第47話 秋から冬へ
夏季休暇が終わり、9月から士官学校の2年生後期課程が始まった。士官学校では座学や実科が続き、富士山麓の演習場で士官候補生が二手に分かれた中隊規模の対抗演習が行われた。その後は座学や訓練に加え、卒業前に行われる実科査閲に向けての訓練が加わって忙しさに拍車がかかった。
実科査閲は2日間に渡って行われ、私達が士官学校に入校してから修得した技術等を披露して、学校長を初めとする士官学校や地球連邦軍の教育本部の幹部から査閲を受けるというものだ。
その2日間のために私達は2ヶ月前から寸暇も惜しんで訓練を行った。候補生それぞれが各パート毎に分かれての射撃、装備品取扱い・操作。候補生全員参加の行進間・停止間の小隊操練、行進、点検など。
幸いにして訓練の甲斐もあって、実科査閲は大きなミスも事故も無く、偉い人達の長い話を聞いて成功裏に終わった。因みに今までは一般大学の短期現役予備士官養成課程を履修した予備士官候補生との交流会があったけど、昨年度から中止となっている。
年明けを挟んで10日間の冬季休暇。私達が任官して軍務に就く前の最後の休暇だ。私は例によって横浜の祖父母宅にお世話になり、少年下士官学校の妹はいつも通り一足先に祖父母宅に来ていた。
冬季休暇初日はクリスマスイブ。私と妹は叔母夫婦から夕食に誘われ、山下公園近くのベイサイドホテルに赴いた。無論、私達は士官候補生に下士官候補生。ホテルのレストランで食事出来るようなフォーマルな私服など無いので、二人とも制服である。
クリスマスイブの夕方、ホテルのフロントに軍服姿の女の子二人でいるのは少々ハードルが高かったけど、私は初めて妹の少年下士官学校の制服姿をまじまじと見たのだ。
士官候補生の私は冬の制服。濃紺の上衣にネクタイ、タイトスカート、頭は同色の略帽を被っている。トレンチコートはクロークに預けてある。対して妹の七海は少年下士官学校の冬の制服。オリーブ色の上衣、ネクタイ、タイトスカートに略帽。妹の制服姿はとても似合っていて可愛く、思わず写真を撮りまくった。
そうした私達が珍しいのか、ホテルの従業員や利用客が、チラチラと私達を見ているのがわかる。露骨に見られている訳ではなかったけど、居心地良くは無いので、美奈子叔母さん早く来ないかなぁと思っていると、ホテルの正面玄関から私達の方へ小走りでやって来る姿が見えた。
「「美奈子叔母さん!」」
私達は声を合わせ、手を振って駆け寄った。
「咲耶ちゃん、七海ちゃん!」
私達3人は手を取り、抱き合って再会を喜んだ。
「二人とも制服似合ってるね。少し大人っぽくなったかな。」
「叔母さん、結婚おめでとう。」
「おめでとう、叔母さん。幸せそうで良かった。」
「有難う、二人とも。」
そうしていると、私達に歩み寄った男性が美奈子叔母さんの横に並び立つ。
「美奈ちゃん。そろそろ僕の事も紹介してよ。」
それは誰かと言えば、美奈子叔母さんの旦那さんとなった男性だ。
「あっ、ごめん隆司さん。」
私達はお互いに初めまして、お噂はかねがねなどと挨拶し、簡単な自己紹介をした。その後、立ち話もなんなんで、という事でベイサイドホテル最上階にあるフレンチレストラン「ポリニャック伯夫人」に向かった。
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