第140話 トオルハンマー防衛戦⑥
帰艦して数時間の休養を摂って再度出撃してみると、私達ブラックチューリップ小隊を待っていたのは帰艦前よりも遥かに悪化した戦況だった。
たった数時間で一体何があったのか?どうもアムロイ艦隊の第2陣が参戦し、勢いを増した敵の猛攻に友軍の防衛線が一部突破されてしまったというのだ。
また、戦況は参戦したアムロイ艦隊に新型のミサイル巡洋艦が多数含まれていた事で更なる悪化を招いていた。
STH群防衛戦緒戦のようにある程度余裕を持って迎撃出来た大型ミサイル群のロングレンジ攻撃とは異なり、ミサイル巡洋艦によるミサイル攻撃はSTH群に接近してからの攻撃になるだけに、発射されてしまったミサイルの迎撃は可能ではあっても取り零す分も遥かに多くなる。
この事態にSTH防衛司令部はなりふり構わず戦力をSTHー2へ差し向け、私達ブラックチューリップ小隊もSTHー2へ急行中。
だけど、少し遅かった。
私達が向かっていたSTHー2は、防衛線を突破して侵入したアムロイ艦隊によるミサイルの飽和攻撃を受け私達の見ている前で大爆発したのだ。
「!!」
小隊隊みんなの声にならない声がヘルメットのスピーカーから聞こえた。
STHー2があった宙域はアムロイ艦隊に制宙権が奪われてしまった。これによってSTHー1とSTHー3は分断され、それぞれアムロイ艦隊により各個撃破されようとしていた。
「こちらブラックチューリップリーダー、敵と戦っちゃダメ!回避に専念して」
「「「了解!」」」
私達は圧倒的な敵艦隊の中に孤立してしまっている。この状態から生き残るため、私は無理に戦ったりせず逃げ回る道を選択した。ここで1機や2機の敵機を撃墜したところで忽ち数で遥かに勝る敵に包囲されて、私達はあっという間に全滅してしまうだろう。ならば、逃げる。逃げ回って逃げ回って、その間に戦況が変わる僅かな可能性に賭けよう。生きていればどうにかなる。諦めたらお終いだから。
私達は友軍が次から次へと失われて行く中、ひたすら回避し、僅かでもSTHー1に近づくように逃げに逃げた。
どれくらいの時間が経過したのか、ビクトルから緊急通信を受信したと報告がなされた。
「読んでみて」
『了解。STH群防衛司令部からの平文による緊急通信です。「STHー1軸線軌道上の全地球連邦軍艦艇は直ちに軸線軌道上から退避せよ」以上です』
どういう事だろう?でも、考えている暇なんか無い。
「ビクトル、私達の現在位置は?」
『当小隊はSTHー1軸線軌道上に有ります』
え?ヤバいよね。
「ブラックチューリップリーダーから小隊各機、聞いての通り。現宙域からエンジン全開で急速離脱!絶対着いて来て!」
私はみんなからの返事も聞かず、ビクトルに最短距離でSTHー1の軸線軌道上から離脱出来る方向を探させると、3時の方向へと機首を向け、エンジン出力を全開にした。
『高エネルギー反応の接近を感知しました』
やっぱりだ。STH群防衛司令部は試験運用のため充電中だったSTHー1から長距離強威力大口径レーザー(トオルハンマー)を防衛線の内懐に侵入したアムロイ艦隊へ向けて発射したのだ。
トオルハンマーの直撃を受け、防衛線内に侵入したアムロイ艦隊は壊滅した。この隙に私達はSTHー1分遣艦隊が制宙権を確保している宙域へと脱出する事が出来た。
「みんな、大丈夫?パティ?」
「私は大丈夫だよ」
「エリカは?」
「私も大丈夫。ふぃ〜、危機一髪だったね、サク」
「真樹?」
「大丈夫、大丈夫」
良かった、みんなちゃんと着いて来てた。
「お前さん、上出来だ。よく切り抜けたな。だが気を抜くなよ?まだ何も変わっちゃいねえからな」
不意に聞こえる野村大尉の声。随分と誉めてくれている。
「はい、大尉」
絶対絶命の危機は脱したものの、野村大尉の言う通りこれは一時的なもの。トオルハンマーによって防衛線内の敵艦隊は壊滅したものの、防衛線は突破されSTH群は分断されている。こちらが不利な状況に変わりはなく、STH群の命脈は正に風前の灯しだ。
だがしかし、ここに至り、遂に木星駐留艦隊か戦場に到着したのだ。
戦況はこれによりは逆転し、更に後着したアステロイド駐留艦隊の参戦によりアムロイ艦隊は挟撃され、STH群防衛戦の勝敗は決した。
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それでは次話にご期待ください。
巴武蔵「血潮も、涙も流さねえ冷血野郎のトカゲども! てめえらなんぞに、この地球は渡さん! もう一度滅びやがれ!」
『ゲッターロボG』より




