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第71話 初陣①

第309護衛艦隊はクヌート宙域での積載作業を終えた輸送船団を守って木星に向かって出航した。そこからは母からの忠告があったように、今までとは違って敵が出没するより危険な海となる。


これは火星のアムロイ軍が何を思ってか突然降伏した事に端を発している。地球圏とアステロイドベルト地帯までの間がこれによって比較的安全になったのは良かったけど、その分アステロイドベルト地帯から木星圏の間に敵の通商破壊が集中したからだ。


クヌート宙域を出航して二日後、搭乗員室で待機中の事。私は唐突に野村大尉の例の空間にいる事に気付いた。何時もの喫茶店ではなく、白いだけの空間。睡眠中でもないのにどうしたんだろう?そして現れた大尉。とても厳しい表情をしている。


「突然にすまんな。お前さんに重大な知らせだ。今日、これから敵襲がある。お前さんにとっては初陣になるだろうから心してかかれ。以上だ。」


「えっ?!」


突然の敵襲予言。私が驚いていると、野村大尉は私の肩をポンと叩く。


「落ち着いてやれば問題無い。自分と仲間を信じろ。」

「はい!」


そして気が付けば、私は先程と同じく搭乗員室のソファーに座っていて、室内の様子は先程と何ら変わる事は無い。一つ違うと言えば、さっきまで雑誌を読んでいたパティが心配そうに私の顔を覗き込んでいる事くらいか。


「サク、大丈夫?」

「えっ、大丈夫だけど?どうしたの?」

「急に黙りこんじゃって、声かけても反応無いから心配しちゃったよ。具合悪いなら医務室一緒に行こうか?」


私が野村大尉に呼び出されている間、ボーッとしていたみたいだ。ほんの一瞬の事だと思っていたけど。


「いや、大丈夫だよ。ちょっと自分の世界に入っちゃってた。」

「本当?何かあったらすぐ言いなよ?」

「うん、ありがとう。ごめんね、心配かけちゃって。」


野村大尉に言われた事、これから敵襲があるとかみんなに言っても信じてくれないだろうし、どうしたらいいかな。



果たして、野村大尉の予言の通りにアムロイ軍の襲撃が始まった。空母太鳳の艦内に敵襲の警報が鳴り響く。


『敵艦隊接近。敵艦隊接近。航空隊全隊は直ちに出撃しこれを撃滅せよ。』


スピーカーから流れた拡声された指令により、搭乗員室に待機中のパイロット達は一斉に航空機格納庫へと走り出した。私もヘルメットを手に取り、走りながら着装する。


第一航空隊格納庫では各小隊毎に集まり、大隊長からが指示伝えられる。


「直掩隊を除いて全隊で敵の迎撃に当たる。だが我々の使命は敵の撃滅では無く、船団を守る事である。深追いは無用。敵を追い払えばよい。質問は?無いなら以上だ。解散、かかれ!」


「回せー!」

って誰が叫んで走っていったけど、何を回すんだろうか?


私達レッドライオン小隊は、自機に搭乗する前にエルザ隊長の元に集まった。


「みんな集まった。これがレッドライオン小隊の初の戦闘となる。三人とも初陣だからといって気負わなくていい。事前の計画通りにやればいい。」

「「「はい!」」」

「うん、では行こうか。」


私達四人が互いに肩を組んで円陣となると、エルザ隊長が気合いの入った掛け声をかけた。


「RedLions!」

「「「「GO!」」」」


私は愛機ビクトルのコックピットに乗り込むと、すかさず整備小隊の関口伍長がキャノピーから顔を見せた。


「朝倉少尉、ビクトルの仕上がりはバッチリです。」

「いつもありがとう、伍長。」


関口伍長は一瞬ニコッと微笑むと、すぐに表情を引き締め、右手で敬礼し、「少尉、戦果を期待します。」と言うや機体から離れて行った。


(戦果を期待も何も初陣なんだから自分が生き残るので精一杯だよ、多分)


私は内心でそう毒突きながらコックピットのキャノピーを閉じるようCAIのビクトルに命じた。防弾二重構造のキャノピーが閉まり、と同時にコックピット内の全方位モニターが外部の映像に切り替わった。


空母太鳳の航空隊は次々と電磁カタパルトにより射出される。そしてレッドライオン小隊も一番機のエルザ隊長、ラビィの二番機、私と続く。


私の機がカタパルトに乗る。飛行甲板の射出信号が赤から青に変わると自機は一気に加速され、そしてエンジン全開にした私の機は発艦した。


発艦までは興奮も無ければ、おびえも無い。何故なら自分がコックピットに乗り込んでしまえば、後は格納庫から飛行甲板に出て射出されるまで全自動で行われるから。


私はビクトルにエンジン出力を全開にさせたまま進む。やがて集合予定宙域で先行する隊長機、二番機に合流。更にパティの四番機が追いつき合流した。


『レーダーに反応あり。敵対艦ミサイルと思わされる高熱源飛翔体多数接近』


ビクトルがレーダー索敵情報を私に伝えると、すかさず大隊長からの命令が伝達された。


「大隊長機から大隊各機。対艦ミサイルは防空駆逐艦に任せる。我が大隊はこのまま直進し、敵艦載機群を叩いて船団護衛に徹せよ。」


大隊長からの下命に各小隊長からの了解の回答がコックピット内に響いた。


『敵艦隊艦載機群との接触まで50秒』


ビクトルが接敵までの時間を告げる。50秒後には初めての実戦だ。空母太鳳の第一戦闘航空大隊は今、その全機が出撃して迫り来る敵艦載機群を迎え撃たんとしている。因みに第二戦闘航空大隊は輸送船団及び艦隊の直掩隊に回っている。


犠牲者が出ない戦闘は無い。私の脳裏には以前に見た友軍の屍が重なる戦場がチラついた。私は父の敵討ちを誓ったけど、正直恐い。


「おい、お前さん。操縦桿を持っ手に力が入り過ぎだ。今からそんなんでどうするんだ。」


突然、頭の中に野村大尉の声が響いた。


「俺は何て教えた?操縦桿は女を抱くように優しくだぞ。」


「女抱いた事無いからわかりません!」


「それじゃあ、男のナニを握るように、そっとだ。」


「そんなもの、握った事ありません!」


全く、女の子に何て事言うかな、この英霊(ひと)は!


「大尉、海軍士官は紳士なんじゃないんですか?」


「ははは、そりゃ失敬。でもな、俺は海軍士官といっても学徒出陣の予備士官だったからな。元はガサツなバンカラだ。まあ、大目に見な。それより、肩の力は随分と抜けたようじゃねえか?」


あ、言われてみれば本当だ。すると、


「レッドライオンリーダーから三番機、サク、どうかしたか?」


「いえ、何でもありません。ちょっとしたおまじないみたいなものです。」


「…了解、本当に大丈夫なんだな?」


「大丈夫、もちろん大丈夫です。」


私が声を出して野村大尉にツッコミを入れたため、エルザ隊長に聞かれてしまい、不審に思われてしまったようだ。恥ずかしい。でもお陰で何か吹っ切れた気がした。これで思う存分戦えそうだ。大尉、有難う御座います。




お読み頂きまして、誠に有難う御座います。宜しければブクマ登録、評価、感想など宜しくお願いします。

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