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第156話 わからない事は本人に訊くのが早道

サードアロー作戦開始前の機体整備のため、現在整備小隊は大忙しだ。私のXFAーv3も個人的にも仲が良く信頼している秋月郁恵少尉率いる整備小隊の手により作戦に必要な大型対艦ミサイルポッドの増載作業のまっ最中。


サードアロー作戦で第1航空艦隊の戦闘機群に護衛された私達攻撃任務群は、アムロイ軍の空間近接防御システムの指揮艦とその護衛艦隊を発見したら攻撃を開始する事となっている。


その第1撃として全機が遠距離から機体に増載させた大型対艦ミサイルを発射する事となっていて、その大型対艦ミサイルによる飽和攻撃で敵の指揮艦を撃ち漏らした場合、攻撃任務群は第2撃として機体に搭載する対艦ミサイルによる近接攻撃を行う手筈となっている。


FAーv3多数機による大型対艦ミサイル飽和攻撃なんて今回の作戦が初めてだ。きっと作戦を立案した参謀本部でも幾度となくシミュレーションを繰り返した事だろう。だけど、何と言ってもこれは相手が有っての事。そうそう思い通りにならないのが戦場という物だ。だから、せめて自分の命を預ける愛機の整備にはなるべく関わりたいと私は思う。


〜・〜・〜


空母海鳳の航空格納庫では急ピッチでFAーv3への大型対艦ミサイルポッドの増載作業が行われていた。


空母海鳳は一応大型空母に分類されてるいるけど、艦内の空間は無論限りがある。FAーv3は様々なパーツを組み合わせて増載する事により多用途に使える多目的機でもある。そのためそうしたパーツのバリエーションも豊富なのだけど、だからと言ってあれもこれもと艦内に積んでおく事は出来ない。


私達の所属する独立挺進艦隊は、艦隊単独で敵の勢力圏内に侵入して作戦行動しなくてはならない。だから容易に補給を受ける事が出来ない分、積載する部品なんかも優先度を設けて必要最小限に留めなくてはならず、通常は大型対艦ミサイルポッドを積載してはいなかった。


そのため、艦隊は衛星イアぺトゥースの泊地にいる間に木星からの高速輸送船によるミサイルポッドの補給を受けていた。それらは当然マニュアルが添付されている訳だけど、海鳳の整備小隊も扱うのは初めてだろう。


「郁ちゃん、何か手伝える事ある?」


私は航空格納庫を訪れると、機体を前に手元のタブレットと睨めっこしている整備小隊の秋月郁恵少尉に声をかけた。私の声に振り向いた秋月郁少尉は、私の顔を見るや泣きそうに表情を歪ませて駆け寄って来た。


「うぅ、サクヤさん、いいところに来てくれました〜」


因みに、おわかりのように私は秋月少尉の事を"郁ちゃん"と呼び、秋月少尉は私の事を"サクヤさん"と呼ぶ。勿論、公式な場では姓プラス階級だけど、こうして半ばプライベートな場くらいまではこんな感じ。更に言うと、ブラックチューリップ小隊のみんなや中隊長のマーベル団長も私の事を朝倉中尉とか小隊長とは呼ばず"サク"とか"サクヤ"と呼ぶ。まぁ、別にいいんだけど。


秋月少尉の涙混じりの訴えを聞くと、機体整備はいつものルーチンなので問題は無いとの事。問題なのはやっぱり大型対艦ミサイルポッドの増載作業と作動チェックなのだそう。


「増載自体はまだいいんです。数は多いけど単純作業ですから。でもその後の作動チェックがもう、」


私は「よしよし」と秋月少尉の背中を撫でながらかつての試験艦ペガッスで行ったXFAーv3の数々の試験を思い出していた。その中には大型対艦ミサイルポッドのものも含まれていて、その時もミサイルポッドを取り付けてから作動に不具合が出たのだった。


「全部じゃないんですけど、AIによってはミサイルポッドとの回路接続を拒否するんです。そんな事はマニュアルにも書いて無くて。もう時間も無いし、どうしていいのか…」


試験艦ペガッスでも同様で、あれも大型対艦ミサイルポッドの試験の時だった。船内の格納庫でXFAーv3の機体にミサイルポッドを取り付けた後、AIのビクトルとの回路接続にエラーが出たのだ。原因がわからず、ベルナルド大尉も頭を抱えていた。


試作機なので不具合は当たり前。試験艦の皆さんも張り切って原因究明に取り組んだものの、やはり原因は分からず。なので、最終的には私が加護を使ってこっそりXFAーv3に直接訊いてみると、


"何かねぇ、これをこのまま翼に取り付けるとミサイルは変な方に飛んで行っちゃうんだ。だから僕の命令が伝わらないようにしてるの"


と、XFAーv3はそう言っていた。


その後、私がXFAーv3が言った事を技研の技術者達に伝えると、最初は怪訝そうに聞いていたベルナルド大尉は、はっとした表情になり、何やら技術者達に指示して作業が開始された。


後日、技研の佐伯少佐が言うには、ミサイルポッドの発射プログラムの射角と機体AIののミサイル誘導システムに僅かながらの誤差があったのだという。仮にそのままミサイルを発射した場合、ミサイルはコントロールを失い、最悪の場合、他のミサイルを標的と誤認識して爆発する恐れがあったとか。


あの出来事を思い出したので、私は今回も念のため作動エラーを出している機体に訊いてみる事にした。


"どうしたの?"


"うん、ミサイル変な方に飛んで行っちゃうから、このままじゃダメだよって言ってたんだ"


"そうなんだ。偉いね、ありがとう"


"えへへ、どう致しまして"


突然機体に額を付けて目を瞑り出した私を郁ちゃんは訝しんで見ていたみたいだけど。


「郁ちゃん、不具合の原因わかったよ」


「えぇ、本当ですか?」


果たして、その後整備小隊の手によってプログラム解析がなされ、ミサイルポッドへの回路接続に伴うエラー原因が特定された。やはりXFAーv3の時と同じだった。


って言うか、既に試作機で大型対艦ミサイルポッド接続に不具合が出て、しかも原因も究明されてるんだから、技研のみんなは何してんのよって話だよ。


まぁ、セカンドアロー作戦があんな事にならなかったらXFAーv3の大型対艦ミサイルポッドの急な量産なんて必要無かった筈だから、これも事態が逼迫しているって事なんだろうね。


「お蔭で助かりました。サクヤさんって凄いですね。まるでFAーv3の心がわかるみたい!」


瞳をキラキラさせた郁ちゃんの言葉を聞きながら、まさか本当にそうなんですよとも言えず、私は「以前にXFAーv3でも同じような事が有ったんだよ」と言って誤魔化した。


〜・〜・〜


この大型対艦ミサイルポッドの接続エラーは海鳳の戦闘航空大隊だけではなく、他の独立挺進艦隊の航空隊でも起きていた。そのため、第6独立挺進艦隊の航空参謀笹居少佐は私と秋月少尉からの報告を受け、本不具合の発生及び対処方法を格独立挺進艦隊の航空参謀宛に発信し、それにより作戦発動前までに大型対艦ミサイルポッド接続不具合問題を解決する事が出来た。どんとはれ。

いつも『朝倉家の戦争』をお読み頂きまして、誠に有難う御座います。宜しければブクマ登録、評価、感想など宜しくお願いします。


それでは次話もお楽しみに!


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