第28話 山岳訓練③
私達の班は、真樹が見つけて素早く確保した大きく張り出した岩の下で野営をしていた。雨が凌げるだけでも実に有難い。そしてミリタリー関係の知識が豊富なエリカの発案で、5人が団子のように一塊に密着して互いの体温で暖をとっている。
私「こうしていると暖かいけど、どこから仕入れたネタなの?」
エリカ「結構いいでしょ?これはねぇ、ロバート・ハインラインの『宇宙の戦士』っていう古典SF小説で主人公のジョニーが新兵訓練でこうやって暖をとってたの。」
真樹「やっぱりあれか。でもあれって原作では素っ裸の男同士でやるんだよね、確か。」
史恵「やだぁ、全裸で?男同士で?」
ひとみ「史、飽くまで小説だからね?でも、野生動物もやるよね。日本猿とか羊とか。」
5人が固まっているとはいえ、塊のウチと外ではまた暖かさが違う。内側は暖かいけど外側は寒いのだ。私達は30分毎に交替で位置を換えて眠気を覚ましつつ互いの体温で暖をとった。
エリカ「真樹!眠っちゃダメだよ。」
真樹「う〜ん、ちょっとだけ。」
ひとみ「真樹、低体温になるから、本当に。」
真樹「わかったから、ちょっと咲?脇くすぐらないでよ。」
私「言うこと聞かない子はこうしてやる。」
史恵「ちょっと咲、耳元で喋らないでよ。何かゾクゾクするよ。」
最初のうちは喋ったり、尻取りしたりしていた私達だったけど、徐々に疲れが出て眠気が勝り、皆ウトウト舟を漕ぐようになっていた。
それからどれくらいの時間が経過したのか。私は誰かの舟を漕ぐ頭突きで眼が覚めた。ハッとして辺りを見渡すと雨は既に止んでいたものの、辺り一面が白い霧に覆われていた。一瞬、私はまた野村大尉が作り出した空間に居るのかと思ったけれど、頬に感じる空気の冷たさと湿気、吐く息の白さで、これが現実だと理解した。
班のみんなを見ると、やはり全員眠っていた。この寒さの中で眠っては身体に悪いので起こす事にした。
「ねえ、みんな起きて、雨止んだよ。ほら、こんな所で眠ったら身体に良くないよ。」
ひとみはすぐに目を覚ましたけど、他の3人はまだ眠ったまま。私は取り敢えず真樹の両肩を掴んで揺すり、エリカの頬を軽く叩き、史恵の鼻を摘んでみた。
「「「う〜ん、何すんのよ〜!」」」
3人の声がハモったのは流石だと思う。
班のみんなの無事を確認すると、ホッとして溜息が出た。そして、私達が高カロリーの携行食を水筒の水で流し込んでいると、霧の中から何やら騒がしい声が聞こえてきたのである。
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