第134話 トオルハンマー
「うわー、大きいねぇ」
「本当、初めて見たけどスペースコロニー並みだね」
エリカと真樹が展望デッキから私達が護衛する大口径長距離強威力レーザー砲(通称"トオルハンマー")を見上げ、その大きさに感嘆の声を上げている。
地球連邦軍は、この遠くに土星を望む宙域に3基のトオルハンマーを進出させる予定であるという。私達第6独立挺進艦隊の新たな任務は、そのうちの最初の1基(STHー1)の護衛で、木星宙域の泊地から出港して漸く到着したところ。
トオルハンマーは直径約6km、全長約3kmの円筒形をしている。地球圏や木星ではリフレクター衛星によってエネルギーが軍事基地や発電機能を有する衛星など様々な施設から電磁波で供給される。だけど、この宙域ではそれが不可能である事から、STHー1の後部には3基の核融合炉が設置されているそう。
トオルハンマー自体は地球圏にも6基あるけど、軍事機密である事から報道や資料などの公開された映像、画像でしか見る事は出来ない。それが、艦の窓越しとはいえ初めて間近に見て、その大きさに驚いている、という訳だった。
勿論、大きさでいえばスペースコロニーの方が大きいし、それこそ今まで間近に見てきた訳だけど、これだけの大きさの"兵器"を見るのはみんな初めてなのだ。
そして、何というか、STHー1からはその大きさからくる迫力だけじゃなくて"兵器"からの威圧や禍々しさのようなものを感じたりもする。
しかし、そんなSTHー1。まだ未完成だそうで、STHー1の周りにはひっきりなしに多くの輸送船や工作船が行き交い、STHー1の建設作業をしていた。
その後、艦内の士官室でブリーフィングがあり、曖昧だった護衛任務の詳細について艦隊参謀から説明がなされた。
それによれば、私達の艦隊は他隊と任務群を成す事なく、その特性を生かしてSTHー1の周辺宙域の警戒に当たるべし、というものだった。要するに私達はSTHー1の周辺を哨戒しつつ見敵必戦、増援が来るまで時間を稼ぎ、他方で戦闘があれば行って味方が来たぞと応援する。なので護衛といっても私達の艦隊はSTHー1に張り付いている訳ではなく、謂わば独立性の高いSTHー1における遊撃隊のようなものだろう。
「まぁ、この内容ならガチンスキーのとっつぁんも渋々受け入れざるを得ないよね」
士官室からパイロット待機室へと戻りながらエリカがそう感想を述べた。まぁ、私も何となく納得。
「でもさあ、長距離偵察が専らのウチらまで
護衛に駆り出さなきゃならないって、連邦軍も戦力不足ここに極まれりって感じじゃない?」
パティの疑問に私も同感。地球連邦軍は戦時体制に移行して戦闘で消耗しつつも、その戦力は拡大しているはず。にもかかわらず私達のような独立部隊まで護衛任務に駆り出すという事は土星奪還作戦が地球連邦軍の総力を挙げての作戦なのだろう。
アムロイの総戦力がどんなものなのか、私程度では知る由もないけど、もしも土星奪還作戦が失敗に終わったらどうなるんだろう?そんな不安も頭を過ぎるけども。
だけど、弱気は禁物だ。私は父の敵を討たなければならないのだから。
さて、任務の詳細を知ったところで、私達もそれぞれ与えられた任務に取り掛からねばならない。私達航空隊の任務はFAーv3の特性を生かした長距離哨戒となる。
小隊長たる私は大隊長や他の中小隊長達と共に哨戒ルートや各隊毎のローテーションを作成したりと、これから忙しくなる。だから、その前に食べる物食べて英気を養わなければね。
「ねぇ、エリカ、今日の夕食のメニュー見た?」
「愚問だよ、サク。今日は金曜日だよ?」
「じゃあ、みんな、海鳳特製カレー食べて新しい任務に備えよう!」
「「「りょーかーい!」」」
因みに夕食はバターチキンカレーだった。
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それでは次話「トオルハンマーを死守せよ!」にご期待ください。
「愛ある限り戦いましょう。命、燃え尽きるまで。美少女仮面! ポワトリン!」
「美少女仮面! ポワトリン」より




