第158話 告白
「本艦はこれより作戦宙域に進入する。総員、第1戦闘配置に就け。繰返す、本艦は」
空母海鳳の艦内に拡声が響いた。遂に私達航空打撃任務群の作戦行動が開始されるのだ。
「良いか、俺達は必ずや敵の指揮艦を沈め、敵の本拠地への回廊を確保しなければならないのだ。この作戦の要は俺達である事を肝に銘じろ。この戦争を次世代に残してはならない。我々の勝利で終わらせるのだ。
皆、最善を尽くせ!以上だ。この後は各自速やかに出撃準備に取り掛かれ。敬礼省略、別れっ!」
私達航空隊のパイロットはそれぞれの大隊長に航空機格納庫に集められ、出撃を前に訓示を受けていた。
大隊長の言った事に特別目新しい物は無い。もう皆はとっくに肝に銘じている。だけど「この戦争を次世代に残してはならない」という部分、そこに大隊長のこの作戦における覚悟を見たように思えた。
〜・〜・〜
訓示の後、更に中隊長のマーベル団長からも声がかかった。
「みんな、大隊長はああ言ったけど大仰に考える必要はないから。私達は行って、撃って、また撃って帰って来る。簡単な事よ。みんななら普通に出来るわ。またここで会いましょう」
マーベル団長はあっさりと大隊長訓示を覆してしまった。だけど彼女の言いたい事も理解できる。必死の覚悟も必死であれば、肩の力を抜いて自分達なら出来ると持てる力を出す事も大事だ。
「朝倉さん!」
と、不意に名を呼ばれて見ると、緊張した面持ちの山中君がいた。
「はい?」
私が訝しんでいると、山中君は徐に深呼吸してから口を開いた。
「こ、この戦いから生きて帰ったなら、朝倉さん、僕と「わー、ストップ!」
山中君からフラグの匂いがぷんぷんしだしたので、思わず遮ってしまった。
「ちょっ、山中君。縁起でもない。それフラグ立つよ?」
勿論、縁起でもないから何のフラグがとは言わない。
「縁起もフラグもクソ喰らえだ。僕は朝倉さんが士官学校の頃からずっと好きだ。この戦いからお互い生きて帰ったら僕の恋人になって欲しい」
ヒュー!やったな小隊長!彼の部下達が囃し立てる。
が、そこに挑む別口からも声がかかった。
「意義あり!」
いいい、意義ありですって?誰?
「朝倉、俺もお前が好きだ。この戦いが終わったら俺と付き合ってくれ!」
木村君?え?終わった事とはいえ、士官学校じゃ私の事を特待生とか散々悪口言いふらして退校させようとして決闘までしたのに?
こちらも彼の部下達が口笛を吹いて持て囃す。って、マーベル団長まで手を叩いて喜ぶってどうしてですか?
「いゃあ、モテモテだね、サク。で、どう?縁起もフラグもクソ喰らえ、私の中隊は前進あるのみよ?」
中隊の男共からは「おおー!」と歓声があがった。そして全ての視線が私に集中する。これから出撃するというのに、何、このシチュエーションは?私、今ここで告白の返事をしなくちゃいけないの?だったら、
「ごめんなさい。この場では何も言えません。私は頑張って戦い抜きます。山中君も木村君も実力で帰艦して?そうしたら返事をするから」
私がそう言ってマーベル団長に視線を送ると、マーベル団長パイロットいたずら成功とばかりに微笑んだ。多分だけど、このシナリオを書いたのはこの女だ。あの2人を煽って私達を出汁にして中隊の気分転換を図ったのだろう。
「さあみんな、この結末を知りたかったら頑張って生き残る事ね。それじゃあ、小隊長、後はよろしく」
何とも無責任に思える締めくくりをしたマーベル団長。私はすれ違いざまマーベル団長の腕を掴むと「貸し一つですからね?」と耳元で呟いた。
〜・〜・〜
「で、サクはどっち狙い?」
もう出撃前の悲壮感はあの告白騒動で何処かへ吹っ飛ばされて微塵も感じられない。それこそがマーベル団長の目的だったのだろう。真樹もすっかり女子高生のノリで他人の恋路(私のじゃない)に興味深々だ。
「私は山中君だと思うなぁ」
エリカもすっかり乗っかっている。
「…サク、どうするの?」
パ、パティさん?目が据わってて怖いよ?
「どうもしないよ。2人とも同期で戦友でいい奴だけどさ、恋愛対象として見た事なんてないもん。それに私は、」
「お父さんの敵討ち、でしょ?」
パティが私の言葉を継いだ。
「うん。まずはやるべき事をやらなくちゃね」
山中君も木村君も、告白してくれた気持ちはちょっと嬉しいし、有難いと思う。2人とも士官学校以来の付き合いで、私の上っ面だけじゃなく、私という女の内面も知っての上で告白してくれたのだろうから。だから私も決していい加減にはしないつもりではいる。
でも、その前にアムロイには個人的には父の敵討ちを、そして地球を侵略した落とし前をつけさせなきゃ。
「そうじゃないとやっぱり私は前には進めないから」
私がそう言うと、パティもちょっと微笑んで頷いた。
よし、そろそろ時間だ。私は親友にして戦友達に出撃のため声をかける。
「みんな集まって!」
私達はいつものように円陣を組み、右腕を伸ばしてテの平を中心で重ねた。
「真樹、お願い」
「よしきた!じゃあいくよ?」
「「「はい!」」」
「ブラックチューリップしょーたーい」
「「「「ファイト!」」」」
そして重ねた右手を高く跳ね上げた。
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それでは次話もお楽しみに!




