第155話 穴倉に突き立てる三本目の矢
サードアロー作戦に向けて動き出した地球連邦軍宇宙艦隊。連合艦隊はその参加部隊の最大戦力だ。
基幹となるのは本土防衛戦力である月軌道艦隊。更に木星駐留艦隊とアステロイドベルト駐留艦隊が加わり、その総戦力は3000隻にもなる人類史上最大の戦力だった。
そう、残念ながら今は過去形となってしまっている。先のセカンドアロー作戦で連合艦隊はアムロイ軍の空間近接防御システムの待ち伏せ攻撃を受けて大打撃を受け、その戦力の約1/3、1000隻にも及ぶ戦力を失っていた。
その原因は、孫氏の兵法で言えば「彼を知らずして己れを知れば一勝一敗す」といったところだろう。要するに地球連邦軍は敵の戦力を見誤ってしまったのだ。
ファーストアロー作戦で敵の本土防衛艦隊をSTHー1を餌に釣り出して包囲殲滅。それは戦術的勝利としては良くても、それによって未知である敵本土たる移民船団の防衛力を軽視する結果となった。
それによる被害は甚大で。無人の野を進むが如く進撃し、アムロイの移民船団を射程に捉えようと逸った連合艦隊に後方を除いたあらゆる方向からレーザービームが降り注いだ。
突然の四方からの攻撃、咄嗟に状況把握を試みた連合艦隊司令部は直ちに退避命令を下す事をしなかった。そのため隷下の中級指揮者が自己部隊に応戦を命じるも遠距離からの攻撃なのか敵影は見えず、単艦での退避運動により陣形は乱れて衝突する艦も出て混乱を極めた。
漸く撤退命令を下した連合艦隊司令部だったが、大部隊だけにそれはスムーズに退避行動を行えない。その間にも被害は出続け、更にアムロイ軍の残存機動戦力による追撃もあって1000隻にも及ぶ損失を出してしまった、という事だった。
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連合艦隊はその残存戦力で囮として再び惨敗を喫した屈辱の宙域に向かっている。
この作戦に成功しようが失敗しようが恐らく連合艦隊は解散となり、それぞれの根拠地へ戻り戦力の再編と再建に取り掛かる事となるだろう。
作戦が成功すれば、それは良い。それでこの戦争は終わるのだから。だけど失敗したら?既に1000隻もの戦力を失って、この作戦で更に被害が出れば艦隊戦力の再建は容易じゃない。戦争状態の下で各艦隊は本来任務を遂行しながら戦力を再建しなければならないし、敵もそれを黙って見ている事はしないはず。そうであれば、今後果たして捲土重来を期して連合艦隊が再び編成されるかは全くの未知数と言える。
つまり、この作戦に失敗すれば連合艦隊が再び編成されるのは遥か先になるか、二度と編成されないかのどちらかとなるという訳なのだ。
きっと連合艦隊司令長官は自らの手でこの戦争を終わらせたかったのだろう。それとも歴史に名を残さんと功に逸ったのか。どちらにしても、最後の連合艦隊司令長官として名を残す事にはなるかも知れないかな。
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囮となる連合艦隊に続き、サードアロー作戦における2本目の矢たる私達航空打撃任務群も泊地にしていた衛星イアペトゥス周辺宙域から抜錨し、連合艦隊の影に隠れるように作戦宙域へ向けて出航した。
作戦予定宙域はアムロイの移民船団が停泊する宙域で、土星内縁衛星軌道となる。
その宙域は土星の輪、Eリングの内側であり、衛星で言えばパンドラやプロメテウスの軌道に当たる宙域だそう。そこは土星の磁場が発生させる大量で強力な電磁波の影響を受ける事無く、且つ、太陽と土星と木星という恒星と巨大ガス状惑星間の引力も安定しているらしい。地球圏でいうところのラグランジュ点のような感じなのかな。
しかも、この宙域は土星内縁輪の下方にあり、土星を北極から俯瞰したならば輪の下に隠れてしまうという安定して隠れるにはうってつけ。よくも、まぁ、そんな場所見つけましたねって感じ。
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航空打撃任務群の編成は打撃の主体となる第1から第6までの独立挺進艦隊と、それを護衛する第1航空艦隊からなる。
この艦隊の任務は敵の本土たる移民船団を守る空間近接防御システムをコントロールするAIを搭載する指揮艦を破壊し、後に続いて敵本土に突入する第869特殊任務群の突破口を確保する事。
そのため6個の独立挺進艦隊から12個戦闘航空大隊(442機)の戦闘攻撃機FAーv3を第1航空艦隊の空母群(赤城、ホーネット、イラストリアス)の1080機もの六式艦上戦闘機が護衛に当たる。
(お母さん、護衛は任せたからね)
連合艦隊は敵の正面に展開すると、行ったり来たりの派手な艦隊運動を繰り広げて陽動攻撃を開始する事となる。そして航空打撃任務群は先行する連合艦隊から離れ作戦宙域へと進み、途中途中でアムロイ軍の五月雨的な攻撃を排除しつつ、遂に作戦宙域へと差し掛かろうとしていた。
作戦開始は、もう間近。
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