第19話 夏が来て
梅雨が明けて、季節は夏本番。幸いな事に、横須賀士官学校は海沿いの高台にあるので、海風が心地よく、三浦半島の夏はコロニー育ちの私が想像していたよりもジメジメとはしていなかった。しかし私達士官候補生は、横須賀の校舎にばかりいる訳ではなく、富士山の麓の演習場などにも訓練で赴いたりするため、やはり日本列島の湿度の高い夏からは逃れられなかった。
そうして今年も7月24日を迎えた。父がCー1コロニー群を守って戦死してから早くも1年が過ぎたのだ。そして戦時である中、戦意高揚の為もあって地球連邦軍主催の今次大戦戦没者追悼式が行われた。私にも出席依頼があったけど、学業に専念したいからと断った。今は追悼式とか、一周忌とか、そういう事よりも、軍人になるべく努力する方を優先させたかったから。それに、また特待生だの何だのと言われたくないしね。
母と妹とはあれ以来手紙の遣り取りを続けている。二人ともやはり追悼式への出席は断ったそうだ。母は、詳細は不明だけど、作戦行動中なのでそもそも出席は出来ず、妹は私と同じ理由で断ったそう。
やる事、やるべき事、やらなければならない事があるという事は、今の私にとって実に都合がいい。なぜならば、それに集中している限り、余計な事は考えなくて済むから。
今の私はひたすら進むべきだと思っている。士官学校で実力を付け、そして戦場で敵を倒し、父の敵を討つのだ。それが終わるまで、私は決して振り向かない。
お父さん。お父さんは私と七海がお父さんの敵討ちする事を望んでいないかもしれないけど、私も七海も、今はそれが私達の全てなんだ。戦って、戦って、戦い抜いて、いつかこの戦争が終わったら、きっと胸を張ってお父さんに報告に行くからね。それまでは前だけ向いて歩きます。
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