第57話 ダンスパーティ②
今回で士官学校編は終わりとなります。次回からはいよいよ舞台を宇宙に移し、異星人との戦争へ参戦して行きます。
「私、あんまりダンス上手くないからがっかりさせちゃうかも、ですよ?」
「大丈夫です。僕も決して上手くないから。って威張って言う事じゃないけど。」
少しおどけた風の山中君に自然と笑みがこぼれた。
「フフッ」
「ハハハ」
そうして私達は軽口で互いに緊張をほぐしながら、やがて曲に合わせて踊り始めた。
私も先程ダンス あまり上手くないと言ったものの、高校や士官学校の一般教養でダンスを習っていたので、そこそこ踊れたりする。ダンスが上手くないというのは、女性が男性に対して「上手くリードして下さいね?」という一種の社交辞令。そして、男性がそれに応じるという一連の流れがお約束というものだろう。
山中君のステップはなかなか巧みで、私も上手くリードしてもらっている。だから少し気持ちに余裕が出来、ふと周りを見回して見ると、私の班のみんなも山中君と一緒だった2組の男子候補生達と踊っていた。
私達はそのまま何曲か続けて踊ったので、私は山中君に少しだけ意地の悪い質問をしてみた。
「招待客の女子大生をダンスに誘わなくていいの?」
「いや、僕はそんなに器用じゃないから。」
山中君は苦笑しながらそう答えた。
これをどのように解釈すべきか難しいところで、誤って自意識過剰に陥ってしまいそうになるけど、少しだけ山中君に好感を抱くには至ったかな。私は自分で質問しておいて、それに対して何も言わなかった。
すると、それに会場の照明が暗く落とされ、チークタイムに差し掛かったよう。これ、密着しなきゃいけないんで、一瞬どきりとしたり。
「あの、よかったらこのまま踊って下さい。」
私はそんな状況だったので、すぐには答えられず間を空けてしまったけど、「はい」とだけ答えて下を向いた。だって、なんか恥ずかしいし。
「ありがとうございます。」
山中君は握ってい私の手を解くと、両手を私の両肩に置き、ぎこちなく私を抱き寄せた。
それに対し、私は自分の両手を彼の胸に添えるような格好になってしまった。本当だったらチークダンスは山中君が私の腰に両手を回し、私は彼の首に両手を回すものなのだけど、彼が私の肩に手を回して抱き寄せたものだからこのような形になっちゃった。これも山中君が先程自分で言っていた器用じゃないところ、なのかもしれない。そう思うとなんとなく可笑しくなって、ふふっと笑いが漏れてしまった。
「どうかしましたか?」
その笑い声に気付いた山中君が、不可解そうに尋ねてきた。
「いえ、なんでもありませんよ?」
チークダンスに合うムーディーな曲に合わせ、私と山中君は特に何を話す事無く(なんか気恥ずかしくって)、ゆっくりとしたステップで踊った。どれくらいの時間が流れたのか、長いようであっという間のようなチークタイムは終わった。明るく照明が灯され、ダンスパーティも終幕となる。
照明が灯され、私は山中君から少し離れて顔を上げ、私より頭一つ分背の高い彼の顔を見つめた。目が合った私達は微笑んでお互いに「ありがとう」と言うと、それぞれの仲間の元に戻って行った。
そういえば、山中君の配属先を聞いていなかった事に今更ながら気付いた。
「ねえ、配属先、どこ?」
互いに少し距離が開いてしまったので、私は声を大きく上げて山中君の背中に尋ねた。
私の声で振り向いた山中君は、大きな声で答えてくれた。
「月第18戦闘航空大隊です。これならも宜しくお願いします。」
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