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第16話 決闘

士官学校において、課業終了後から夕食迄の1時間は、日直などの特別な任務が無い限りは大多数の士官候補生にとり、つかの間の息が抜ける貴重な時間となる。しかし、今日は格技棟で"特待生" である私と木村候補生とが一連の噂等を巡って決闘すると聞きつけた候補生達が、貴重な安息時間を犠牲にしてギャラリーとして格技棟に集まっている。


私と木村は道着にプロテクター姿で、道場の中央で対峙している。周囲ではギャラリーの候補生達が固唾を呑んで決闘の始まりを待っている。別段、彼等はどちらの応援をするという訳ではなさそうで、単純に興味が引かれたから、或いは面白そうだから、と見に来たようだった。騒がしくしないところは流石士官候補生という事だろうか。


会場である格技棟には、立会人としてクラスの担当助教である西村助教が来ている。西村助教は自分のクラスで発生した問題が、候補生同士の決闘騒ぎにまで拡大した事が面白くないのか、随分と渋い表情で腕を組んで立っている。私は今までに何度も相談しているわけだけど、自分達で解決しろと言うからそうしてます。


「決闘の審判は自分が務めさせてもらう。ルールはどちらかが負けを認めるか、決闘が続行不能となるまでとする。続行不能の判断は審判が行うものとする。急所への攻撃は厳禁とし、行った者の負けとする。」


審判役の北條隊長からルールの説明があり、私は了解の意味で目礼した。


「ではお互いに礼、構え、始め!」


北條隊長により決闘の開始が宣言され、決闘が始まった。



私は長々と戦うつもりはない。この多勢のギャラリーの前、短時間で出来るだけ惨たらしく木村を下す。それで小木村どもを牽制し、この問題は終わるだろう。


私と木村はお互いに距離を詰めると、木村が私の顔面を狙って左ストレートを繰り出して来た。私は木村の攻撃を左に半身を切りつつバックステップで距離を離し、且つ木村の左ストレートを右腕で捌く。そして右の横蹴りを木村の腹部に放った。


「ウグッ」


木村は私の横蹴りを腹部に食らってくぐもった声を出し、前屈みになった。私はすかさず両腕で木村の頭部を押さえつけ、右膝蹴りを連続で蹴り込んだ。勿論フェイスガードがあるので、それによって負傷はしない。だけど、その中身はかなりの衝撃を受けているはずだ。


そして私は木村の頭部に何度も膝蹴りを繰り返し、木村は顔面に膝蹴りを受け続けた結果、頭部が揺さぶられて動けなくなっていた。私は一旦木村の頭部ロックを解除すると、木村に足払いをかけて床上に倒し、右足で木村の腹部を踏み抜いた。プロテクターがあるから大丈夫、だと思う。


「ゴフッ」


木村は妙な呻き声を上げたが、私は攻撃の手を緩めず、更に木村の上に馬乗りになって両膝で木村の両腕を固定し、両拳で木村の顔面に殴打を加え続けた。フェイスガードがあるから大丈夫、多分。


「双方、別れ!」


チッ、しょうがない。審判の北條隊長が中断させたため、私は木村の顔面への殴打を止め、立ち上がって元の位置へ戻った。


北條隊長は倒れたままの木村の意識を確認し、木村に決闘の続行について尋ねたようだった。木村はノロノロと立ち上がると頭をブルブルと振り、ふらふらしながらも元の位置に戻った。どうも決闘を続けるらしい。


私と木村は再び対峙すると、北條隊長が決闘の再開を告げた。


木村は頭部を連打された影響で動きが鈍い。私は距離を詰め、右足で木村の下顎を蹴り上げると、木村はそのまま後方に倒れ、そのまま動かなくなった。


勝敗は決した。北條隊長はこれをもって私の勝利を宣言し、この決闘は終わった。





お読みくださって有難う御座います。令和2年が皆様にとって良い年となりますように。

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