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第45話 戻って来ました士官学校

私は今、横須賀士官学校の校庭で眼下に広がる三浦の海を見下ろしている。蒼い海、照りつける日射し、晴れ渡る青空、そして樹々の香りを含んだ海風。これらは宇宙では味わえない、地球でしか感じられないもの。耳を澄ませば微かな潮騒、は流石にここからは聞こえないけど。


この蒼い海で生き物は誕生し、進化を続け、その一部は人類という知的生命体となった。そして、海から陸へ、更に空から宇宙にまで進出し、遂に異星人から地球(ふるさと)を守る為、絶滅を免れる為に戦っている。


私はスペースコロニーで生まれ育った。地球での生活は2年に満たないくらいだけど、その間に見て、聞いて、感じたもの、海、空、山々、森、街、雨、雪、風、雲、それらの全てがかけがえのない私の故郷だと、守るべき私達の故郷だと思える。


お父さん、私はお父さんの敵討ちだけじゃない、お父さんが愛したこの地球を守るために戦うよ。見ていてね、お父さん。


「うひゃあ!」


私が海を眺めながら一人感慨に耽っていると、いきなり誰かに後ろから脇の下をくすぐられた。


「何一人で雰囲気出してるのよ?」


「やめてよエリカ、うひゃひゃひゃ」


「二人とも、何ふざけてるの?そろそろバスの時間だよ。」


真樹が呼んでくれたので、漸くエリカのくすぐり攻撃が止んだ。


「ほら、咲、遅れちゃうから行くよ?」


「誰のせいよ、バカエリカ!」


「バカって言う人がバカなんですぅ。」と言いながら先に走り出したエリカを追って私もむせ返るような大気の中、校門前のバス停へと急いだ。


練習航海と月での小型宇宙船舶操縦訓練を終えて、私達は再び横須賀士官学校に戻って来た。季節は夏、8月に入っていて、宇宙から戻って早々に夏季休暇となったのであった。


その後、私達の班は士官学校からバスで横須賀駅へ行き、そのまま京急線で横浜駅へ向かった。久々に中華街の台南飯店を訪れ、史恵の叔母さんご夫婦と再会して台湾料理を堪能するのである。


台南飯店を出たのは、結局15時を過ぎてしまった。真夏のこの時間はまだまだ日射しも明るいものの、昼とは違い少し夕方に入りかけた感じがしている。


私達は山下公園を少し散策してから、解散してそれぞれの帰省先へと向かう事にしているけど、まだ誰も帰ると言い出さない。

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