第139話 トオルハンマー防衛戦⑤
STH群防衛戦、その開始から3日が経とうとしていた。その間、私達航空隊はミサイルを撃ち尽くしては帰艦し、休養を摂ってミサイルを補充しては出撃し、を繰り返している。もう何回出撃し、何を何機撃墜して何を何隻撃沈したのかあまり憶えていない。まぁ、全部AIのビクトルが記録しているからいいのだけど。
幸いな事に今のところ第2中隊はマーベル団長以下みんな健在。ただ、再出撃を繰り返す内に中隊は小隊ごとにバラバラとなり、中隊としての連携した戦闘が徐々に出来なくなっていた。でも、次第に敵からの圧迫が強くなる中でそれは仕方のない事で、戦闘が激しくなれば12機揃っての行動など取れなくなって当たり前だから。
今もアムロイ軍の駆逐艦を小隊で沈めた後、私達ブラックチューリップ小隊は全機が対艦ミサイルを撃ち尽くした状態であるにも関わらず、艦隊の直掩を務めている。海鳳に帰ろうにも、私達と同じようにミサイルを撃ち尽くして着艦しては補充を終えて出撃して行く部隊で飛行甲板が渋滞中なのだ。
「アムロイの連中もさ、3日も攻め続けてご苦労さんって感じだけど、3日もSTHー1を守り続けてるウチらも何気に凄くない?」
「そうそう。言っちゃ何だけど、STH群防衛艦隊なんて言ったって実態は寄せ集めだもんね」
現在、敵の攻撃はSTH群の中でもやや突出しているSTHー2に集中気味で、STHー1の周辺宙域は比較的静かな状態となっていた。特に空母は艦隊の後方に位置するため、その直掩ともなればこうして真樹とエリカのように小隊内の専用回線を使ってのお喋りなんかも出来る余裕も生じる。
「でもさ、サク、木星駐留艦隊ってまだ来ないのかな?そろそろこっちも限界に近いよ?」
そう。パティの言う通り補給がなければ艦内のミサイルなども近い内に尽きるし、何よりも私達が保たない。
パティの問いかけに、私は満足な返答をする事が出来ない。パティも私が明確な答えを持っているとは思っていないだろうけど、普段はそんな愚痴めいた事を口にしないパティが思わず言ってしまっている事自体、STH群防衛艦隊が置かれている立場と私達の疲労を物語っている。
「あ〜、ごめん。私にもそれはわかんないや」
「あ、いや、そんなつもりで言った訳じゃないから、私こそごめん」
そんな遣り取りをしていると、空母海鳳の管制から通信が入った。
「ラクシュミー1からブラックチューリップリーダー、貴隊の艦隊直掩任務を解除します。ホワイトウィーズル小隊と任務交替後、第1航空甲板より着艦して下さい」
この声はダーシャだね。ラクシュミーって、確かヒンズー教の女神だっけ?
「ブラックチューリップリーダー、了解」
取り敢えず、帰艦したら休眠カプセルでぐっすり眠って次の出撃に備えよう。
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それでは次話にご期待ください。
ミッターマイヤー「どうして、たいした奴がいるな、叛乱軍にも」
『銀河英雄伝説①黎明編』より




