第37話 練習艦隊①
2学年となり、4月はほぼ練習航海の準備に費やされた。即ち、見習い士官としての実務教養と実習である。その内容は、主として航海科や戦術科に関してであり、主計科や専門性のより高い機関科は教養の座学のみであった。
5月なり、いよいよ私達は沖縄の嘉手納宇宙港からシャトルで第3宇宙ステーションに行き、そこで同ステーションに停泊中の練習艦隊に見習い士官として乗り組む。
私達が乗るシャトルは嘉手納宇宙港から飛び立ち、私は窓から高度を上げる程、徐々に青さを増していく空を見る。空は雲を突き抜けて青から群青、そして漆黒へ。やがて、大空は宇宙へと変わった。
「宇宙か。」
私はシャトルの窓から果てしのない漆黒の宇宙空間を見ながら、思わずそう呟いていた。
思えば、実家のあるNー1コロニー群から横須賀の士官学校へ移って既に一年以上が過ぎている。コロニーで育っているからといって宇宙空間に郷愁を感じる事は特には無いけど、再び、そして見習いとはいえ軍人として宇宙に戻って来たという事実には思いも一入だ。
『当機テンプテーションは間も無く第3宇宙ステーションに到着します。ご搭乗の皆様は接舷に備えて席の安全装置を作動させて下さい。』
機内アナウンスが入り、シャトルの窓からも宇宙ステーションが見えて来た。ここからは見えないけど、あの宇宙ステーションには私達がこれから乗組む練習艦隊が停泊しているはずである。
私はこれから始まる三ヶ月に渡る練習航海に思いを馳せながら、席のコントロールパネルを操作して安全装置を作動させ、宇宙ステーションへの接舷に備えた。
地球の周回を回る各宇宙ステーションには、地球連邦軍が管轄し、管理・運用する施設が存在する。接舷したシャトルから上陸した私達士官候補生は、割り当てられた艦へ乗り込むため、第3宇宙ステーションの軍港にて練習艦隊の将兵と共に整列、練習艦隊司令の旗艦愛鷹への乗艦を待っている。
咳き一つ聞こえない静寂の中、やがてピィーという号笛が響き、練習艦隊司令である磯山少将が現れた。磯山少将は整列する将兵の間を進み、やがて愛鷹のタラップ前で立ち止まると、整列する将兵(私達も含まれる)を振り返る。
『気ぃを〜付けぇ。練習艦隊司令にぃ、かしらぁぁ中!』
磯山少将は、号令によりかしら中の敬礼をする将兵に挙手の敬礼で答礼すると、踵を返してそのまま練習艦隊司令部の幹部と共に愛鷹に乗艦した。
これから私達士官候補生も見習い士官として、それぞれ割り当てられた艦に乗艦する。いよいよ練習航海で宇宙の海に出航だ。
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