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第150話 我々の手で

トキモさんの説明は続く。


「地球軍とアムロイ軍との空間近接防御システムの相違点は大まかに2つあります。1つはレーザー砲の数です。地球軍は様々な場所にある様々なレーザー源を使用出来ます。エネルギー源も太陽からほぼ無限に供給出来ると言っていいでしょう。それに対しアムロイ軍のレーザー源は新たに建造したレーザー砲衛星しか無く、エネルギー源も太陽から遠いため自前の発電施設からの供給に頼るしかありません。ですから、アムロイ軍のレーザー源は地球軍よりも圧倒的にその数が少ないのです」


シュワルツランツェは地球圏内にある一定以上の出力があるほぼ全てのレーザー源を使えるのに対し、アムロイ軍は新たに作ったレーザー砲衛星だけ。それが一体何機になるのかわからないけど、私達がスペースコロニーの通信用レーザーまで使えるのに比べればずっと少なくなるだろう。これも急造したシステムの弊害だろうか。


「おそらく地球軍の空間近接防御システムはそのレーザー源の多さから多面展開が可能なのではないでしょうか」


トキモさんはそう言いながら会議参加者、それも前列に鎮座する偉い人達を見渡した。途端にそっぽを向く大佐中佐。いくらその通りとはいえ、これは機密に属する事柄だけに安易に頷く訳にはいかないのだろう。


そこに大した期待をしていなかったのか、トキモさんは説明を続ける。


「これもおそらくですが、アムロイ軍の空間近接防御システムは一面にしか対応出来ません。ですので、これが弱点の1つ」


アムロイ軍の空間近接防御システムが一面にしか対応出来ないのなら、戦力を二手に分ければアムロイの本丸を落とす事も可能だろう。飽くまで二手に分けられる戦力が有れば、の話になるけれど。


「更にもう一つはシステム制御の問題です。アムロイ支族連合の実態は母星から脱出した移民船団です。船団を守るため艦隊が存在していましたが、この戦争でその多くが失われています。その艦隊に代わって現在移民船団を守っているのが空間近接防御システムな訳ですが、その司令塔となるAIの移民船への積載は移民船団への攻撃を招くとして積載は見送られました。また、内縁衛星は地殻が不安定である事からシステム制御基地の建設も選択肢から外され、最終的に新造した大型艦をAI搭載指令艦としたようです」


つまり、その空間近接防御システムを制御するAI搭載指令艦を撃沈破すればアムロイ軍の空間近接防御システムは機能しなくなるという事になるのね。


「無論、制御システムのバックアップは当然あるでしょう。ですが、当初にAI搭載指令艦を破壊し、システムがダウンしてバックアップに制御が移行されるまでの間は確実にアムロイ軍の空間近接防御システムはその動きを止めます。皆様ならきっとその時間を有効活用出来るのではないでしょうか?

以上で私からの説明を終えます。ご静聴有難う御座いました」


拍手、は無かったものの、この後会議参加者からは質問が相次いだ。当然時間には限りがあるためトキモさんも参謀本部員も全ての質問に答えた訳ではなかったけど、私も抱いていた疑問「ヤグモ支族は地球連邦に寝返っているのに、どうしてそんなに現アムロイ執行部の事情に詳しいの?」には応じて貰えた。


曰く、

「袂を分かったとはいえ、同族で同じシステムを使用しているから兵器システムについてもある程度の推測は可能」(トキモさん)


「セカンドアロー作戦後の偵察により収集した情報と、ヤグモ支族から提供を受けた情報を合わせて分析した結果である」(コールマン大佐)


との事だった。


〜・〜・〜


小休止を挟んで会議はまだまだ続く。


アムロイ軍の空間近接防御システムの概要と、その弱点の存在はわかった。多分、ここからがこの会議の本題になるのだろう。


再び会議室の正面に立ったコールマン大佐は、土星内縁衛星軌道のホログラムを大画面にして頭上に投影すると、作戦の概要の説明を始める。


「アムロイ軍の空間近接防御システムについては聞いた通りだ。我々地球人類より科学が進んだ異星人とて、その兵器は完璧ではない。まして、その兵器を作り出したのは我々なのだ。我々はこの作戦によりアムロイ軍の空間近接防御システムを無力化し、敵の心臓を破る。そしてこの戦争を我々の手で終わらせるのだ!」


おぉ、遂に「この戦争を終わらせる」宣言、頂きました。




いつも『朝倉家の戦争』をお読み頂きまして、誠に有難う御座います。宜しければブクマ登録、評価、感想など宜しくお願いします。


それでは次話にご期待ください。


ソルジャーブルー

「自分を信じることから道は開ける。

ことの善し悪しは、全てが終ってみなければわからないさ」


『地球へ』より

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