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第161話 蛇の王

そのレーザーフラッグは戦闘宙域に颯爽と翻る。白く輝く縁取りの中には冠のような鶏冠を頭に生やしとぐろを巻いて鎌首をもたげている大蛇。それは伝説の蛇の王、バジリスク だ。


『前方のレーザーフラッグは現場総指揮官機の物です』


ビクトルがその旌旗の主を教えてくれた。


『前方総指揮官機より発光信号あり』


「読んでみて」


『了解。"全機我ニ続ケ"以上です』


敵の指揮艦への攻撃を行うFAーv3による攻撃隊。その現場での指揮を執るのは第1独立挺進艦隊第1戦闘航空大隊の大隊長。彼は参謀本部の想定以上の攻撃力であったアムロイ軍の空間近接防御システムによる迎撃により崩壊しかけている戦力と作戦を立て直そうとしているのだろう。


こんな事は作戦計画には無い。あのように戦闘真っ只中の宙域で殊更目立つレーザーフラッグを振るうなんて敵に狙って下さいと言っているようなもの。


だけど、総指揮官機はレーザーフラッグを振って残存戦力を再結集させる灯火とし、更には自らを犠牲にしてその先にある敵指揮艦への道標としたのだ。


「こちらブラックチューリップリーダー、みんな見てるよね?あの旗の向こうに標的がある。小隊はあの旗を目指して全力で行くよ!」


「「「了解!」」」


と、やはり攻撃隊の先頭に敵レーザー攻撃が集中。それでもバジリスクリーダーの機体は白く輝くレーザーフラッグを棚引かせて飛び続けるも、遂にレーザービームが直撃し、火球となって消滅した。


私はレーザービームの直撃を受けたバジリスクリーダーを見て思わず強く奥歯を噛み締め、何かを叫びたい衝動を無理矢理抑え込んだ。


と、攻撃隊の先頭群でまた別の機体がレーザーフラッグを翻す。真っ白に縁取られた輪郭の中に咲く一輪の白い花はプルメリア。あれは間違える事無いマーベル団長の旗だ。


マーベル団長が何故にレーザーフラッグを翻すに至ったのかはわからない。単に最先頭を飛んでいたからなのか?それとも既にマーベル団長が残存戦力の中でバジリスク リーダーに次ぐ最先任となっしまっていたからなのか?


そうした仔細はどうあれ、失われた旗に代わる新たな戦旗を目指してブラックチューリップ小隊は戦闘宙域を進むのみだ。


〜・〜・〜


攻撃隊の周囲では護衛の六式艦戦と敵B(ブラボー)級艦戦のドッグファイトが続き、攻撃隊は断続的な敵の空間近接防御システムのレーザービームにも晒されている。それでもバジリスクリーダーのレーザーフラッグにより道は開けた。友軍機は減り続けているけど、残存戦力の再結集はなされた。


だけど、そこへ護衛戦闘機群を突破した多数の敵機が攻撃隊へと襲いかかってきたのだ。このままでは再結集なされたばかりの攻撃隊は七面鳥撃ちよろしく簡単に狙い撃ちされてしまう。


敵の迎撃が可能なのは位置的に攻撃隊の後方であるブラックチューリップ小隊だけだろう。野村大尉には攻撃隊は攻撃に集中しろと叱られたばかりだけど、ここは独断で臨機に対応するしかない。


「ブラックチューリップリーダーから小隊各機へ。敵機が攻撃隊に迫りつつあり。小隊は編隊を離脱しこれを撃滅する。格闘戦用意!」


「「「了解!」」」


私は機首を上空に向けて上昇させると、攻撃隊へ急降下して来る敵戦闘機群と対峙する。


この作戦で私達攻撃隊は対艦ミサイルを多く積載するため空対空ミサイルを装備していない。そのため格闘戦ではパルスレーザーを使うしかない。


『上空の敵機より高熱原飛翔体の発射を確認』


ミサイルの撃破と敵機の撃墜を同時にする事は出来ない。


「パティは私とミサイルを撃ち落として。真樹とエリカは敵機をお願い」


「「「了解」」」


私の下命で小隊は2機ずつの分隊に分かれ、先行していた私とパティでミサイルを迎撃して撃ち落とす。


敵の空対空ミサイルは96発。まだ発射されたばかりで十分拡散していないので、やるなら今しか無い。


私は操縦桿のトリガーに指をかけると、相対的に急接近するミサイル群に向けてパルスレーザーを撃ち放った。


私の射撃開始と同期してパティの2番機からも夥しいパルスレーザーが打ち出される。密集したミサイル群は私とパティのパルスレーザーにより撃ち落とされ、その爆発により連鎖的に誘爆していった。


私達は尚も接近しつつある敵ミサイル群の第2波にパルスレーザーを撃ち込み、すれ違うまでにほぼ全弾の撃墜に成功した。


「パティ、真樹とエリカに合流しよう」


「そうだね。急がないと」


私達の機体は多勢に無勢で苦戦している真樹とエリカの元へ駆け付けるべくエンジンを全開で戦闘宙域へ突っ込む。


真樹とエリカは流石に3倍の6機を相手に互角な戦いは出来ず、専ら戦闘宙域を駆け回って敵機の注意を引きつける事に専念していた。


私とパティは戦闘宙域に下方から急接近すると、敵機をレーダー捕捉してパルスレーザーを発射。敵機は忽ち多数のパルスレーザーを全身に浴びて爆散した。パティも敵機を1機撃墜。これで戦力比は4対4と対等になったけど、こっちはミサイル無しとはいえ高出力エンジンと高い格闘能力を有する最新鋭のFAーv3にパイロットは百戦錬磨のエースだ。無人操縦のB級艦上戦闘機なんかにみすみす負ける事は無い。


〜・〜・〜


その後、ブラックチューリップ小隊は1対1による格闘戦で4機の敵機を撃墜した。


ブラックチューリップ小隊は先行した攻撃隊本隊に追いつくべく、更に戦闘宙域を駆ける。攻撃隊の総指揮官機バジリスクリーダーはその身を犠牲にして攻撃隊の残った戦力に征くべき道を示した。彼に代わって指揮を執るのは我らが中隊長マーベル・ホワイト大尉。今も激減した攻撃隊を率いて標的たる敵指揮艦へ向かっている筈だ。


「しかし、随分と離れちゃったね」


エリカから通信が入る。これは小隊内専用通信ネットワークを使っている。


「それはしょうがないよ。うちらはもしかしたら第2波攻撃には間に合わないかもだけど、あそこで敵にミサイル発射されて乱入されたりしたら、下手すりゃ攻撃隊は全滅してだかもしれないんだからさ」


パティの言った通り、私達は敵襲に臨機に応変して敵機と敵機によるミサイル攻撃を阻止する事が出来た。だけどその代償として攻撃隊本隊からは随分と引き離されてしまっていた。


「ねぇ、サク。攻撃隊ってどれだけ残ってると思う?」


「それはわからないよ。けどさっきまでの感じだと最悪1/3くらいかな」


真樹の問いに答えつつ、4百機以上あった戦力が本当に1/3に減っていたら戦力としては全滅だなと思っていた。でも、それでも前に進まなきゃいけない。私達にまだ戦う(すべ)がある限りは。


既に敵の空間近接防御システムによるレーザービーム攻撃は止んでいた。おそらくは、敵が自軍への損害を恐れて攻撃隊へのレーザービーム攻撃を躊躇しているのだろう。それほど攻撃隊は敵の本陣近くまで攻め込んでいると言えた。


ブラックチューリップ小隊は奇妙な静寂が支配する戦闘宙域をひたすら標的たる敵指揮艦を撃沈破するため前へ、前へと進んでいた。

いつも『朝倉家の戦争』をお読み頂きまして、誠に有難う御座います。宜しければブクマ登録、評価、感想など宜しくお願いします。


それでは次話もお楽しみに!


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