第26話 山岳訓練①
季節は秋。夏季休暇が遠い過去となり、話題にも上らなくなった10月。今、私達士官候補生は北海道は大雪山系の演習場で山岳訓練に臨んでいる。
「…凄い。」
北海道の大自然に目を奪われる。高く、青く、澄みきった大空。広大な土地。見上げる山々には鮮やかな紅葉。どれも私にとって初めて目にする光景だ。
私の育ったスペースコロニーにも山もあれば、谷も川も湖もある。流石に海は無いけど(そこは"宇宙の海は〜♪"って事で)。それに、様々な地球の自然環境を再現した自然公園コロニーなんてものもあるけど、どんなに上手く自然を再現したって本物には敵わない。私の前に高く聳えている峰々は、私の心に強く畏怖の念を抱かせている。
この山岳訓練は、山岳地帯を小隊規模の部隊で終着点まで行軍するもの。それにより小規模部隊運用や隊員間の連携の向上を図る事を目的としている。本格的な登山や行軍の知識や技術は必要てしておらず、飽くまでも小隊単位で決められたコースを行軍し、規定時間内に終着地点まで到着すれば良い、とされている。レンジャー課程や特殊部隊研修などとは一線を画した、謂わば士官候補生や新兵などを対象とした入門コースといった位置付けだ。
とは言え、この訓練では位置や気象に関する情報が提供されないため、私達はこの訓練に際して事前に数時間に及ぶ関連座学を受講している。昔ながらの地図とコンパスと観天望気により行軍するためだ。
そうした訳で、私達は1クラスを1小隊とした編成で、野戦服姿にブッシュハットを被り、模擬小銃を担いで背嚢を背負い、演習場の澄み渡る秋空の下、軍靴の足音も勇ましく大雪山系の山道を進み始めたのであった。
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