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第160 軽騎兵旅団のように進め

『上空より多数の高エネルギー反応を確認。回避しますか、マスター?』


やはり来たか。いくら護衛戦闘機隊が展開しているといっても遠距離(艦載機から見て)から死角無く攻撃出来るのが空間近接防御システムの強みだ。有り難く無い事に私達はそれを自らでもって体験している。


「進路、速度このまま。大型対艦ミサイル全弾発射」


私はビクトルへ下命すると同時に機体後部の"翼"に装備された8機のミサイルポッドから大型対艦ミサイルの全弾を発射した。


ミサイルを発射したミサイルポッドは直ちに機体から分離された。コックピットの全方位モニターには友軍機から機を同じく発射された無数の大型対艦ミサイルが軌跡を描いて敵艦隊に向かって飛び行く映像か映し出されている。


と、そこへ上空から強烈な光の矢が攻撃隊の編隊に降り注ぐ。


「プルメリアリーダーから中隊各機、進路そのまま、最大全速を維持」


中隊長のマーベル団長から途切れ途切れの通信が入った。敵の空間近接防御システムからの攻撃で味方は混乱状態にあるようだった。


戦闘開始と共にバジリスクリーダーによる指揮権は現場にて各戦闘航空大隊長へ移譲されていくけれど、大隊長からの下命は全く無い。中隊長が現場の指揮を執っているという事は、既に大隊長は戦死しているのかもしれない。


その間も敵の空間近接防御システムからのレーザービームは味方へと降り注ぎ、その度に複数の火球が輝いては消えてゆく。あの輝きの一つ一つが友軍機の爆発による物で、一つ一つが友軍パイロットの死だ。


『間も無く大型対艦ミサイルの弾着時間です』


ビクトルが弾着時間をしらせる。しかし、全方位モニターの全面が突如一瞬にして真っ白な光に覆われた。それはモニターに調光が施されていても目が眩みそうな程だ。


(何⁈)


『大型対艦ミサイル、着弾前の爆発を確認。敵からの何らかの迎撃を受けたものと思われます』


恐らくら、さっき発射した大型対艦ミサイルは敵の空間近接防御システムにより撃墜されてしまったのだ。


中隊長の下命にあった通りに最大戦速を維持して進む。流石の空間近接防御システムも艦載機のような高速で飛ぶ小型目標物をピンポイントで狙い撃ちする事は出来ない。敵はこちらの速度と進路から予定位置を推測してレーザーを撃ち込むか、大雑把なこちらの位置にランダムに撃ち込むしかない。兎に角、止まっていてはいずれ全滅は必至だ。


『前方より多数の敵艦載機群を確認』


モニターの一面にレーダー画面と機体の光学カメラからの映像が映る。ほほう、これは、これは懐かしのB級艦上戦闘機じゃないですか。キミ等は船団護衛戦で散々私の邪魔をしてくれたよね。私達の行手を遮ろうというのなら、一丁相手してやろうじゃないの!


「ブラックチューリップリーダーから小隊各機、接近する敵艦載機群に対し格闘戦用意!」


「「「了解!」」」


パティ、真樹、エリカから元気な返信が入る。よし、やってやる。空間近接防御システムの脅威はあるけど、目の前の邪魔者を排除しなくちゃ。


私が敵艦載機をレーダー捕捉すると、敵機は突如として爆散し、次々と火球となって消えていった。そして私達の前方に上空から友軍の六式艦戦が入り込んで来たのだ。私達の前に着いた4機の六式艦戦は第1航空艦隊の艦載機だ。まさか前に絡んで来た連中じゃないよね?


彼等は「おい、やってやったぜ?」とばかりに軽く翼を振って見せた。むむ、格闘戦に腕が鳴っていたのに。


「おい、お前さんの任務は敵指揮艦の撃沈破だ。攻撃機で格闘戦なんて余計な事を考えるんじゃない!護衛の戦闘機に感謝しろよ?」


英霊の野村大尉から嗜められてしまった。


「そうですね。ちょっと熱くなってしまいました」


六式艦戦の奇襲が間に合わなかったら、どの道格闘戦に入るしかなかったけどね。


私は再び部下達(みんな)に敵艦載機との格闘戦は護衛の六式艦戦に任せて敵艦隊への突撃に専念するよう命じた。


護衛の六式艦戦と敵B級艦上戦闘機との格闘戦は至る所で始まっていた。敵味方入り混じっての乱戦となっていたけど、敵の空間近接防御システムが放つ高出力レーザービームは容赦無く戦場にあらゆる方向から降り注ぎ、敵味方の区別無く撃墜している。敵機は無人機なのだろう。


今の時点で攻撃隊のFAーv3がどれくらい生き残っているのか私には知る由もない。私にわかるのはブラックチューリップ小隊が4機とも健在であるという事だけ。


もちろん、友軍が全滅しているなんて思わないけど、既に第1波の大型対艦ミサイルの飽和攻撃が迎撃されて阻止されてしまっている。その上敵の空間近接防御システムによる攻撃と敵艦載機群の迎撃で攻撃隊のFAーv3はその数を大きく減らしてしまっている。


そして、大隊長どころか中隊長とも連絡が付かず、今や攻撃隊の指揮系統もズタズタだ。


端的に言って、既に作戦は失敗しつつある。しかし、どこからも撤退命令は出ていない以上、私達はイギリス軽騎兵旅団のように進むしかない。大型対艦ミサイルは撃ち尽くしたけど、まだ通常装備の対艦ミサイルはまるっと残っているのだから。


と、その時、モニターの前面に白く輝く一点の光が映し出された。私がその光点を拡大すると、それは友軍のFAーv3から発せられたレーザーフラッグだった。


いつも『朝倉家の戦争』をお読み頂きまして、誠に有難う御座います。宜しければブクマ登録、評価、感想など宜しくお願いします。


それでは次話もお楽しみに!


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