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第80話 副官江摩真中尉

強襲揚陸艦薩摩の艦内。私とパティは女性乗組員室へ向かう通路を江摩真(えままこと)中尉の後について歩いている。江摩真中尉、身長は私と同じくらいだから165cmくらいだろうか。細身の色白で、黒髪のショートカットも似合う美人さんだ。ただ、少しツンとした感じがあって私には取っ付き難く、ちょっとだけ緊張する。でもハワイで生まれ育ったパティにはあまり問題ないようだった。


「江摩中尉、青木大佐の副官なんですよね、何かおっかなくないですか?」


パティ、何気なくとんでもない事言ってたけど大丈夫なんだろうかと、ハラハラしてしまった。しかし、言われた当の江摩中尉は少しも意に介した様子も無く、先を歩きながら軽く後ろに付いて来る私達に振り向いて言った。


「まあ、大佐もあの見た目だから、中には魔神提督なんて呼ぶ人もいるけど、実際はそうでもないのよ?ちょっと部隊を強くする事に関して偏執的なところがあるけど、将兵からは人望あるしね。」


偏執的って、それもう十分問題なんじゃ…それに魔神提督って一体…


「そうなんですか、そうなんですね。私達の事も何か褒めてくれましたしね。」


「あなた達からの情報がよほど嬉しかったのでしょうね。アムロイ軍の通商破壊の拠点がアステロイドベルトにあるんじゃないかって随分と探索したのだけど、彼奴らなかなか尻尾を現さなくて。それで大佐もイライラしていたの。ウチの隊員達も自分達の縄張りを荒らされて、あまつさえ友軍に被害が出ているとあってフラストレーションが溜まっていたから。だから大佐はこれを機会にアムロイ軍の根拠地を自分の手で殲滅するつもりよ。」


江摩中尉はそのようにこの部隊内の事情を語ってくれた。


なるほど。しかし、待って欲しい。ビクトルがレーダーで確認した第869特殊任務群の艦隊は薩摩を含む大型艦2隻に小型艦が6隻だった。それに対するアムロイ軍は小惑星の基地にはパッと見ても30隻以上の艦艇が見られた。青木大佐はそれに手持ちの8隻で挑むのだろうか?


「中尉、でも私達が見た限り敵の艦隊は30隻くらい確認出来ました。869(こちら)がどれくらいの戦力があるのか知りませんが、大丈夫なのでしょうか?」


私は率直に疑問を江摩中尉にぶつけてみた。初対面の階級上位者に不躾だとは思うけど、無茶な戦闘に部外者の私達が巻き込まれて戦死とか、私的にはちょっと勘弁して欲しいから。


そこで丁度私達三人は女性乗組員室の前に至った。江摩中尉は壁体のタッチパネルを操作してスライドドアを開けると、私とパティに入室を促す。


入室した私達は飲み物をドリンクサーバーから備え付けのカップに注いでソファーに座り、そこで江摩中尉は先程に私の疑問に答えてくれた。


「朝倉少尉の懸念はもっともだと思うわ、普通ならね。でも869(うち)は任務の性質上全く友軍のサポートの無い状態でいかなる事態にも対応出来るよう装備がなされているの。詳しい事は教えられないけど、この薩摩と僚艦の大隅にしても強襲揚陸艦という事になっているけど実態は多目的機能を有する、昔のSFっぽく言えば重武装の万能戦艦とでも言うべき艦なのよ。だから、戦力差も考慮しない無謀な決戦を挑むって訳ではないの。」


このように江摩中尉から説明を受けても、悪いけど私ははいそうですか、とは納得出来なかった。まあ、要するに私は自分が主体となる戦いではなく、他人の戦いで自分が何も出来ない状態で巻き込まれるのが恐いのだ。


「万能戦艦って、何か響きがいいですよね。何でも出来そうで。」


「でしょ?それにこの艦には不可能を可能にする人もいるのよ?」


「え〜誰なんですか?」


私の不安と焦りを他所にパティと江摩中尉は話が弾み、いつの間にか恋バナにまでなっていたのは驚きだ。パティのコミュ力、侮り難し。


ちょっと信じられないけど、なんでも薩摩には青木大佐直属の特務隊があるそうだ。その部隊の隊長という人がたまたま他隊との合同任務で火星に滞在していた際にアムロイ軍と戦闘となった。そして、詳細はわからないけどとんでもない戦果を挙げたのだという。曰く、試作のステルスパワードスーツで少数の部下を率い、上空から地上を制圧するアムロイ軍の大型空母に乗り込んで内部から破壊して撃沈した。曰く、火星にて、占領した火星駐留軍基地に着陸したアムロイ軍の揚陸艦を地下通路から小型核融合弾で破壊した、とか。


結論としては、その隊長がこの部隊にいるから大丈夫、という事なのだけど、艦隊戦はまた別なんでは?と思ったけど言わない。せっかく私達を安心させようという江摩中尉の心遣いを無駄にはしたくないから。


「えーっ、江摩中尉はその(ひと)の事が好きなんですね。」


「なっ、何でそうゆう事になるかな!」


「いや、だって、かなり熱入ってましたよ?」


真っ赤になってあせあせしている江摩中尉は、最初の印象と違ってとても可愛らしくて心和むものがあった。と、同時に士官学校時代の練習航海での事を思い出した。私が乗った巡洋艦愛鷹の森井雪中尉が言っていた女性の同期生。そして、その女性が惚れて異動希望してまで追いかけたという男性(ひと)。確か異動先は869(ここ)だったはず。そういえば火星に行っていたとか言っていたっけ。じゃあ、森井中尉の同期生って江摩中尉って事か。


勿論、これから作戦行動に入ろうというこんな時だからそんな話はしない。でも、気が付けば不安と焦りでささくれ立っていた私の心も幾らか和らいでいる事に気付いた。パティのコミュ力のおかげだ。


その後、江摩中尉は私達に戦闘中における幾つかの注意事項を伝えると、本来の職務に戻って行った。


「パティ、ありがとね。」

「どういたしまして。大丈夫だよ、なるようになるって。」

「うん。」


事ここに至っては焦ったってしょうがない。私も腹を括って869と一蓮托生だ。



いつも『朝倉家の戦争』をお読み頂きまして、誠に有難う御座います。宜しければブクマ登録、評価、感想など宜しくお願いします。

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