第41話 練習艦隊⑤ 友達との再会
私達は一頻り旧交を温めた後で席に着いた。先に来ていた二人は注文した飲み物があったので、私もカフェラテを注文。
「ごめんね。ちゃんとお別れの挨拶も出来なくて。」
ずっと心残りになっていた事。私は二人に黙って故郷を後にしてしまっていた。そんな不義理な真似をした私なのに、二人は会いに来てくれたんだ。
「そんな事気にしないで。咲だって色々と大変だったんだから。」
私がそう言うと、萌はかぶりをかぶる。
「そうだよ。手紙だって書いてくれてるんだし。」
南も腕を組んでうんうんと深く頷いていた。
「二人とも、今日は来てくれて本当にありがとう。」
その後、私達はお互いの近況など様々な事を話しあった。二人の大学生活の事。二人ともまだ彼氏がいない事。二人とも大学で予備士官養成課程を履修した事。中学・高校の友達や先生の話。
私も士官学校に入校してからの話をした。私に逆恨みする男子同期生と決闘した話や山岳訓練中に羆に襲われた話(二人ともちょっと引いてたかな)。彼氏?何それ美味しいの?などなど。
そうして三人で話に花を咲かせていると、萌と南の視線が私を通り越して、その更に向こうを見ている事に気づいた。一体何を見ているのだろう?英霊の野村大尉か?いやいやそうではなくて、誰か私の後ろにいるのかと振り向いてみると、そこには、
「あれ、咲。ここにいたのか?奇遇だなぁ。」
聞き憶えのあるすっとぼけた声。そこには白い地球連邦軍第一種制服(下はスカート)に身を包み、それぞれ腕を組んだり、腰に手を当てたりと、さりげなくキメポーズをとっている真樹、エリカ、ひとみ、史恵の四人が横一列に並んで立っていた。
「げっ!」
私は班員四人の突然の出現に驚きと焦りを禁じ得なかった。萌と南が面会に来てくれている事は四人に話していた。なにせ私自らが喜びのあまりベラベラ喋ってしまっていたから。しかし、まさか四人揃って突撃して来るとは思わなかった。まあ、だからといって驚いてばかりもいられず、取り敢えず私は萌と南に班員達を紹介する事にした。
「あっ、えーと、この四人は私の同期生で同じ班でもある娘達なんだ。こっちからひとみ、真樹、エリカ、史恵だよ。」
「「「「どうも、はじめまして。」」」」
次いで、真樹達にも旧友の二人を紹介した。
「こっちの二人が私の小学校からの親友で萌と南。」
「こちらこそはじめまして、咲がいつもお世話になってます。」
私に紹介された南が真樹達四人にそう挨拶したのだけど、それに何故かひとみが反応する。
「お世話って、お母さんじゃないんだから。」
「まあ、私達は小学生時代から旅行に行ったり、お泊りしたり、家族ぐるみの付き合いだったから、そういう感覚になっちゃうのかな。」
いや、萌もムキにならないで。
またそれに真樹とエリカが挑発するように応じる。
「付き合いが長ければいいってもんじゃないからなぁ。」
「私達5人はこの一年半の間に、一緒に色〜んな苦難を乗り越えて来たしねぇ。」
「それってどういう意味ですか?」
普段は一番穏和な南が立ち上がって真樹を睨み、続いて萌も立ち上がった。
何故か周囲の空気がピリピリとしている。いつの間にか、私を間に挟んで新旧の友達が対峙する構図が出来上がっていた。どっ、どうしてこうなった?
想定外のこの状況。何でこうなるの?何で仲良く出来ないかなぁ?兎に角ピンチ。双方がお互いの出方を窺っている。どちらかがまた何か言い出せば、内容によっては更なる舌戦が繰り広げられそう。
私は双方を見ながらあわあわしてしまったけど、四人の中で史恵だけは何も発言していない事に気づいた。みんな結構気が強いうちらの班でも、史恵はただ一人のハト派なのだった。もう、この状況を無事に治めるにはこれしかない。史恵、頼むぞ!
私はこの不穏な空気を変えるべく、その期待を込めて史恵に視線を送った。四人の一番端でこの一連の出来事を静観していた史恵は、私と目が合うと軽く頷いてみせてくれた。どうやら私のテレパシーは彼女に伝わったようだ。
「まあまあ、せっかく咲が久し振りに地元の友達に会ってるんだから、私達はもう引揚げようよ。えっと、萌さんも南さんも気分を害したならごめんなさい。さっ、行こ行こ。」
史恵はそう言って隣のエリカの背中を押し、撤退を促した。
「ちょっと、ちょっと押さないでよ。」
「咲ー、あとでなー」
ふう、やれやれだぜ。何とか場は治ったけど、後で史恵にはお礼を言わなくっちゃ。
「なんか、ごめんね。後で叱っとくから。」
私が二人に謝ると、南から同情された。
「咲も苦労してるんだね。」
「ははは、まあ、みんないい子達なんだけどね。」
「でも、咲がみんなに大事にされてるみたいだから、ちょっと安心したかな。」
萌〜、何て素直でいい子なんだろう。
真樹達班員四人の突然の乱入で、少し時間を費やしてしまったため、その後はお互いの今後の連絡の取り方などを話し合い、名残惜しかったけど必ずの再会を誓い合って別れた。
「咲、無茶な事はしないで、絶対に生きて帰って来るんだよ。約束だからね。」
「絶対に、絶対に、また三人で会うんだからね。」
私は萌と南をカフェテリアの外まで見送り、徐々に遠去かる二人に手を振って、そして、少し、少しだけ泣いてしまった。
上陸時間が終わって愛鷹に戻った私は、あの四人の中で、実は私の旧友との再会に乗り込み、どんな友達か見てみようと提案したのが史恵だったという驚愕の事実をひとみから聞き、愛らしく可愛らしい史恵の意外な腹黒さを知ったのだった。
史恵、恐ろしい子!
皆さま、お読み下さいまして有難う御座います。この時期、体調管理に留意して御自愛下さい。




