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第146話 衛星イアペトゥス

私達を乗せた2機のランチは2時間程の航行で衛星イアペトゥスが大きく見える宙域に達した。


衛星イアペトゥスは僅かな太陽光を浴びてその表面を銀色に輝かせている。よく見ればイアペトゥスの周りには幾つものキラキラとした輝きが瞬き、この宙域に現在進行形で戦力が集結している様が窺えた。


2機のランチは更にイアペトゥスに近付くと、基地管制から別命有るまで現宙域で待機するよう指示が出された。


どうもイアペトゥスの宇宙港も運用開始して間も無いようで、諸事スムーズに機能していないようだった。


結局、私達のランチがイアペトゥス基地の宇宙港に入港出来たのはそれから1時間後の事となる。


〜・〜・〜


衛星イアペトゥスの基地はイアペトゥスの赤道付近にある巨大なクレーター内に築かれている。元々地球連邦の基地群がクレーター内にあったのだけれど、土星圏へアムロイが進攻して来た際に放棄していた。


因み地球連邦軍がアムロイから衛星イアペトゥスを奪還すると、クレーター内の基地群は手付かずの状態で放置されていたという。その基地群を元に急ピッチで拡大建造しているのが今私がいるイアペトゥス基地という訳。


不思議な事にアムロイ軍は衛星イアペトゥスにあった地球連邦の基地群を破壊しなかった。まぁ、言ってみればどういう技術を使ったのかアムロイは恒星間航行をした程の高度な科学技術を持つ知的生命体だ。そんな彼等からしたら地球人が衛星に作った基地なんて掘立て小屋みたいな物で、大した脅威とは捉えなかったんじゃないかな。


だけど、ではアムロイがイアペトゥスやエンケラドスなどの土星の外周軌道上の衛星を利用するかというと、あまり積極的にそうしているという事は無かった。精々が無人の通信基地や索敵用のレーダー基地が置かれていた程度で、衛星に恒久的な基地や要塞を作って根拠地化する事は無かった。


「城の本丸を守ろうというのであれば当然二ノ丸や三ノ丸が必要だし、真田家が徳川秀忠率いる徳川家第2軍を迎え撃ったのだって本丸の沼田城と連携する砥石や岩櫃の支城が重要な役割を果たした訳でしょう?だったらアムロイが土星に腰を据えたんだったら、土星を守るのに外周軌道の大型衛星は重要なんだけどなぁ?」


と、これは以前に海鳳で暇していた時に「あいつら(アムロイ)って何で外周軌道の衛星に基地作んないのかね?」という話題になった時、エリカが言った事。


この時はみんな色々な説を出してた。例えば、戦略の概念が違うとの真樹説、地球侵略が目的だから土星には長居する気が無いひとみ説、戦力分散を避けたパティ説。


その中で私が一番納得したのが史恵の唱えた説。


「単純にそれらを作るだけのお金が無いんじゃない?」


アムロイ軍だって予算で動く組織である。資源地帯である土星を手中に収めつつも、資源の採掘、精錬、加工、兵器の製作にはお金がかかるのだ。


なので、その必要を認めつつもアムロイには土星外周軌道上の衛星に基地を作る予算が無かったのか、または、それよりも優先的に予算を回さなければならない何事かがあるのか。


何れにしても、アムロイにお金が無いという史恵の説は説得力があった。流石は商人の娘といったところだろうか。


「そうか、辛いのだな、アムロイも…」


と、何故か遠い目をしてどこかの将軍ように呟くエリカ。


でも、もしかしたら実際もそうなのかもしれないね。


〜・〜・〜


ランチがイアペトゥス基地の宇宙港に接舷して、私達は遂に上陸。基地内は人工重力で1Gに保たれている。


作戦会議まではまだ2時間も先との事だった。大隊長と各中隊長は会議の事前説明を受けるため参謀本部員と思しき若い男性士官に連れられて行き、私達小隊長組は会議が始まるまでは待機となり少々手持ち無沙汰。なので、私と山中君はドリンクサーバーで飲み物を確保すると、宇宙港のロビーで駄弁って時間潰しをする事にした。


私と山中君とは同期生で、横須賀士官学校以来の付き合いになる。彼とは士官学校当時から割合と気兼ね無く話せる間柄で、ブラックチューリップ小隊のみんなやブリッジ3人娘がいないこんな時は近くにいてくれると頼もしい存在かな。


暫くそうして山中君と話しに花を咲かせつつもふと会話が途切れた時、何気無く接舷ゲートに視線を向けると、今さっき宇宙港から上陸した一団が目に着いた。


妙に強面ばかりなのは陸戦隊だろうか?と、その中に見え隠れする20歳前のように見える若い女性下士官がいる。艶のあるベリーショートにした黒髪に色白でキリッとした眼差し。背も幾らか伸びたのかな?その面差しは私の記憶にある姿とは少し変わって大人びているけど、間違えるはずがない!


「なな!」


周りも気にせず、私は立ち上がり大声で妹の名前を呼んだ。


突然大声で名前を呼ばれてか、ビクッと身体を震わせると、私の方へ振り返る妹の七海。妹は私を見つけると驚きで大きく目を見張った。


「お姉ちゃん⁈」


妹に駆け寄った私は、同じく妹も駆けて来る。もう身長は私と変わらないかな。最後に会ってからどれくらいの時間が経ったのだろう。


私は会えなかった時間と、生きて再び会えた嬉しさの分だけ強く妹の身体を抱きしめた。


いつも『朝倉家の戦争』をお読み頂きまして、誠に有難う御座います。宜しければブクマ登録、評価、感想など宜しくお願いします。


それでは次話にご期待ください。


関羽「黄巾の賊はなお討つに易し。廟堂の鼠臣はついにおうも難し──か」


吉川英治『三国志』より

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