第165 ブラックチューリップの旗の下に
「ビクトル、地球連邦軍の共通周波数で回線を開いて」
『了解』
私がビクトルに回線を開かせると、コックピットの全方位モニターに通信可能の表示が映し出された。これでいつでもこの宙域に残存している友軍機の全てに向けてこちらのメッセージを送る事が出来る。
すーはーすーはー、深呼吸を2回して少し気分が落ち着く。私はヘルメット内蔵のマイクから友軍機に向けてメッセージ、いや、お願いを発信する。
「まだこの宙域にいる全地球連邦軍の皆さん、私はブラックチューリップ小隊の小隊長、朝倉咲耶中尉です。私の機体X FAーv3には2門の陽電子ビーム砲が装備されています。この2門が現宙域で地球連邦軍が有する敵指揮艦を破壊し得る唯一の兵器です。私達ブラックチューリップ小隊はこれよりこの陽電子ビーム砲で敵艦への攻撃を敢行します。ですが射程距離が短いため肉薄しなければなりません。しかも有効な射撃は一度しか出来ません。皆さんの助けが必要です。私達を援護してください。私達は敵艦上空からレーザーフラッグを照射しつつ突っ込みます。それでは地球人類の未来のために」
よし、これでいい。
「サク、上出来だよ」
エリカの言った「いい考え」とは、地球連邦軍共通周波数で私達の攻撃をこの宙域に残存している全ての友軍に知らしめて巻き込む、というもの。
この宙域にまだどれだけの友軍が残っているのかわからない。残存する誰もが撤退命令が出るまで必死に戦っているはずだ。自分が生き残る事で精一杯な中、果たして何機が協力してくれるだろう。しかもこれは本来の作戦には無い事だ。
私達ブラックチューリップ小隊は戦闘宙域を上方へと抜けると攻撃準備を整える。
「ビクトル、機体の全装甲と後部の翼を分離して」
『了解』
XFAーv3は操縦と動力系など機体の主構造体以外の部分は脱着可能な構造になっている。この構造を利用して装甲などを分離し、機体が軽くなった分のエネルギーを陽電子ビーム砲へ可能な限り装填する。
軽い振動と共に機体から装甲などが切り離されて行く。ビクトルの計算ではこれにより陽電子ビーム砲へのエネルギー充填を30%程増やす事が可能だ。
「ブラックチューリップリーダーから小隊各機、機体装甲などの分離完了。みんなに背中を預けるからね」
機体から装甲を切り離したら当然の事、XFAーv3は敵からの攻撃に対して脆弱になり、その分小隊のみんなに守って貰わなくてはならなくなる。
「もっちのろーん、任せてよサク」
「大船に乗ったつもりでいて」
エリカと真樹が後を守ってくれる
「前方は私に任せて、サク」
「有難うパティ。それじゃみんな、フラッグをお願い」
攻撃敢行と援護のお願いを友軍機に知らせる事は出来たけど、どこからどのように攻撃するかといった具体的な内容までは知らせる事は出来なかった。ならばと言う事で攻撃に際してレーザーフラッグを掲げる事にした。
そんなことをしたら敵にこちらの攻撃意図と攻撃方法がバレてしまう恐れは十分にある。だけど、今はもう小細工している時間も手間も惜しいのだ。
小隊は私のXFAーv3を中心に、前方をパティが、後方を真樹とエリカが配置に着く正三角形の編隊を組む。
「全機レーザーフラッグ照射」
「「「了解」」」
私を囲む前後3機がそれぞれの機体背部から大きく青白い光の旗を虚空に掲げる。戦空に私達の旌旗が翻った。
「行くよXFAーv3、私達しか出来ない戦いに」
『行こうマスター、僕達にしか出来ない戦いに』
XFAーv3と息を合わせると私は攻撃命令を発した。
「ブラックチューリップ小隊、発進!」
「「「了解!」」」
青白い光の旌旗をたなびかせ、私達は敵指揮艦へ向けて降下を開始。迎え撃たんとする敵の小型飛翔体群を撃ち落としながらその速度を上げて行く。
『敵指揮艦を確認』
ビクトルが機体の光学カメラで捉えた映像をモニターに映し出す。それを次第に拡大していくと敵指揮艦の周囲では多数の友軍機が戦闘を繰り広げていた。
『マスター、当機へ友軍から多数の通信が着ています』
「聞かせて」
『了解』
するとヘルメットのスピーカーから聞き覚えのある女性の声が聞こえてきた。
「こちら空母赤城戦闘航空大隊、朝倉美里少佐。これより貴隊を援護します」
朝倉美里って お母さん!
「同じく本郷少佐 これに続く」
「空母ホーネットのジェリルオコーナー、しょーがねーから援護してやる」
「サク、マーベルよ。周りは任せてドーンと行きなさい!」
「朝倉さん、山中です。絶対にあなたを守ります」
「木村だ。借りはここで必ず返す」
気が付けば小隊の周りは多くの FAーv3が六式艦上戦闘機が囲む様に飛行していた。
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それでは次話もお楽しみに!




