第12話 それぞれの動機
私達が史恵の親戚夫婦に挨拶すると、史恵が予約していてくれた円卓がある個室に案内された。皆それぞれ適当に席に着く。エリカと真樹は円卓が初めてで、上部構造の卓を回してはオォと驚きの声を発し、その都度ひとみに「行儀が悪いわよ!」と窘められていた。
台湾料理という物を私も初めて頂いたのだけど、料理はどれも美味しく、台南飯店は私の中華街での二軒目のお気に入りの店になった。
私達が食後の杏仁豆腐を食べていると、史恵の伯母さんがジャスミン茶のお代わりをと持って来てくれた。
「史恵がいつもお世話になって、有難う御座います。」
「いえ、こちらこそ史恵さんにはみんな何かと助けて貰ってます。」
一応班長である私が応じ、そのまま史恵を除く四人と史恵の伯母さんで史恵のエピソード暴露大会へと移行していった。史恵は嫌そうにしていたけど。
「史ちゃんの実家は台南で貿易会社を経営しているの。今は史ちゃんの父親、まあ、私の弟になるのですけど、弟は史ちゃんを会社の跡取りにって考えていたから、まさか軍人さんになるなんて、最初はびっくりしたのよ。」
「史恵さんのご両親はさん反対されなかったのですか?」
「もちろん、弟は大反対したけど、この娘は一度言い出したら聞かないから、どうにか一回だけ受験していいという事になったの。士官学校の入試に落ちたら大学で経営学を学んで会社を継ぐ約束でね。結果は見ての通りだけど、この娘、見た目はおっとりしていて可愛いけど、性格は結構強情でキツイのよ。」
「もう!伯母さんやめてよ、恥ずかしい。」
流石に史恵は伯母さんの暴露に苦情を入れたけど、否定はしないんだ。
「小学5年生の時だったかしら、クラスで女子を虐める男子生徒を木に縛りつけて、」
「わーわー、ホント辞めてよ!」
身内から暴露される生々しいエピソードは、李史恵という友人の人となりを知る上で大変貴重な物となったけど、人は見かけによらないものだと思った。
「でも、貿易会社のお嬢さんが何で士官学校を受験しようと思ったの?」
エリカがグイグイと迫る。
「何でって、お父さんの会社も悪くはないのだけど、自分で決めた自分の道を歩きたかったし、台湾共和国から地球連邦軍の士官になってる人って少ないから、それじゃ私が挑戦してあげようじゃないのって思ったからかな。そういうエリカは何でなの?」
「へ?私?」
エリカもまさか史恵が自分に振ってくるとは思ってなかったようでびっくり。
「私は母親がフランス人なんだけど、父方は軍人の家系なの。だから子供の頃から軍人になるのが当たり前って環境だったんだ。まあ、私も嫌いじゃなかったしね。じゃあ、お次は真樹ちゃん、行ってみましょう。」
エリカは真樹に話を振って、いつのまにか士官学校受験動機打ち明け大会になっていた。
エリカからバトンタッチされた真樹。
「私は大した動機は無くて、高校で空手やっていて、学業成績もそこそこ良かったから元軍人の部活顧問の先生に勧められたからだね。じゃあ、次はひとみにしようかな。」
真樹はひとみに振って、私は最後という流れか。
ひとみは一瞬逡巡していたようだったけど、ええい、言ってしまえという感じで話し始めた。
「私の実家は東伊豆の神社なんだけど、私も子供の頃から巫女としてご奉仕していたの。まあ、信じる信じないは任せるけど、中学3年生の時に夢にウチでお祭りしている御祭神が現れて、今から三年後にこの星に彼方からの危機が訪れるからお前も戦えって告げられて、それで軍人を志しました。はい、最後は咲耶頼むわよ。」
なんか凄い事をサラッと言い流したけど、実にひとみらしい動機だった。
そして、遂に私の番になってしまった。こんな流れになるなんて予想外だったけど、私の動機を説明すれば父の戦死に言及せざるを得ない。適当に誤魔化してとも思ったけど、私はこの新しい仲間達には、友達には誠実でいたい。だから折角の楽しい雰囲気が重苦しくなってしまうかもしれないけど、しょうがないよね。
「私も父が軍人で、駆逐艦の艦長だったのだけど、コロニーを守る戦いで戦死しちゃって。それで私と妹は父の敵討ちのために軍人を志し、士官学校を受験したんだ。」
「「「「「……」」」」」
あー、やっぱり空気が重くなってしまった。
「ごめんね、なんか雰囲気悪くしちゃって。ね、この話はこれで終わりにしよ?」
私は重くなってしまった雰囲気を変えようと、努めて明るい感じで話題を変えるようにしたけど、ひとみが続けて言った。
「戦死された咲耶のお父さんて駆逐艦南風の艦長だった方でしょう?私、Cー1コロニー防衛戦の中継見てたの。私、咲耶のお父さんの事を本当に尊敬するわ。」
「「「うんうん。」」」
史恵と真樹とエリカが頻りに頷いている。
「いや、軍人の鏡だよ。それにお父上の敵討ちだなんて、日本にはまだ武士道が生きているんだね。私もサクに協力するから、見事本懐を遂げようね。」
「あ、ありがとう?」
エリカが興奮気味に私の両手を取って、迫る様に言った。非常に顔が近いのだけど。
「じゃあ、地球を守ってくれる若きサムライガール達に、私からデザートもう一品御馳走しちゃおうかしら。」
「「「「「ありがとうございまーす!」」」」」」
結局、この話の流れと雰囲気を変えてくれたのは史恵の伯母さんだった。私は彼女に感謝の意を込めてペコっと目礼すると、微笑んでウィンクしてくれた。とても大人で素敵な女性だと思う。ありがとう、伯母さん。
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