第64話 愛機ビクトル②
熊谷軍曹は整備作業に戻ってしまったけど、軍曹が私達に寄越してくれた若い高校球児のような整備小隊員が、私達を機体まで案内してくれた。
私が乗る事となる機体はSF–06という戦闘機で、日本風には六式艦上宇宙戦闘機、愛称はスターウルフ。日系の操縦士や整備士からは六式艦戦とか六式などと呼ばれる事が多い。日系企業であるSHI(篠原重工業)で設計・開発され、今ではやや旧式となりつつある。だけど、その機体性能は色褪せる事無く、その速力、機動性、兵装など使い勝手の良さ、そして整備のやり易さもあって現場では今もってパイロットや整備員からの支持が高いのだ。
その整備小隊員、関口一等兵は、私の機体のコックピットを開いてメインキーを入れた。コックピット内の全方位パネルには忽ち機体周囲の映像が映し出される。
操縦席に座ると、メインパネルには"操縦士未登録"の文字が。
「朝倉少尉のパイロット仮登録は終了してます。IDカードをパネルにタッチして下さい。」
関口一等兵に促されて、私はIDカードをメインパネルにタッチさせた。すると、パネルの"操縦士未登録"の文字が消えて"登録完了"に変わった。
「これで朝倉少尉のパイロット登録は完了しました。後はCAIにコードネームを付けて下さい。」
「どうも有難う。関口一等兵、助かります。」
「いえ、何かあれば何でもお尋ね下さい。」
多分、私より少し年下の関口一等兵は、少し照れたような表情を浮かべてコックピットから離れていった。
さて、コードネームはどうしようか。でも実はもう考えてあったりする。自分が乗る機体の名前は"ビクトル"と前々から決めていたのだ。このコードネームの由来は、私がロシア人のフィギュアスケート選手ビクトル・アレクセーエフのファンだから。実にかっこいいよね、ビクトルって。
私はコードネームを入力する。
「今日から宜しくね、ビクトル。」
『こちらこそよろしくお願いします、マスター。』
何か、声の設定も出来るけど、態々しなくてもイメージ通りの甘いイケボだ。そんなビクトルに"マスター"なんて呼ばれるなんて、なんて胸熱なんだろう。私も遂に愛機にマスターと呼ばれるようになったのだ。この感動は決して忘れないようにしなくちゃね。
いつまで感動に浸ってもいられず、私は機外で待ってくれているエルザ隊長の元に戻り、作業の終了を報告した。因みにエルザ隊長の機体のCAIコードネームは"ランスロット"だそう。
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