第36話 2学年の始まり
4月、私達は無事に2学年に進級する事が出来た。幸いな事に同期生の中から退校者が出る事も無く、山岳訓練で羆に襲われて負傷した松本君も怪我が治って比較的早く復帰する事が出た。
2学年になるとカリキュラムの殆どが実習に充てられ、各兵科の部隊で見習い士官として軍務に就く。その後は宇宙に上がり、練習艦隊に乗り込んで練習航海に出航するのだ。
練習航海では地球圏内の月面基地や軌道基地などに寄港しながら訓練を行う。以前は火星まで行っていたという事だったけど、今は戦時下で、且つ現在の火星が敵の占領下にある事から、練習航海は地球圏内に限られている。
少年下士官学校に在学する妹の七海も、危なげなく2学年に進級している。なんでも、妹は学年でも上位の成績であるらしく、教官から卒業後は一年間実務に就いてからの士官学校入校を薦められているそうだ。だけど本人は、卒業後はそのまま機甲科の戦車部隊への配置を希望している。まあ、私もそうだけど、妹は父の敵討ちが目的で少年下士官学校入校しているのであり、地球連邦軍で出世したいわけじゃないから、そこは譲れないところだと思う。
母とは一時的に連絡が途絶して心配したけど、再び連絡が取れるようになり近況が伝わってきた。何と、母は木星駐留艦隊の空母赤城で戦闘小隊の小隊長となっていた。
木星は戦略的にも最重要な資源地帯であり、今やこの戦争における最前線である。母が予備役中尉の元戦闘機パイロットだから即戦力として引っ張られたのだろうか?私と妹がまだ学生で戦う事が出来無いのに対し、母はもう前線に出て戦っている事が羨ましくもあり、悔しくもありつつ、でもやはり母の身がとても心配だなのだった。
そして、2211年4月現在の戦況。アムロイ軍が通商破壊戦に移行し、多くの艦隊戦力が輸送船団の護衛に当てられている。そのため地球連邦軍は、今やアムロイの本拠地となっている土星宙域に対して大規模な攻勢に出られず、依然として木星を最前線とした膠着状態が続いている。
こうした膠着状態を打破し、且つ国民及び地球連邦軍将兵の士気を高揚させるため、大規模な戦力の増強とアムロイ軍に占領されている火星の奪還作戦が発表された。
このような状況の中で私達2学年の士官候補生は、巡洋艦愛鷹を旗艦とし、練習巡洋艦香取、同鹿島からなる練習艦隊に見習い士官として乗り組み、訓練航海に出航する。
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