第143話 招集、かかる
第6独立挺進艦隊は損傷した艦の修理、補給、乗組員の休養などを終えた。しかし、なかなか土星宙域へは行けないでいる。
現在、木星駐留艦隊の主力は土星奪還作戦のため土星宙域へと派遣されている。そのため木星周辺の守備が手薄になってしまっていて、地球圏からは新設された艦隊が次々と到着している。でも、やっぱり質、量共に木星駐留艦隊には及ばない。そのため、歴戦にして常勝の部隊たる独立挺進艦隊はそのまま木星宙域に留め置かれ、哨戒任務に就かされているという訳だった。
艦隊の乗組員の中には最前線での過酷な任務よりも、楽で比較的安全な任務を喜ぶ風が無くも無いんだけど、この戦争もどうにか終わりが見えて来たこの時、後方にいるのは内心忸怩たる思いが私にはある。
そんな事を思っていると、私って何だか戦闘狂みたいに思われそう。だけど、この戦争の初戦でスペースコロニーを守って父が戦死し、妹も私も父の敵を討とうと軍人になった。母も戦闘機パイロットとして現役復帰して戦っている。私達朝倉家の者が戦い続けるこの戦争の行方を、私は自身の目で見極めたいと、そう思うのだ。
とはいえ、慣れという物は恐ろしいもので、楽であればある程あっという間に馴染んでしまうもの。まぁ、何事も楽であるに越した事はない訳だけど。
「ねぇ、サク。格ゲーで対戦しようぜ?」
「いいよ。インハイを思い出すね」
「よ〜し、幻の決勝戦にここでケリをつけるからな?」
真樹の言う幻の決勝戦とは、私達が高校2年生の時に行われた「全国高等学校総合体育大会女子空手道個人組手の部」の事だろう。
当時、私が通っていた市立天宮高校がNー1コロニー群の代表としてインターハイ(名古屋)に出場した。そして個人組手でなんか私が優勝しちゃったんだけど、その大会の個人組手の優勝候補が埼玉県代表私立S高校の国見真樹だったんたよね。
順調に進めば決勝戦で私と真樹が当たると思っていたんだけど、ここで番狂わせがあった。試合中に真樹に相手選手の蹴りが入っちゃって肋骨骨折の肺挫傷になってしまったんだ。
勿論、寸止めの高校空手でこれは反則で、相手選手は反則負け。でも真樹も負傷でそれ以上の試合参加は出来なくて、決勝戦は私の不戦敗で優勝になった訳なんだ。
「格ゲーっていうのがアレだけどね」
戦時とはいえ、前線から離れた木星圏での哨戒任務。時間的にも労力的にもやはり余裕が出来て、非番時にはこうして今までやる余裕すら無かったゲームなんかも楽しめていた。
私と真樹がこれからやろうとしているのは古典的なバーチャル空間でアバターを使って対戦するゲームで、『バックストリートウォーリアーズⅣ』という物。
真樹は結構なゲーム女子だからいいけど、私はあまりゲームはしないから自信無い。私が負けたら真樹の奴、ドヤ顔するんだろうな、はぁ。
「ねぇ、罰ゲームとかしない?」
エ〜リ〜カ〜!余計な事言うんじゃな〜い!
「あっ、それ面白そう。嘘告白とかどう?」
「史恵、あんた本当、ぶっ飛ばすからね?」
史恵の奴、他人事だと思ってまったく!
真樹との対戦を前にそんな遣り取りをしていた時、突如スピーカーから招集がかかった。
『副長から伝達。当番勤務以外の士官は士官室に集合。繰り返す、」
一体何だろう、急に。でも取り敢えず、
「行こうか、みんな」
「「「了解」」」
真樹との格ゲー対戦は暫しお預けにして、私達は士官室へと急いだのだった。
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それでは次話にご期待ください。
西木野真姫
「やりたいならやれば良いじゃない。そしたら、少しは応援、、してあげるから。」
『ラブライブ』より




