第147話 黒の戦姫?
「お姉ちゃんも作戦会議に呼びつけられた口?」
「うん、そう。どんな作戦かのかも知らないけどね」
一緒にいた山中君には申し訳なかったけど、彼の事は放っておいて、私は妹の七海と近況を語り合った。
妹は以前と所属は変わらず、第869特殊任務群独立特務大隊第1戦車小隊の小隊長だそう。階級も上がって1等軍曹に昇任したとか。
私も第309護衛艦隊から第6独立挺進艦隊へ異動になった旨を伝えた。
「だから私も今は小隊長なんだ」
「ふ〜ん、っていうかお姉ちゃん結構有名人だから、私知ってたよ」
え、有名人?私が?どういう事なのだろう。有名になるような事なんて何もしてないのに。
「だってお姉ちゃん、地球連邦軍初のトリプルエースの撃墜王でしょ?」
言われてみれば、そうっちゃそうか。
「言われてみればそうだけど、日々の戦闘でそんな事、考えた事無かったし。それに土星宙域の長距離偵察で通信封鎖しているから、外からの情報が乏しいんだよ」
「そっか、じゃあ二つ名があるのは?」
えぇっ?!そんなのまであるの?初めて聞いた。
「私、何てよばれているの?」
母は以前に偶然会った時に「空戦のクリムヒルト」と呼ばれていた。以前に所属していた第309護衛艦隊のレッドライオン小隊のエルザ隊長から教えてもらって私は知った。
エルザ隊長は母のファンだとかで、私がその「空戦のクリムヒルト」の娘だと知ったエルザ隊長はひどく興奮して紹介してくれと迫られ閉口したものだった。
いや、待てよ。確か以前に揉めた空母ホーネットのパイロット達は私達FAーv3のパイロットの事を「裏切り者」とか「妾の子」だとか言っていたよね。まぁ、でも不名誉なものや侮蔑したものだったら七海が態々話題に出す事もないから大丈夫だろう、多分。
「黒の戦姫、だって」
「黒の戦姫?!」
何だろう、ちょっとカッコいいと思いつつも感じる小っ恥ずかしい響きは。
私達の小隊が「ブラックチューリップ小隊」だから「黒」、戦闘機パイロットだから「戦」、女性だから「姫」って感じかな。
「誰が付けたんだか。どうせなら「アフリカの星」とか「レッドバロン」とか「スターリングラードの白薔薇」みたいなカッコいいのが良かったのに」
エリカならもっと色々なエースの二つ名を知ってそうだけど、私が知っているのはそれくらいかな。
「でも二つ名があるだけいいじゃない。歴史に残るよ?」
「まぁ、そうなのかなぁ?」
そんな遣り取りをしているけど、七海はここでこうしていてもいいのだろうか?
「小隊長はここで待機しているよう言われているから大丈夫だよ」
との事。じゃあ、遅くなっちゃったけど山中君を妹に紹介しようかな、と思ったその時、イアペトゥス基地の宇宙港に接舷したランチから会議出席者の一団が上陸して来た。
その一団には知った顔の女性士官がいて、その女性は確かジェリル・オコーナー大尉。空母ホーネット航空隊の中隊長だ。マーベル団長の士官学校同期生で、ついでに言えばその二人はお世辞にも仲がいいとは言えないもの。私はすかさず顔を逸らし気付かない振りに徹した。厄介事は御免だからね。
それから次のランチの一団。こちらも知っている人達がいる。本郷少佐、十文字少佐に風間少佐。彼等は3人とも空母赤城航空隊の大隊長だ。
ホーネットに赤城。どちらも第1機動艦隊の艦だ。その中身も名前も知らない作戦に私達と同じく参加するのだろう。
そして、その次のランチから上陸した一団。その中の一人の女性士官に気付く。
「「!!」」
「お姉ちゃん、あれ、あそこ!」
「うん!」
私と七海は互いに顔を見合わせて頷くと、座っていたベンチから勢いよく立ち上がる。基地の人工重力は地球と同じく1Gに設定されているけど、0Gの気分で身体が軽い。
私と妹はその一団の女性士官の元へと駆け寄った。その女性士官は私と妹同様の黒髪を肩まで伸ばし、背格好も色白で美人な顔立ちも私と妹に似通っている。いや、逆か。私と妹がその女性士官に似ているんだ。だって、その女性士官は私達のお母さんだもの。
「「お母さん!」」
私達に気付いた母は驚愕に目を見張ると、次の瞬間には一団の中から飛び出し、私と七海に向かって駆け出した。
「咲耶ちゃん、七海ちゃん!」
私達3人は人目も憚らず抱き合う。あの日、父がコロニーを守って戦死してから、私達は父の、夫の敵討ちのためそれぞれの道に分かれて銃を取った。そして広い太陽系の中で、地球連邦軍という巨大組織の中で散らばった。それなのにこうして母娘3人が会えるなんて本当に奇跡だ。
私は母と妹と抱き合いながら、ここで再会した私達3人、朝倉家の戦争はここからが正念場になるのだと予感めいたものを感じていた。
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それでは次話にご期待ください。
ひかり
「ルミナスシャイニングストリーム!
輝くいのちシャイニールミナス
光のこころと光の意思
すべてをひとつにするために」
『ふたりはプリキュア マックスハート』より




