第58話 接触
「レッドライオンリーダーから各機、我隊は間も無く前方哨戒宙域の未確認物体と接触する。戦闘となる可能性も十分あり得るから気を引き締めてかかれ、以上。」
「「「了解。」」」
私はレッドライオン小隊の小隊長エルザ ヘンダーソン中尉からの指示に従い僚機と共に哨戒宙域に向けて愛機を加速させた。僚機のパイロットはラビィ マクドーウェル少尉とパティ マツモト少尉。
私達レッドライオン小隊は母艦である空母太鳳から哨戒任務のため出撃、トロヤ群に向かう輸送船団の進路上に展開している。船団の護衛艦隊が進路上に未確認物体の反応を遠距離レーダーで察知、護衛艦隊司令部から調査命令が出たためであった。
その未確認物体がアムロイ軍のものであるなら当然看過出来ず、即戦闘となるだろうけど、まあ、敵も馬鹿ではないから遠距離レーダーの索敵に引っかかるような真似はしないだろう。従って、その未確認物体がアムロイ軍の艦艇である可能性は低いと考えられる訳だけど、僅かでも輸送船団に危険を及ぼす要因は可能な限り排除する必要がある。
『マスター、未確認物体を捕捉しました。画面で確認して下さい。』
低く艶のある私好みの男性の声がヘルメット内のスピーカーから聞こえてきた。私の愛機のAI、私が彼に付けたコードネームは「ビクトル」。
「有難う、ビクトル。」
コックピット内の右前方部に画像が映し出される。それは戦闘により破壊された艦艇の残骸。この宙域で比較的最近、地球連邦軍とアムロイ軍の遭遇戦が行われたようだった。
「エルザ隊長、これは1週間前に消息を絶ったパトロール艦隊じゃないでしょうか?」
私が言葉も無く撃沈された艦隊を見ていると、エルザ隊長に宛てたラビィの押し殺したような声が聞こえてきた。
私もそうだけど、ラビィもパティもまだ空母太鳳に配属されたばかりのルーキーもいいところ。だから、この戦闘後に漂う濃厚な死の雰囲気に呑まれてしまったのは否めない。第一、このレッドライオン小隊自体も発隊したばかりなのだ。
「おそらくそうだろう。よし、周囲を警戒しつつ救難信号を探そう。」
「「「了解。」」」
私達の中で実戦を経験しているのはエルザ隊長だけ。流石隊長だ。こんな時は特に指示を出され、やるべき事があるのは有り難かった。
アムロイが土星宙域に出現してから約4年。戦争は日々その激しさを増していた。
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