話が続かなくなる。また、する事が無いと考え事も多くなるものだ。早く戦闘が終わるといいのだけど。でもそうなったら足止めを食らっていた船舶の運航も再開されるだろう。そうすると第309護衛艦隊も護衛する船団と共に地球圏へ向けて出航するはず、それもスケジュールの遅れを取り戻すために、早急に。そうなると、たった二人のパイロットを回収するためだけに船団の、艦隊の出航を遅らせるなど有り得るだろうか?とても残念だけど、その答えは否だろう。私が艦隊司令でも同じ決断をするだろうし。はぁ、私達が再びエルザ隊長とラビィに会えるのはいつの日になるだろうか。最悪、原隊への復帰叶わず、このまま他隊へ転属なんて事だって有り得る。


そんな風に少し暗い気持ちになってしまっていたのだけど、この女性乗組員室には時折薩摩の女性乗組員が訪れる。そうなると、大事な戦闘を前に私が辛気臭い顔を見せてしまっては士気にも関わってしまう。ここは努めて明るい表情でいなければ。


この部屋に入って来るのは士官の場合もあれば、下士官兵の場合もある。皆、来るべき戦闘に備え、まだ第1戦闘配備がかかる前に息抜きに来ているようだった。


士官が入室して来た場合は、よほど階級が上でなければ大体は"あっ、どうも(ペコリ)"的に軽く会釈しするくらいで済むけど、逆に下士官兵の場合には彼女達からの敬礼(バッチリ、キッチリ、キヲツケでしてくれる)に対して私達もキッチリと答礼しなればならない。ここでいい加減な答礼をすると嫌われてしまい、後々何かとやり辛くなってしまうのである。


そして今も三人の下士官が女性乗組員室へキャッキャと騒ぎながら入って来た。室内には誰もいないと思っていたのか、三人は私達の姿を認めるや慌てて直立不動となり挙手の敬礼をした。


私とパティも答礼すべく立ち上がると、ふと三人の真ん中の下士官に目が向いた。更に気になってその女性下士官を凝視すると、そこに居たのはどう見ても妹の七海なのだ。


「えっ、なな?」


妹も敬礼しながら私を見て驚いている。


「お姉ちゃん?」


「「何でここにいるの?!」」



私と七海は直れもそこそこに、お互い駆け寄って抱き合う。妹の髪に顔を押し付けると、久々の妹の匂いを私はクンクン嗅いで堪能した。しかし、勿体ないけど、今はそれどこれじゃないのでもっと嗅いでいたいところを我慢して体を離す。


「本当に何でここにいるの?」


「それは私が、869の陸戦隊員だからだよ、お姉ちゃん。」


まぁ、それはそうなんだけど。自分の妹が特殊部隊に配属されていたなんて本当に驚きなのだ。


「救助されたパイロットがいるって聞いてたけど、まさかお姉ちゃんだったとはね。」


う〜ん、その言い方が少し生意気なような?そして、ふと視線を感じて見回すと、パティと二人の下士官の女の子が呆気にとられたようにこっちを見ていた。


「第869特殊任務群独立特務大隊第1戦車小隊小隊長の朝倉七海軍曹です。姉がお世話になってます。」


直立不動でパティに敬礼して自己紹介する妹。パティも慌てて答礼する。私はその姿に、立派になったなぁと妹を頼もしく感じると同時に、もう子供の頃の妹ではないのだなと少し寂しく思ったりもした。アムロイの侵略は私達家族から父を奪っただけではなく、妹の大事な少女時代をも奪ってしまったかのように思えた。


「妹が大変お世話になっています。第309護衛艦隊第1戦闘航空大隊の朝倉咲耶少尉です。」


私も妹の部下の女の子達に敬礼する。


「いえ、朝倉小隊長には私達お世話になりっぱなしで、ね?」


「うん、じゃなくて、はい。」


後の方の子がちょっと心配だけど、ここに配属されているって事は優秀なのだろう、多分。だけど、三人の様子からすると妹の小隊長は上手くやっているようで、姉としてはひとまず安心だ。


妹達の休憩は30分間という事だったので、立ち話よりも座って話そうという事になった。私と妹はお互いにそれぞれの学校を卒業してからの事や近況について語り、妹はパティから、私は妹の部下達から互いの普段の様子などを聞き出したりした。


「で、お姉ちゃんは今までに何機撃墜したの?」


「3機だよ。」


「凄いね。実戦ってさ、どんなだった?」


「うん。まだ2回しか戦ってないんだけど、最初はそうだな、恐さと緊張で無我夢中って感じだったよ。」


妹は何か思うところがあるのか、私の戦闘体験について聞きたがった。


「私達、多分これから初出撃なんだよね。」


「えっ?艦隊戦なんじゃないの?」


「アムロイ軍の基地があるんだよ。だから基地制圧任務。」


そうして、遂に妹達の休憩時間が終わる。これから陸戦隊の格納庫に戻って出撃準備に入るのだという。


「なな、私はここで待ってるから、必ず戻って来て武勇伝聞かせてね。」


「うん、兎に角、行ってきます。」


私とパティは第1戦車小隊の武運長久を祈って敬礼し、妹達は答礼するて女性乗組員室を後にしていった。


妹が出ていったドアを見続けると涙が止まらない。きっと戻って来ると信じているけど、出撃を見送るのって本当に辛い。ましてやそれが実の妹なんだから。そんな私をパティが後ろからそっと抱きしめてくれた。


それから間も無く、薩摩艦内は第1戦闘配備が発令された。





いつも『朝倉家の戦争』をお読み頂きまして、誠に有難う御座います。宜しければブクマ登録、評価、

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