第166話 彗星
旌旗を翻し、敵の指揮艦へと急降下する私達ブラックチューリップ小隊。
友軍の残存戦力は思っていたよりも多く、敵指揮艦の周囲では敵の防空駆逐艦とも熾烈な戦闘が繰り広げられている。
「お前さんの呼びかけに応じて随分と集まったようだな」
野村大尉の声が聞こえる。
「急降下爆撃は俺の得意としたところだ。俺達が付いているからな」
俺達?
「あぁ、外を見てみな」
野村大尉に促され視線を右に転じてみると、そこには光に縁取られた飛行機がXFAーv3にに並行して飛んでいた。
その飛行機は全体が濃い緑色に、下部が灰色に塗装され、機体前部には高速回転するプロペラ。そのすぐ後ろには特徴的な排気管が幾つもコックピットまで横並びに続いている。
「彗星だ」
彗星って、確か帝国海軍の艦爆だよね?
「大戦中に俺が乗っていた機体だ」
更に彗星を見続けていると、彗星のキャノピーが開く。そしてパイロット姿を見せると、その口元を覆っていた白いマフラーを緩めて顔を出し、左手の親指を立てて私にニカっと笑って見せた。
「俺の戦友だ。大方、靖国英霊飛行士倶楽部が俺だけじゃ心許ないってんで飛ばして来たんだろうぜ。左も見てみな」
再び野村大尉に促され、今度は左側を見てみる。と、そこには銀色に輝いて飛ぶ飛行機。その機体からは2本の脚が出ていて、
「九九式艦爆だ。全く、俺も舐められたもんだぜ。2機も飛ばして来やがった。それじゃあ加勢も来たところで一気に行くぞ、お前さん!」
「はい、大尉!」
私の呼びかけに馳せ参じてくれた生き残りの友軍機達。彼等の援護のお陰で急降下を妨げる敵は牽制されて近付けず、或いは物理的に排除されている。標的たる敵指揮艦は目前に大きく迫る。
(もうすぐだ。次の瞬間には陽電子ビームを弱点にピンポイントで叩き込む。それで終わりだ)
と、その時、敵指揮艦を直掩する小型飛翔体群が現れて私達を迎撃してきた。
敵小型飛翔体が一体何機あるのかわからない。だけど、多数の小型飛翔体がパルスレーザーを連射しながらこちらへ群がって来ている。そして編隊の先頭に位置して露払いをしていたパティの機体に攻撃が集中した。
パティの機体は忽ち複数箇所が被弾。しかし、パティは被弾しながらも速度を緩めずパルスレーザーで敵小型飛翔体を撃墜していった。
「パティ、大丈夫?」
私が叫ぶように安否を問うと、パティから返信が届く。
「サク、この機体、もう限界みたい。ごめん、最後まで付き合えなくて」
パティがそう言うと彼女の機体は左右にぶれ始め、そして小爆発を起こしながら編隊から離れて行った。
「パティ!!」
パティ、私のバディ。初めて会った時からずっと一緒で、いつも私を支えてくれた戦友で親友。
「うぅ、ぐぅっ」
私は叫び出したい衝動を奥歯を噛み締めて押さえ込んだ。ここで取り乱して攻撃を失敗させてはいけない。
すると、すかさず私のXFAーv3の後方を守っていた真樹とエリカの機体がパルスレーザーを連射しつつ、尚も遅い来る敵小型飛翔体を打ち落としながら並んで私の前に出た。彼女達も私の盾になるつもりなのだ。
「サク、泣くのも喚くのも後で3人でしよう」
「そうだよ、サク。全てはこの一撃にかかって、キャア!」
エリカの機体は私の盾となり、敵の連射を受けて被弾、機体は横向きに回転しながら戦列から離れて行く。
「「エリカ!!」」
私と真樹の叫びが重なる。
今は何も出来ない。エリカが言いかけた言葉通り、この一撃を撃つ事だけしか。
『敵艦が当機の陽電子ビーム砲有効射程内に入りました』
ビクトルから報告が入った。私は敵指揮艦の攻撃ポイントをレーダー捕捉すると、操縦桿を握る手に力を込め、陽電子ビーム砲の発射にかかる。
コックピット内の全方位モニターの正面に映し出された敵艦、その艦橋後方部分が赤くマーキングされていた。
「お前はお父さんの敵、戦友の敵、そして、地球とアムロイの未来の敵だ。沈めー!!」
私が操縦桿のトリガーを引くと、XFAーv3のコックピット後方に左右2門ある陽電子ビーム砲が眩く輝き、そしてそこから二筋の陽電子ビームが敵指揮艦、その艦橋後方へと放たれた。
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それでは次話もお楽しみに!




