第138話 トオルハンマー防衛戦④
STH群防衛戦。その緒戦はアムロイ軍の大型ミサイル群によるロングレンジ攻撃。これは我等連合戦闘航空団の迎撃により阻止する事が出来た。
だけど、その後はアムロイ軍の大艦隊との艦隊戦に突入。彼我の戦力差からSTH群防衛艦隊(仮)はジリ貧となりつつあった。
私達第6独立挺進艦隊の戦闘航空大隊は、その様な戦況の中にあって、意外にも着実に戦果を挙げていた。それは第6独立挺進艦隊が遂行していた敵の通商破壊部隊撃滅戦の中で掴んだ戦訓と、それによって培った戦法によるもだった。
アムロイ軍は一時期から戦闘にAI制御による無人の戦力を主力として投入するようになっていた。これによって木星からアステロイドベルト間の地球連邦軍の通商路、補給路はかなりな損害を被るようになった。宇宙艦隊司令部は護衛戦力を大幅に増強する必要に迫られ、そちらに戦力を傾ける関係上、土星奪還作戦はそのスケジュールに遅滞を生じてしまっていた。
土星宙域の最前線でハンター狩りをしていた第6独立挺進艦隊は、地球連邦軍の中で最もアムロイ軍のAI制御無人艦隊との実戦豊富な部隊となっていた。そうした戦闘の中で編み出した戦法は、敵の旗艦を真っ先に叩く、という物だった。
え?そんなの当たり前だろ?とか思ったあなた。それはそうなんだけど、アムロイ軍のAI制御無人艦隊にはAI制御故の特徴があって、艦隊の艦艇全てが自律したAIを装備している訳ではなさそうなんだよね。
どうやら自律型AIが装備されているのは大型巡洋艦クラス以上の大型艦に限られるようで、それ以下の艦艇には下位のAIが使われ、麾下の艦艇は旗艦AIのコントロールにより行動しているようだった。
そのため旗艦が撃沈されると別の艦に指揮が継承される事は無く、残存艦艇は自艦AIの制御による個艦としての戦闘を続けるだけで艦隊としての連携した戦闘は出来なくなってしまうのだ。
だから旗艦を撃沈すれば、その後は各個撃破出来てしまう、という訳。
アムロイ軍のAI制御無人兵器は人的損害を防げるとか、人故の感情に関係無く効率的な行動を取る事が出来るとか利点は沢山ある。だけど何でこんな弱点というか、欠陥があるのだろうか?と暇な時に暇な連中で話し合った事がある。ああでもないこうでもないと様々な説が出された中で、誰が言ったか最も説得力があったのが「予算の関係じゃね?」という物だった。
アムロイが土星という資源地帯を抑えたからといって、そこから無限に戦力を作り出す事は出来ない。そこには予算の壁が存在し、その予算の範囲内で戦力を揃えなければならないのだ。だから予算の都合上、無人艦艇の全てに高額(多分)で高性能な自律型AIを装備させる事が出来なかったんじゃないか?と。
そうした自分達の分析とそれに基づいて考案された戦法は戦闘データやシミュレーションと共に艦隊司令のガチンスキー大佐に報告された。そして、実際の戦闘でその戦法の有効性が認められ、艦隊参謀から宇宙艦隊司令部へ報告されるに至った。
〜・〜・〜
漆黒の宇宙空間。だけど、この宙域は激戦の只中だ。地球連邦軍とアムロイ軍、双方が放つ砲火が飛び交い、無数の火球が明滅して閃光が虚空を照らし出している。
「プルメリアリーダーから中隊各機、我が中隊は前方の敵艦隊ピケットを叩く。全機、突撃せよ」
中隊長マーベル団長の下命により、第2中隊はSTHー1に迫る敵艦隊へ向かい出力最大で攻撃を開始した。
STHー1に迫る敵艦隊は大型巡洋艦を旗艦とする30隻程の戦力。これが最初ではなく、第6独立挺進艦隊が所属するSTH群防衛艦隊のSTHー1防衛分艦隊はもう二度こうした敵艦隊の強襲を撃退している。
私達ブラックチューリップ小隊は敵艦隊前衛の防空駆逐艦にその上空から加速した急降下をかける。敵艦からの対空砲火のパルスレーザーが接近を阻むも、小隊の先陣を切る私はXFAーv3の持味である強出力で機体に右捻りを入れると、強引に対艦ミサイルの射程距離内まで突っ込み、機体の左右から対艦ミサイルを一発ずつ発射した。
私の機体に追随する小隊のパティ達3機も対艦ミサイル発射を発射した。合計8発の対艦ミサイルは敵艦の対空砲火によってその半数が撃墜されるも、4発が敵艦に命中。
命中した対艦ミサイルは高熱を発した弾頭を敵艦の艦体にめり込ませると、艦内の深くまで高温の金属ガスを撒き散らすと起爆。その直後に一瞬で轟沈し、巨大な火球となった。
『敵艦の撃沈を確認。轟沈で「よし、次」』
ビクトルの報告が終わるのを待たず、私は次に撃破するピケットを求めて戦闘宙域を移動する。
こうしてFAーv3の持味(高出力、高機動、重武装)を生かして敵艦隊のピケットを潰し、こじ開けた敵の防空網の穴から旗艦ハールバールの主砲、又はボルグ以下の駆逐艦戦隊の魚雷により敵艦隊の旗艦を仕留める、というのが第6独立挺進艦隊が編み出した戦法。
単純なようだけど、これはFAーv3が肝で、いくら航空隊があるといっても六式艦上戦闘機ではスペック不足となり、犠牲も多くなって実施困難となるだろう。
STH群防衛戦は戦力的に優位にあるアムロイ艦隊の猛攻により友軍は押されている。だけど私達が守るSTHー1は未だに健在であった。そして、STHー1は引き続いて試験運用の充電を再開させていた。
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それでは次話「トオルハンマー防衛戦④」にご期待ください。
臼渕大尉「今から故郷に向かって別れを告げろ。泣いてもいい。これも死ニ方用意の一つだ」
映画「男たちの大和」より




