第153話 失敗したら死ぬだけさ
イアペトゥス基地での作戦会議を終えた私達は、再びランチに乗船して空母海鳳へと戻った。そしてその後、空母海鳳の戦闘航空大隊全てのパイロットに招集がかかり、第6独立挺進艦隊の航空参謀である笹居少佐からサードアロー作戦について説明を受ける事となった。
笹居少佐は30代前半の甘い二枚目という感じの元戦闘機パイロット。物腰も柔らかく、以前から艦隊女子の間では人気があった。どの辺りからパイロットに見切りをつけて参謀の道を歩み出したのかは本人のみぞ知るところだろうけど、優秀な参謀になるのだろうなと思う。実際に第6独立挺進艦隊の航空作戦は笹居少佐が立案して成功して来ている。
そんな笹居少佐は事実を事実として淡々説明を進め、盛り上がりには欠けるものの、非常に理解し易い。
ここでもパイロット達から多くの質問が挙げられた。笹居少佐はそれらの質問に可能な限り答えていたけど、聖徳太子じゃないので流石に全てに応じる事は出来ず、作戦会議に参加した中小隊長に訊け、となって私にもお鉢が回って来たしまった。
真樹「ねえサク、これってどういう事?」
私「それは云々」
エリカ「ねえサク、敵のG級空母ってどんなんだっけ?」
私「ライブラリーで調べれ」
パティ「ねえサク、敵の指揮艦を撃沈出来なかったら、どのタイミングで撤退命令が出るのかな?」
私「…」
パティのこの質問については、作戦会議でも答えは無かった。コールマン大佐にしろ、デイビーズ中佐にしろ、作戦が失敗した場合については故意なのかどうか、一切触れなかったからだった。
そういう場合って、実際はどうなのだろう?歴史上様々な戦争があり、戦闘があり、それらにおいて立案されて実行された作戦があったけど、作戦失敗した後の計画も練られていたのだろうか?捷一号作戦は?マーケットガーデン作戦は?星一号作戦、は違うか。
私は参謀教育なんか受けていないからわからないけど、士官学校で学んだ作戦立案のシミュレーションでは作戦を立案して対戦、その後で教官から勝敗の判定が下されていた。そして勝敗の原因についてレポートを提出するのが一連の流れだったけど。
「作戦失敗の場合については、特に何も言われてないんだ。誰も触れなかったし、話題にも出なかったよ」
「「「…」」」
周りはガヤガヤしているけど、ここだけ気まずい沈黙が漂う。さて、現状をどう打破しようかと思案していると、例によってエリカが口を開いてブレイクスルー。
「古今東西、軍事作戦が失敗したら大抵現場のみんなは死んじゃっているから、そこの心配はしなくていいんじゃない?生き残りは逃げるだけだし」
「「…」」
ちょっ、ちょっとエリカ、ストレート過ぎ!真樹もパティも黙っちゃったじゃん!
確かにそうだけど、作戦失敗したら敵に押されて指揮系統は崩壊して、戦線は総崩れで逃げるしかないんだけど…
「寧ろそこからの方が大変なんだよ?」
追い討ちしてどうすんのよ。確かに関ヶ原の戦いでの島津勢も東西の決戦時よりも退却戦の方が戦死者多く出してるけど…
「そうか、これは地球人類の命運を賭けた乾坤一擲の大作戦って事なんだね」
ここでのエリカは天然なのか養殖なのか、やたら作戦のハードルを上げている。私は兎も角、エリカが煽ったから真樹もパティも萎縮してしまっている。
と、ここまで押し黙ってしまっていた真樹が呟く。
「そうなんだ。じゃあ私達、やるしかないんだね」
え、真樹?
「そうだよね。地球人類の未来がかかってるんだもんね。それに私達にしか出来ない事だもの」
パ、パティも?
何故か二人ともやる気満々になっていた。だったら小隊長たる私がやる事はひとつ。
「まぁあれだよ、そもそも参謀本部だって全く不可能な作戦なんて立てないはずだよ。それに地球人類の未来とか命運とかがかかっているんだもん、私達は私達にしかやれない事を目一杯やるしかないよ、もし失敗したらその時は別の誰かに考えて貰ってさ。私達は標的にミサイルをぶち込む事だけに集中しよう!」
「「「おー!」」」
エリカの暴走とか脱線はいつもの事だけど、今回は怪我の功名というか、副産物というか。まさかこれを狙って、いや、それはないか。
こうして私達ブラックチューリップ小隊も来るべき大作戦に向かって心を一つにして動き出す事となった。
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それでは次話にご期待ください。
Mrスポック
「長寿と繁栄を!」
『スタートレック』より




