第117話 突撃、隣の異星人
土星外縁部の戦闘で投降したのはアムロイ船パンテーン号。その船内には300名を超える老若男女の非戦闘員が乗船していた。
彼等は皆、船長や船員も含めてアムロイの中でもアメディオ支族という支族の出身者なのだという。詳しい事は私レベルじゃ知りようが無いけど、まぁ、彼等の中でも色々と事情があるみたいだね。
そして、第6独立挺身艦隊は地球連邦軍総司令部の命令により現場での作戦を中断し、投降したパンテーン号とその乗員達を木星へ護送する事となった。
その際に、なんと、パンテーン号の非戦闘員を旗艦ハールバールと空母海鳳に分散収容する事となったのだ。
それはおそらく、戦闘などでパンテーン号が被弾したりした場合の乗員達への危険分散を考慮してのだと思う。また、パンテーン号の敵対行動を事前に阻止するための人質という意味もあるのだろう。
私はその情報を聞き、最初はこの件に関わらないようにしようと思っていた。何故なら、自分が皆殺しにしようとした人達と顔を合わせるのは、私がそうしようとしていた事を彼等が知らないにしても、一体どんな顔をすればいいのかって話だし。それに本物のアムロイ人を直接見たり会ったりして、もしかしたら再び憎悪を抱かないとも限らないと思ったから。
ところが、この空母海鳳にはそんな私を惑わす小悪魔がいたのだった。
「ねぇねぇ、ランチが例の船からアムロイ人を連れて来たって。見に行かない?生アムロイ」
その小悪魔は立花エリカという。
艦内の娯楽室で最近憶えたビリヤードに小隊のみんなで興じていた時、遅れて来たエリカが駆け込んで来るや、そう言い出したのだ。
「生アムロイか、ちょっと気になるね」
そして、エリカにすぐ乗っかる真樹。いつものパターンだ。
「汝の敵アムロイを知れって事ね。百聞は一見にしかずって言うし、いいかも」
あぁ、パティよ、お前もか!
そして三人の期待の込められた視線の先にはビリヤード台でキューを構える私がいたりする。
私はそれを無視し、取り敢えずそのままボールを撞く。
カコン
ブレイクショットにより勢いのついた白い手球が中央に配置された九つの的球に当たると、忽ち的球は四方に散らばり、その幾つかが転がってコーナーポケットに落ちて行った。
残念ながら9番ボールは台上に健在。そのまま再度手球を撞いたけど、今度は一つもポケットに落ちなかった。
「ねえ、サク。見に行こうよ」
私が無視していたからか、エリカが更に誘いをかける。
「私はパス」
「え〜、なんでよ?」
「何でって、アムロイは父の敵だし、冷静でいられるかわからないもの」
まぁ、今の私ならアムロイ人を直に見ても冷静でいられる自信はあるけど、触らぬ神に祟りなしって言うし。
「でもさあ、自分達がどんな連中と戦っているかを知るって事も必要じゃない?今回はいい機会だと思うんだけどなぁ(チラッ)」
何気に説得力ある真樹の言葉。そう言われればそうなんだけどさ。
すると、パティが私の思いを知ってか知らずか、追い討ちをかけるようにとんでもない提案をしてきたのだ。それはビリヤード勝負で白黒着けようというもの。
「じゃあ次が私の番だから、私がサクに勝ったらブラックチューリップ小隊全員で生アムロイを見に行くってのはどう?」
「「賛成、賛成、大賛成!」」
エリカと真樹の声に興味を引かれたのか、周りにいた他の士官達も何だ何だと集まりだし、私とパティの対決を知って盛り上がってしまっていた。私、パティの挑戦を受けるなんて一言も言ってないんだけど…
「どうする、サク?逃げたって構わないけど?」
むむっ、パティ、今日はやけに挑発的だね。
流石、パティも日系人だけあって場の空気を読む日本人の詰め方をよく知っている。不本意だけど、みんなの前で勝負を挑まれて逃げる訳にはいかないか。それに私もかつては決闘を挑んだ側だしね。
「いいよ、その勝負受けようじゃない!」
パティは「そう来なくっちゃ」と言いながらキューを構えた。そのポーズはさながら女豹のようにしなやかで、ややお尻を突き出したポーズはボーイッシュな普段の彼女と違ってとても色っぽくて煽情的だ。
「ヒューッ」
誰?口笛吹いたのは?
パティが撞いた手球は6番の的球に当たる。すると6番の的球は壁に当たり、壁で跳ね返った6番の的球は台上を転がって右側のコーナーポケット近くにあった9番的球に当たると、9番的球をそのままコーナーポケットに落とし込んでしまった。
おおおおーっ!
「「ヤッター!パティが勝った!」」
観衆から歓声が上がり、ドヤ顔のパティとエリカと真樹。
「わかったわよ。見に行けばいいんでしょ?」
私はキレ気味に生アムロイ見学を了解した。
いつも『朝倉家の戦争』をお読み頂きまして、誠に有難う御座います。宜しければブクマ登録、評価、感想など宜しくお願いします。
それでは次話「目撃、隣の異星人」をお楽しみに!
いけませんな、ご自分で信じてもいらっしゃらないことを他人に信じさせようとなさっては
by シェーンコップ




