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第56話 ダンスパーティ①

サイカヤグランドホール。それは地元横須賀の老舗百貨店サイカヤ、横浜銀行、横須賀市、神奈川県が出資して建築されたイベントホールだ。


ここには主体となるイベントホールの他にも娯楽施設、商業施設、医療機関、行政機関があり、横須賀市民はもとより、近隣市町村の人々にとっては日常のショッピング、週末や休日の家族サービス、はたまたナウでヤングな若者達のデートコースとしてお馴染みの半官半民複合用途施設である。


今、そのサイカヤグランドホールでは地球連邦軍横須賀士官学校の今年度卒業生による恒例の卒業ダンスパーティが開催され、会場となっている大ホール内には総勢500人以上の卒業生、士官学校関係者、招待客等がペアでダンスを踊り、オードブルを立食し、または、ドリンク片手に談話に花を咲かせている。


招待客とは、主に卒業生の家族とかであるけど、特に目を引くのは横浜など近隣市町村の大学から招いた女子大生達だろう。


卒業生の中にはダンスのパートナーとなる配偶者、恋人、パートナーがいない場合もあり(いや、いない方が多いでしょうに)、また、卒業生の皆にダンスパーティに参加できる年頃の兄弟姉妹がいる訳でもない。まあ、女子候補生なら父親も有りだと思うけど、男子候補生は流石にダンスパートナーがお母さんだと、ちょっと、ねえ?そのため、軍民交流の意味も含めて地元横須賀はもとより、横浜や鎌倉などの大学からダンスパートナーとして女子大生をご招待している訳である。


これは毎年なかなかの人気だそうで、応募した参加希望者は抽選で決まり、かなりの高倍率なのだそう。


女子大生達は女子の私から見ても髪型、メイク、そして衣装、どれも気合が入っている。彼女達は港横浜や古都鎌倉の、それぞれの特色が反映されてお洒落で可愛く、或いは美しい。当然ウチの男子達からは大人気で、女子大生達はパーティが始まるや否や、早速ダンスのお誘いを受けていた。


私達はパーティが始まっても、取り敢えず昼から何も食べていない事もあって、腹ごしらえの為に壁の花となってダンスを見ながらオードブルを摘んでいる。


「私、思うんだけどさぁ、」

「うん?」


ダンスの始まりと共に真樹のボヤキが始まったので、私は友の義務として聞いている。


「ウチらさぁ、礼服じゃない?女子大生のドレスは狡いと思うんだよね。」

「「うむ!」」


エリカと史恵が真樹のボヤキにいちはやく反応する。


「いや、でも、この礼服姿が好きって人だっているよ?」


一応、私はこの地球連邦軍第1種礼服を擁護してみたけど、これが返って真樹の反撃を招いてしまったのだ。


「それってミリオタとかでしょ?それ以外だって凛々しいとか格好いいとか、そういう評価なんであって、綺麗なとか、可憐なとかじゃないから。」


「ぐぬぬ!」


真樹から叩き込まれるような反撃を食らった私は、その現実から逃れるようにホール中央のダンス会場へと視線を移した。すると、そこには楽しげに踊る我がクラスの北條猛隊長と花月舞副隊長の姿があった。あの二人はクラスでも公認の仲だから、まあいい。だけど、その隣には満更でもない表情でクラスの男子と踊る我が友ひとみの姿があったのだ。


「ひとみ、何気に楽しそうだね。」

「松本君はひとみの事が好きだったからね。」


エリカと史恵の呟きが聞こえる。因みに松本君は山岳訓練で羆に襲われて私とひとみで助けた他班の男子候補生だったりする。


「あー!大体この会場は女の方が多いだろう!男子候補生の為に女子大生呼ぶなら、女子候補生の為にイケメン男子大学生も呼ぶべきじゃないの?」


真樹の不満が大爆発した模様。しかし、その言い分は一理有るなと思った。


ひとみはダンスパーティ開始早々に松本君からダンスに誘われている。ダンスパーティは基本的に男性が女性を誘うもので、誘われた女性はなるべくそれを断らないのがエチケットだ。知らない(ひと)と踊りたくない女性は、予めダンスパートナー(父親、兄弟など)を確保する必要がある。松本君はひとみの事が好きだったのだろうけど、彼の誘いを受けて応じたひとみはどうだろう?まあ、女性として男性から真摯に好意を寄せられたら悪い気はしないと思うけど(無論、相手にもよるだろうけど)。


私がつらつらとそのような思いに耽っていると、数人の男子候補生が私達の元へ近づいて来た。誰だろうと思って見たら2組の学生隊長である山中君だった。


山中君は私の前に立ち、何やらもじもじしている。私も鈍感系主人公(自分の人生は自分が主人公だから)ではないので、彼が私をダンスに誘いに来たのは、そこはかとなくわかるのだけど、山中君はもじもじして何も言わないし、私から何か言うのはちょっと違うと思うんだよね。


すると、その状況にじれたのか、山中君と一緒に来た2組の副隊長(確か佐々木君だったか)が、彼に次の行動をとるよう促した。


「ほら、かっちゃん、朝倉さん困ってるじゃん。何か言う事あるんだろ?」


私と山中君は自然とお互い向き合い、そして、その周囲を真樹達と佐々木君達が囲むようなシチュエーションとなっていた。


「あっ、朝倉さん。」

「はっ、はい。」

「よろしければ、僕と踊っていただけないでしょうか?」


うん、やっぱりそう来るよね。ここは断らないのがマナーだよね。


「私でよければ、喜んで。」


私が差し出された山中君の右手を取ると、周りから拍手と歓声が沸き起こった。


「やったな、かっちゃん。」

「よかったな、かっちゃん。」

「イェーイ、かっちゃん。」


2組は皆渾名で呼び合っている事は知っていたけど、隊長までも渾名で呼ばれるなんて驚きだ。皆仲が良く、山中君も隊長として信頼され、慕われているのだろう。それにしても男子候補生の間で「イェーイ○○」というのが流行っているのだろうか?


班のみんなの方を見ると、史恵がヒューヒューとからかい半分に私と山中君を冷やかしている。


「山中隊長、貴公のその勇気に免じて少しの間だけうちの咲と踊る事を許可しよう。」


「うちの咲に変な事すんなよ。」


エリカと真樹からやや上から目線に言われた山中君は、


「任せてください!」


と言って右手で自身の胸を叩き、ダンス会場に腕を組んで行けるように私に右腕を差し出した。


「じゃあ、お願いします。」


そう言って私は山中君の右腕に自分の左腕を絡め、私達はそのままホール中央のダンス会場へと歩き出した。





お読みいただきまして、誠に有難う御座います。宜しければブクマ、評価、感想など宜しくお願いします。

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